庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

グローバル化の流れに反した商品が日本経済の支えになる。

2013-04-30 | 経済問題
日本の経済成長戦略を検討する上で、多くの専門家は、「これからは量より質の時代だ、付加価値の時代だ。」と合唱し始めてきた。
それは間違いではないが、国民の税金を多額に投入して「育成された高付加価値産業」が、やっと日本に利益をもたらす時期には、すでに、新興国に技術移転が進んでしまって、日本の雇用には貢献しないで衰退している。
グローバル社会の時代には、『民間企業の論理』に沿って、世界で最も廉価に生産できる国や地域を選択して、生産拠点を移すのは当たり前なのである。

その流れに乗らない事業として『4.海外移転が出来ない商品・サービス』を条件とすべき、と書いたが、理解できただろうか。
「コンビニシステム」は、海外移転が出来るではないか、という反論もあるだろうが、日本の消費が減らない限りは、国内の雇用が継続されるのは確実だ。

良く言われる分野には、「観光事業の活性化」が日本の経済に貢献する。
観光の付加価値は、その地域独自の魅力を引き出すシステム創りの事業活動で、地域から離れては意味がないので、海外への移転はあり得ない。
日本は、もっと各地域が主体になって、「観光事業の活性化」を図る路線が重要視されるべきだろう。

さらに、見直されるべき事業に、日本独特の進化を図る「ガラパゴス商品」の拡大が検討に値する。
1990年頃から、あらゆる分野で日本人の特性に沿った「独特の商品魅力」を加えて発展した商品がうまれた。
しかし、【経済評論家などの有識者たち】は、「グローバルでは通用しない魅力・価値」を持った商品を、『ガラパゴス現象』と軽蔑して排斥しようとした。
しかし、いまや『日本独自の進化の価値』が、世界の一部には認められて、静かに拡大し始めている。

日本でしか認められない価値だから、主な市場は日本国内に限定されている。
その一部は、円高に関係なく「海外のお金持ちやオタク」の支持を得て、輸出品としての「高付加価値商品」として扱われる。
海外市場の割合はわずかだから、海外に生産拠点を移すメリットはない。

この様な、『海外生産に移転するメリットがない商品』も、日本の成長産業として、静かに浸透して行くのである。
世界中から評価される「大量販売商品」とは、全く違った価値で存在できる。

海外への移転を余儀なくされる産業を国策で支援する愚。

2013-04-29 | 経済問題
日本は1990年代の後半から2000年代初頭にかけて、次世代の新産業の目玉として、「情報産業」を国策として重要視する成長戦略を採用した。
時の「森首相」が、[IT]をイット産業と呼び中身も良く解らないママに、アメリカの流れに追従して、持て囃した時期であった。
コンピュータの基本部品である「集積回路部品」の製造産業をハイテク商品として、国策でのバックアップをしたり、コンピュータを作動させる「ソフトウエア製作」をする技術者の養成に力を入れたりした。

今や、国内メーカーの[IT関連産業]は苦境にあえぎ、国が支援した国策企業の「エルピーダメモリー(株)」は、2012年に倒産してアメリカ企業の子会社にされた。
また、自動車関連の[IT部品メーカー]は赤字連続で、政府系ファンドに救済されて再建の途上にある。
いずれも韓国などの海外製品に価格競争で敗退して、企業経営が行き詰まりの状況に追い込まれた。

モノ作りでは「先行して付加価値の高い製品」を開発してきたが、「ハイテク産業」でも、製造設備の新設などで「韓国や新興国の発展」に伴って、海外生産品の方が有利になってしまう。
特に「装置産業」では、製品作りの設備が「大量の電力を消費」するので、電力費の安い国での生産品が価格競争で有利になってしまう。
韓国は日本の電力費に比べて、企業向け電力費は半分程度に国策で抑えている。
日本では電力の地域独占体制によって、価格の高止まりが続き、不透明な原子力行政のツケが電力費に回されて、国策の不備が足を引っ張った格好である。

20年以上も懸けて「国の将来の新産業と位置付けた[IT]情報産業」は、日本の経済の足を引っ張るお荷物産業に転落してしまった。
新産業の候補としての条件は、[1.高付加価値]は、満たしているが、【2.技術移転にさしたる時間はかからない】弱点が、露呈してしまった。
【3.製品は軽・小型で輸送費は最小】であり、世界中の電力費が安い地域で作った方が、日本製よりも「価格競争力は強い」。

ここで、新産業の条件に付け加える項目は、『5.製造に電力(エネルギー)を多消費しない。』という条件である。
【太陽光パネル産業】は電力多消費であり、海外移転をされるのはすぐソコだ。

成長産業の芽が理解できない政治家と大企業経営者の愚。

2013-04-28 | 経済問題
これからの日本で経済成長を持続させるには、「1.高付加価値。」「2.技術移転に時間がかかる。」産業に力を入れるべきだとした。
この路線には、大方の人が賛同するし、すでに専門家は口で言うだけであるが、20年以上も前から議論がされてきている。
ところが「3.輸送費の割合が多い」産業となると、何をバカなことを言い出すのかと、呆れて無視する「おエライ方々」がほとんどであろう。
そして、『4.海外移転が出来ない商品・サービス』の産業だとなると、理解できない人が大部分で、政治家のレベルでは無理だろう。

では、どんな産業なのか、具体的な事例で少し、説明を加えてみよう。
「コンビニエンスストア」は、日常的に利用されているが、これが大昔からあったわけではない。
発祥地はアメリカで、日本の『セブンイレブン』が、アメリカのストアを参考にして、日常品の小売からを始めて、30年以上も懸けて全国に広げていった。
地域社会で「コンビニ」は不可欠のインフラにまで成長して定着している。
このサービスは「付加価値が高く」、安売り店のスーパーとは一線を画す「小売り事業」に留まらず、日常的に利用したいサービスの便利な窓口になっている。

今や、アジアの新興国においても、日本流の便利な日常品とサービス提供で、「新産業」としての拡大が始まっている。
つまり、「コンビニというシステム、知的付加価値の発明」を海外に展開して、日本に「知的発明の対価」を還元しているのだ。
そして、どんなに円高だろうが、日本のコンビニが「海外に移転するわけがない」ので、地域の雇用も商品の納入業者の仕事も継続的に維持される。
経団連につながっている「守旧派のモノ作り産業」の経営者の様に、「円高で困る」とか、「法人税を下げないと国際競争に負ける」と、泣き言は言わない。

経済成長のベースとなる新産業の「育成の芽」になるのは、既存の仕組みや【モノ作り発想にしがみついている】のでは、見落とされている「人々の快適さ」の要求にある。
出かける途中に便利に「立ち寄れるワンストップサービス」の提供が、「コンビニ産業」の原点の芽になるのだ。
この芽を長年の間に「着実に育てあげた開発者」の熱意が、成果となっている。

「政治は結果だ!」と傲慢に断言する様な、近視眼には、理解が出来ない。

経済成長を継続できる負荷価値産業分野を見極めること。

2013-04-27 | 経済問題
成長戦略の要は、「価格競争力に依存しない高付加価値」を産みだす事業を育成し、継続成長させることに尽きる。
それには、世界の水準よりも一歩でも先に進んだ技術を実現する。
鉄道の新幹線技術や、自動車の大気汚染削減技術は、その典型的な成功例であり、最近では、照明技術の「LED」革命である。

だが、「高付加価値」とは、この様な革新的技術に支えられるモノだけではない。
日常的に消費している商品の分野でも、民間企業が消費者ニーズを実現して、「よりよいモノを求める消費者」に育てられた分野も大変に多いのである。

例えば、重工ハイテクの分野とは対照的な日常品の『紙おむつ』は、幼児を健康に育てたいという親の要望に応えて、「価値を上げて成功」した商品である。
日本で進化した「品質の良い紙おむつ」は、今では海外への輸出が500億円にも成長し、中国などでも幼児への「高級品を使う」傾向が高まっている。
この様な分野でも、市場規模が膨らめば、現地生産に切り替える企業が増えるので、日本国内での生産は伸びなくなる。
しかし、単価が安くてかさばる「紙おむつ」は、輸送費の占める割合が多いので、中国製が日本に輸出される状況にはならない。

この事例の様に、『高付加価値商品』の創造を、大物から日常品まで、多くの分野で創造し続けることが、日本の経済水準を高く維持できる「継続産業」だ。
それでも時間がたつと、確実に海外への技術移転が進み、逆に「日本への輸出」攻勢に転じて、国内産業は衰退する。
かえって、「紙おむつの様な輸送経費が負担」になる商品の方が、一定レベルの国内生産が維持されるので、小さいながらも、経済には貢献する。
現在の日本政府は、次世代の電池(リチウムイオン電池など)の「革新的な商品」の事業を重視しているが、技術移転が進むコトが確実で、遠からず海外生産品の攻勢にさらされて、苦境に陥る懸念がおおきい。

これらの事例から、日本の将来における国の経済を支える産業で、重視する分野はどうするのが良いかが見えるだろう。
第一は、「高付加価値の創造」が出来る分野。
第二に、海外への技術移転までに時間がかかる分野。
第三には、価格に対する輸送費の占める割合が多い分野。

もっとも望ましい事業分野は、海外移転が出来ない商品・サービスの分野だ。

高付加価値の芽となる技術革新に疎い政治家と中央官僚。

2013-04-26 | 経済問題
経済成長に結びつける「高付加価値の創造」は、一朝一夕に生まれる成果ではない。
技術革新の芽が生み出される初期の揺籃期には、世間からは冷たい目で見られるか、無視されるのが通常である。
この様な逆境の中でも、目標を見失わずに「成果の出ない地道な積み重ね」を実行する挑戦者がいることが、始まりなのである。
この段階での挑戦者は、「バカ者」と呼ばれるか、「変人」「キチガイ」「オタク」とみられて、社会から余計者扱いをされる。

しかし、世の中には、この様な変人を「やる気があるなら、できるところまでやって見せてくれ」という奇特な人もいる。
世界的な成果の『青色発光ダイオードの発明』は、この様な状況で生まれた。
四国、徳島の地方の中堅企業で研究に没頭していた、中村修二氏の変人ぶりを「革新を産みだす可能性」に着目した「日亜化学工業」のオーナー経営者が、思う存分に研究の自由度を与えて、「世界初の研究開発」にあたらせた。
何年間も成果が出なかったが、イノベーションの可能性を重視する経営者は、中村氏にその芽を見ていたので、研究を継続させて遂に、「青色発光ダイオード」の基本特許が取れるレベルに成果が産まれた。

その後、中堅企業であった「日亜化学工業」は、徳島の大企業に成長したが、それは、青色発光ダイオードの発明と量産化成功が、現在の「LED照明革命」の大成長に結びついたからである。
日本は、今や省電力の潮流の真っただ中にあって、多少価格が高くても、省電力、長寿命、照明デザインの自由度など、『照明の高付加価値化』の最先端を進んでいる。
この様に、経済成長の芽となる技術革新は、地方の一企業、一研究者の意欲が継続するコトで産まれるのである。

中央官僚の知識力や、エリート育ちの政治家には、絶対に出来ない仕事である。
机の上で、各地から集まる情報を文字だけて評価し、成長戦略と称する「優等生的な文書」を作るのに長けている「優秀な人材」には、無理な能力だ。

「政治は結果だ!」と断言して、最長でも4年間の任期中に結果が出ない様な政策には、価値を見出さない【目先しか見ない小物政治家】には、革新の価値が判断できない。
アベノミクスの第3の矢は、全く的外れの恐れが大きい。

経済成長の基本は創造的な革新の継続でなければ衰退。

2013-04-25 | 交通問題・自動車
日本がグローバル化された経済環境のもとで、先進国としての誇りを持てる「生活水準」を維持し続けるつもりならば、『高付加価値』の商品とサービスを提供出来る能力を維持しなければならない。
古き良き時代の【モノ作り路線】や、「効率至上の画一化サービス」に固執していては、モノ作りは新興国に生産移転し、サービス業は世界同一賃金の路線に沿って、第一線の従業員の給与は途上国のレベルに引き下げられていく運命だ。
日本での独自の創造力による「付加価値の向上」を常に図ることしかない。

『高付加価値路線』の経済成長の歴史を、実例を上げて判り易く書いていこう。
交通機関の事業でいえば、「鉄道の新幹線事業」が判り易いであろう。
東京オリンピック開催の時期に、東海道新幹線の工事が完成し、当時は斜陽産業であった「鉄道事業を画期的に価値アップ」を実現した。
時速210km/h.の営業運転を可能にしたのは、国のお荷物とされた国鉄の技術陣によって開発された、「価値の高い発想と努力の積み重ね」による。
この時以来、新幹線技術と事業は、鉄道交通の価値を飛躍的にあげて、今や世界中が追いかける先進的事業となった。

自動車事業の世界でいえば、「世界最先端の排気ガス浄化レベルを1970年代に達成」し、同時に世界最高水準の燃費性能も実現した。
それ以来、日本の自動車産業は、クリーンでエコノミーの環境対応価値を最高レベルに維持するコトで、世界中に広まっていった。
1990年代の終わりからは、『ハイブリッド自動車』の技術が開発されて、今では「日本車の代名詞になる高付加価値」の典型事例である。
自動車生産の海外移転を少しでも遅らせる効果は、日本ならではの先進技術によって成り立つ、『環境高付加価値自動車』が開発されたからである。

しかし、次第に新興国の生産に移転する運命にあり、先行出来るとは限らない。
鉄道も自動車も全く新しい価値を創造しなければ、20年~50年後には、確実に新興国の産業に追い抜かれるのだ。
今の時点で先行して「高付加価値を維持する事業」の収益を惜しみなく、『次世代の担い手を教育と訓練する機会』につぎ込むべきである。
これを、怠りなく継続して行かなければ、創造する人材と活力が細り、国の力は低下して、衰退国家の道を進みだす。

アベノミクスは、重要な分かれ目に遭遇している、と覚悟すべきなのだ。(続)

骨太の方針の軸が全く見えないグローバル経済への認識。

2013-04-24 | 経済問題
安倍内閣の第3の矢と称する「成長戦略」は、安倍首相のグローバル経済に対する認識が浅いコトに懸念がある。
「産業競争力会議」は、民間人を引き入れて、官僚主導の経済政策を転換させようと目論んでいるが、議論は業界団体と官僚組織の反対にあって、骨抜きにされている。
安倍内閣は6月までに経済政策の「骨太の方針」をまとめるつもりだが、このままでは、従来の様な、各省の政策をホチキスで留めただけの「政策羅列方針」に終わる可能性が濃厚である。

この様な官僚主導の(過去の失敗だらけに終わった)無難な政策ばかりでは、ナマヌルイとして、「新自由主義の信奉者である竹中平蔵氏」は大胆な規制緩和を主張している。
「成長戦略特区」を、東京、大阪、愛知の3大都市圏に設置し、道路などの民営化が出来る様にする方向だ。
つまり、小泉内閣でのやり残しを【民営化路線】で突き進もうとしている。
その一方で、「経済財政諮問会議」の民間議員からは、「都道府県ごとの『47特区』を検討する」べきだと、地域発の経済再生を重視する意見もでる。

さらに、新自由主義路線が経済を疲弊させた面と「格差拡大による悪影響」を批判してきた「原丈人(じょうじ)氏の提案する『日本型資本主義』を考える専門調査会」を立ち上げて、働く人にしわ寄せを強いる「構造改革路線」とは一線を画す方向である。
【規制緩和の不足なのか、行き過ぎの是正か】の路線議論すら迷走中である。
【3大都市圏中心の牽引か、地方発の経済再生か】は、自民党の長年の政策である『地方分権化』『道州制導入移行』の課題と関連するのが、見えないままだ。

アメリカ型の資本主義は、[ITバブルの浮沈]と【金融業の自由化路線の崩壊】によって、世界中に害悪をまき散らした。
ヨーロッパ型の経済統合政策は、【共通通貨制度の弊害】が露呈して、閉塞感のママの低空飛行中である。
日本の20年にわたるデフレ経済とゼロ成長路線を「日本型資本主義」なる看板の掛け替えだけで、号令をかけるだけの『第3の矢』とは、・・・・?

野党時代の3年半の間に、日本の将来の経済政策の骨太方針を「全く議論もせずに、ただ、政権への返り咲きに邁進」する日々であったのか。

世界のグローバル経済化に対する認識の厳しさを問う。

2013-04-23 | 経済問題
衣料品の「世界グローバル企業」の激烈な競争において、「ファーストリテイリング(ユニクロ)」が、【世界同一賃金を目指す】方針を打ち出した。
本日の朝日新聞(朝刊1.2.9面)の報道内容を引用して説明すると、柳井正会長兼社長の考え方は一貫している。
それは「社員はどこの国で働こうが同じ収益を上げていれば同じ賃金でというのが基本的な考え方だ。」という、企業側から見た合理的な論理である。
「日本の店長よりも欧米の店長の方が給料は高い。同じ賃金にするのが目標だ。」

柳井氏の考え方をさらに引用して説明すると、「仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化する。」
「生産性はもっとあげられる。人より良い生活がしたいのなら、賃金が上がる様に、技能や仕事が今のままでなく、頑張らないと。」
「先進国は同じ問題に直面している。戦略とかマーケッティングとか、付加価値の高い部門を日本に置くことだ。」
「世界中の企業が最適地企画、最適地生産、最適地販売に移っている。」

さらに厳しい現実の問題に対し、明確にその原因を指摘している。
「日本の電機の一番の失敗は日本に工場を作ったことだ。安くて若い圧倒的な労働力が中国などにある。関税も参入障害になるほどの高率ではないから、世界中に持っていける。」
国境を越えて活動する企業のもとで、働く最前線の人たちは、世界各国の人々と競わされ、成長が止まれば賃下げや失業になりかねない。
政府が賃上げや雇用増を働きかけても、世界企業は「グローバル経済のもとでは、【Grow or Die(成長か、さもなければ死か)】の論理に晒されているのだ。

この様な厳しい、「非常にエキサイティングな時代だ。」(柳井氏の言葉)と認識するのが正しいのだ。
それに比べて安倍首相の言葉の軽さは、20世紀の世界で「温室育ちをしたエリート」のひ弱さと未熟さをかんじさせる。
また、政府の庇護を求める「経団連の旧時代経営者」の姿勢も、老醜をさらす様な、古き良き時代の【加工貿易立国】に固執した「頭の硬さ」を見せつける。

柳井氏の厳しさを、日本のぬるま湯に浸った人たちには、受け入れがたい。
かと言って、幻想ともいえる成長戦略にのめり込む「安倍政権」に日本の将来を委ねるには、グローバル経済の認識があまりに浅薄なレベルで危うい。(続)

昔流のモノ作りに頼る貿易経済立国を早々に転換せよ。

2013-04-22 | 経済問題
日本の将来は「モノ作りによる加工貿易」型の経済構造を継続した産業を、育成し拡大して行けば、安心な社会が築ける。
こんな『夢を持ちながら経済発展』して来た古き良き時代を、もう一度を考える人は、もうすでにいない。
1ドル360円時代ならば通用した話で、「為替レートを自由市場に任せるスミソニアン協定」が1971年末の会議で決まってからは、日本は経済成長とともに、為替レートは次第に上昇して1ドル120円以上の時代になった。
この段階では、通常の製造業では【加工貿易は成り立たない】コトになった。

製造拠点を日本に維持するつもりならば、1ドル120円よりも円安に誘導しなければ、製造業の価格競争力は確実に途上国よりも不利で、国際競争力(価格面で)を確保しようという狙いは、幻想でしかない。
このママ、日本経済が停滞または衰退して行けば、為替レートは円安に移行していくので、その狙いに沿える。
しかし、円安による輸入品の価格上昇は、国民には耐えがたいほどに上がり、誰も望まない経済状態に向かっていく。
【価格競争力に依存するモノ作り】は、グローバル化によって多くの途上国が発展し始めた段階で、転換せざるを得ないのである。

それでは、日本は環境技術が優れているから、「【環境立国】を目指せば良い。」とした識者が出始めている。
この方向では、日本の将来は一時的には活性化するが、通常の「環境技術」は新興国に移転が可能であり、日本に製造拠点を維持できる期間は限られてくる。
例えば、太陽光パネルの生産は、2000年代初頭までは、日本が世界一の生産量を持っていたが、中国や韓国が台頭する時代になってしまった。

現在時点で先行している「環境技術」に【蓄電池技術】あり、国の政策では、これを保護して成長産業の主力にしようと、あらゆる支援策を講じている。
しかし、この技術も間違いなく、新興国、特に中国に移転して廉価な競争製品が市場を席巻するコトになるのは時間の問題である。
通常の製品では無理で、環境技術の優れた製品作りでも、先が見えている。

日本の経済を支える「将来の産業」は、モノ作りでも、独自の付加価値を創りだした、独創的な商品でなければ、日本に定着した産業にはならない。
自動車産業ならば、『ハイブリッド車』の様な独創的製品であることが重要だ。

成熟国家における国の産業は内需重視の付加価値産業だ。

2013-04-21 | 経済問題
自民党の政権公約には、「産業の輸出競争力を高めて経済成長の柱に据える」コトに重点を置くとしていた。
その狙いに沿って、アメリカの主導する「TPP交渉」に参加して、関税ゼロ化に向けてのチャンスを活かそうと、産業界は前ノメリに「何が何でもまず参加」を、声を大にして要求していた。
日本の重大な懸念である【将来の食料自給率・農業問題】は、TPPに参加してしまえば、なんとでもなると無責任姿勢に終始していた。

ところがアメリカが「関税ゼロ化」には、「センシティブな課題がある」と一言触れただけで、「農業の関税ゼロ化は聖域としてアメリカが認めた」と、大喜びで成果があったと思い込み、国内の反対論を退けて、【貿易自由化が日本の路線である様な楽観論】の潮流になった。
だが、アメリカは入口の段階で、「自動車産業を守る」コトが国益だとして、関税の引き下げは、10年間はしないと明確に主張して、押し通した。
この様に、日本の都合だけで対象国が簡単に関税ゼロで、日本の輸出競争力が有利になると考えるのは、大甘デあるコトがハッキリした。

また、自動車産業の場合は、TPPとは関係なしに、輸出先国の状況にあわせて、現地生産に移す必要が加速している。
世界最大の『中国の自動車市場の拡大』に対応して、日本の自動車主力企業は、「中国生産に移管する」方針を明確にしている。
大量に生産する車種は中国市場に合わせた仕様で新規に開発し、主要部品も現地生産化して「中国製」をうたい文句にする。
また、日本でしか生産していない「高級ブランド車」も、今後は中国現地生産化を進めて行く方針である。

家電製品に続いて自動車もほとんどが海外生産に移行するので、「TPP」などの関税ゼロ化は、日本にとってのメリットはほとんど消失する。
農業の立て直しは必須の課題だが、それ以上に、国内の産業活性化を図るには、
日本の内需を活性化する「価格競争力に依存しない付加価値商品」を、拡大する方策しかないのだ。

安倍内閣が狙う「経済成長戦略」の前提が、すでに崩れている「既存産業の保護と国際競争力支援」を重視しているのでは、遠からず【成長産業から脱落】する企業が続出し、国民の税金は、またも無駄な使い方に終わってしまうのだ。

農業を知らない官僚が成長戦略を立てるとは?

2013-04-20 | 経済問題
安倍内閣の成長戦略に、攻めの農業政策により「農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしていく」と説明している。
一体、どの様な政策を打ち出して『輸出拡大』に結び付ける計画があるのか、自民党の政策立案能力を、国民に示してほしいモノだ。
今までの農政は、2年毎に役職を代わって行く「農林水産省」のトップ官僚が、
とにかく、おカネをつけるコトで、弱体化する【農業を保護する政策】を40年以上に渡って継続してきた。

外国産の食糧の攻勢に対して、食料安保の見地から、最低限の「エネルギーベース自給率を確保」する大義名分で、高率の関税を掛けて、米、麦、乳製品、砂糖などを「国民の税金」を使って保護するだけの政策を打つのが精いっぱいであった。
お金を配分するだけの政策調整であるから、農業のことなど知らなくても、農政官僚の采配で、やりくりを続けることが、日本の農業政策であった。
守るだけのことしかやっていない官僚に、攻めの農業政策を打ち出す様に指示しても、まともな政策案が出てくるわけがない。

「農林水産業」とひとくくりにする発言を聞くだけでも、如何に、実情を知らない政治家が多いか、あきれ返るばかりである。
林業は遠の昔に「関税ゼロ化」で、国産の林産物は、価格競争力を失って衰退してしまい、今はどん底からの離脱にやっとの状態である。
攻めの農業というだけで「林業が農業とかかわりを持つ」ことなど、全く頭になく、森林の水源涵養効果なども、長い間、ほったらかしであった。
また、陸上の林業の健全性によって、海の幸、漁業にも影響があることすら、政治家は全く知らない状態だ。

工業製品と違って、自然条件と国土をベースにして、適切な管理と改良を積み重ねるコトで、日本独自の農産物や林産物、漁業資源が産まれてくる。
ホンの数年で成果が出て、努力がすぐに報われる様な、安易な代物ではない。
ましてや、ホンの数カ月で成果が表れる金融業や情報産業とも、全く違う性格の産業である。
それを、産業競争力会議のメンバーの人選は、工業界や金融業界、情報産業界の成功者を並べて、【攻めの成長戦略立案】をしても、絵に書いたモチにもならない。

農業・林業・水産業・を一から学ぶ謙虚な姿勢が、まず基本に必要だ。

国民の根幹になる食料安全保障の信念が出来ない安倍首相。

2013-04-19 | 国創り政治問題
日本の政治家で将来のことまでを真剣に考え抜いて、信念を持って決断しているリーダーは、どれほどいるのか。
将来の国の存立をどこに置くのかも考えずに、世界の潮流、いやアメリカの言うとうりの自由貿易化を進めないと孤立の懸念があるから、とにかく、「バスに乗り遅れない」との付和雷同、迎合しか出来ない政治家がほとんどである。
世界はグローバル化するから、貿易依存度をいくら高くしても、心配ないと思っているノーテンキ専門家の言うことを聞いて無責任も極まる。

自由貿易化によって、日本の食糧自由率は現在の40%から大幅に下がるのは明らかであるが、安倍首相は「農産品に配慮する」というだけで、具体策は何も検討出来ていない。
「攻めの農業政策により競争力を高めて輸出拡大を進めて成長産業にする」と、
中身の伴わない「カラ元気」だけの掛け声倒れに終わりそうだ。
1990年代の成熟した経済社会において、農業政策は、選挙対策の集票目当てに補助金バラマキによって、将来展望への政策は全く検討も出来ないでいた。
野党時代の3年半の間も、民主党の個別所得補償政策を非難して、責任ある対案を示すことも出来ないで、立ち止まっているだけであった。

アベノミクスの3本目の矢は、【成長戦略】だと言って、4カ月も経過している。
1本目の超超金融緩和は、日銀をねじ伏せることで、政権交代前からの課題【デフレ脱却】の動きに、とにかく火をつけた格好になっている。
功罪は未だににハッキリとしないが、政権の目玉政策として決断したのだから、罪の部分が大きくなった場合でも、責任を持った対応をする筈である。
2本目の公共投資の大増加は、功罪はハッキリとしているから、議論の中身はこれから具体的に明らかになるだろう。

「成長戦略は、ひとくくりに出来る様な単純な課題ではない」のに、安倍首相は、3本目と称して単純にとらえる感覚である。
3本目は1本どころか、10本、いや大小取り混ぜて100本くらいに矢になる規模の最重要な「1990年代からの失敗の連続の重要課題」と認識すべきだ。

「TPP参加」交渉の重要課題は、将来の食料安全保障を守れる「国創りの農業政策の基本」を、安倍政権は固めて臨めるのか、疑問だらけである。
口先だけの「攻めの農業」を言いだしても、自民党の農業政策の方針を革命的に転換しなければ、実現できない難題である。
官僚任せでは不可能は明確だ。

国の主権を確固として維持する信念の政治家はいない?

2013-04-18 | 国創り政治問題
アベノミクスの中身は一向に判る様な説明がないまま、張本人の日銀黒田総裁と、経済政策責任者の麻生副総理が、G20会議に出発した。
世界の主要国は、日本のあからさまな「円安誘導政策」には、世界経済に悪影響を及ぼすとして、批判の芽を向け始めている。
安倍首相をはじめ、当初の説明の「極度の円高を是正する」とした、『日本国民向けの説明』を、今では封印して、【デフレ経済からの脱却】が目的だと、釈明に努めている。

円安の影響は、すでに輸入品の価格上昇を受けて、輸入燃料費の大幅な増加で、電力料金の値上げを加速し、食料品価格を押し上げ始めている。
日銀の黒田総裁は、「物価上昇目標2%達成に向けての滑り出し」に満足の様子だが、企業活動の方は【円安の悪影響】の方が多い様で、実質の経済活性化には動きだしていない。
一般国民の財布のひもが緩まなければ、需要増加にはつながらないのが経済原則であって、おカネをフンダンに発行すれば、デフレ脱却になると単純に考えるほど甘くない。
これでは、「不況下のインフレ」【スタグフレーション】に陥る懸念大である。

それに加えて、「TPP交渉」参加によって、大きな影響を受ける業界の不安は募るばかりで、投資環境は悪化するばかりである。
農産物品の自由化は、アメリカ、オーストラリア、ブラジルなどの、広大な国土を持った国の農産品に、無制限の開放をする「無防備の市場」を差し出すコトになり、国の主権を失うコトにつながる。
国民の基幹になる食料関連を、完全に他国の管理下に委ねて良いほどに、世界の情勢が安定していると考える大甘の評論家は、今や絶滅している。

日本の国益を損なう様ならば、「TPP交渉」段階で離脱する。と安倍首相は説明しているが、入口の段階で早くも腰砕けになっている。
交渉に参加した上で、離脱を宣言出来るほどの信念を持ち、勇気を発揮できる日本の政治家は、もはやいないのではないか。

かっての日本のリーダーであった「吉田茂首相」は、戦勝国のアメリカを相手にして、弱小で力を削がれた日本を率いて、国際交渉を導いた。
「アメリカの要求は可能な限り拒絶する。ただし、最後の機嫌を損ねない範囲で・・」と、日本の国益を貫く信念と能力は、そのしたたかさに現れていた。

過度の金融自由化の結末と過度の自由貿易の先は不安社会。

2013-04-17 | 経済問題
アメリカは経済成長の停滞に対する国の方向を、【金融業の活性化】に活路を見つけようとして、世界中のお金が自由に飛び回る金融自由化を各国に要求した。
いわゆる【金融ビッグバン】を、経済の発展には欠かせない「グローバル化に向けての大きな改革」として、世界中に広める戦略をとって来た。
それによって、「アメリカ発の金融業の発展」は、世界中にマネーゲームの風潮を拡大し、金融業界にの商品開発競争が激化していった。
ついに「リスクが予想を超えるサブプライムローン商品」が生み出されて、アメリカは不動産バブルに浸って、好景気の継続に沸き立っていた。

過度なグローバル化と金融業の自由競争は、バブルの破綻においてコントロールが出来ずに、世界中に【金融恐慌寸前までの大不況】を拡大してしまった。。
アメリカ社会は、今もその後遺症によって、「格差拡大の不平等社会」に流れ込んで、不安だらけの悩める大国に落ち込み、長期低落から抜け出せないでいる。
アメリカ社会は、世界一のGDPと世界最大の企業群に取り囲まれていながら、貧富の格差は広がる一方である。

20世紀の経済論である、「まず豊かになれるモノから豊かになれば、最下層の人々にも恩恵がもたらされる」という【トリクルダウン効果】は、先進国では、当てはまらないコトがハッキリしている。

アメリカは、金融業界のやりたい放題の失敗に気がついて、いまは、「マネーゲームの規制」には気が回る様になった。
しかし、超大企業や多国籍企業の政治影響力が強く、アメリカ流の企業活動の自由化が利益拡大にとって必須の路線なのである。
「1%の超富裕層&99%の貧民」への罠から、抜け出られなくなっている。
アメリカの経済制度の傘下に将来も取り込まれるつもりならば、「格差拡大社会への転落」は、避けられない流れになる。

「GDP成長の最大化」を国家目標にするならば、アメリカ流の『大企業有利の経済活動環境』を作り、少しでも強い企業、強い経営者を優遇するのが良い。
しかし、その結果は、格差拡大の【弱肉強食社会】に突き進み、多くの人が社会不安に怯える。
そのなかで、暴発するはぐれ者が増えて、「銃乱射」「犯罪行為」が拡大し、最後は「反社会的なテロ集団」の破壊行為におびえる国に突っ走ることになる。

日本がその様になることないとは言い切れない。それでもTTP路線が良いか。

頭の切り替えが出来ない経済界のリーダーが日本を崩壊に。

2013-04-16 | 国創り政治問題
日本の経済界のリーダーには、企業活動のメリットばかりを優先する考えなどは、全くなかった。
もちろん、企業の自立的経営によって、顧客の満足度を上げるコトで社会に貢献するのが第一で、次には、従業員の雇用を安定させて給料をできる限り高くすることが、経営者としての責務だと考えていた。
会社の価値を上げ、株主配当を増やしたり、株価上昇を狙う経営などは、第一、第二の責務を十分に果たした上で、上乗せされる業績としての評価である。

ところが、最近の日本の経済界のリーダーには、アメリカ流の経営を信奉する様になって、とにかく企業の業績は、株主配当と株価を上げて企業価値を上げることばかりを優先してしまう。
その様な経営者が集まる「経団連の質の劣化」は、見るも無残な状況である。
いつまで経っても、従業員の給料を減らす「人件費の削減」を経営の成果とカン違いをして、デフレ経済の長期化に加担した。
日本の地域社会が疲弊している状況など、お構いなしに「製造拠点の海外移転」を、当然の経営活動の成果として進めている。

それを、日本の空洞化と批判されると、『雇用機会を提供し、地域社会を大切にするのは企業に使命だ』と、キレイゴトを並べて、努力を強調する。
だから、国内に拠点を残す為には、円安に誘導して、さらにアメリカの要求を聞いて「関税ゼロ化」に向けることで、輸出の競争力を保護して欲しい。と政府に要求するばかりだ。
円安で被害を被る事業者が多くても、「経団連の旧産業」は痛みを受けない。
関税ゼロ化によって、どれほどの農業関係者が廃業の憂き目に会うかも、自分たちの責任の負える範囲ではないと、逃げの姿勢一辺倒である。

この様な低次元に落ちてしまった「経済界のリーダー」の言い分を聞いてばかりいる「自民党政権」は、日本の将来を見失った「考えの浅い惰性の政策にしがみつく」しか出来ない集団である。
貿易の自由化は、二国間の取り決めで、両国にとってメリットのある取引を活発にするのが目的である。

「TPP」の様な、アメリカ流儀に従う路線の「強者が自由に活動」する社会に向ける制度では、日本の将来は崩壊に道に進むしかなくなるのだ。
アメリカ社会の崩壊は、金融業界の言いなり路線が原因であった。
日本は・・?