庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

新産業の育成には国民の負担と雇用制度改革が必要である。

2010-07-31 | 経済問題
新産業を育成して活性化する効果的な政策として「再生可能エネルギー電力固定価格買取り制度」の法案が、これからマスコミでも採りあげられて、論議を巻き起こすでしょう。
その時に必ず出てくるのは、消費者、国民への負担が過大にならないか?という話である。
経団連は、金貨玉条の様に、「国民の負担が増えるから反対」の一点張りであった。
これからも事あるごとに、マスコミに登場する産業界の代理人が、トクトクとその理由を説明して、だからこの法制度は採用してはいけない。と力説する場面がみられるでしょう。

国民の負担は当然あるから、それのレベルが適切であるかの議論が当然あって良いでしょうが、経済界の論理は、電気料金の値上げは、事業経費の増加になるので(当然のごとく)価格転嫁されるので、国民、消費者の負担が増えると声高に言う。
しかし、これは各企業が全く努力をしない場合であって、前回にもこの様な経営者は、交代すべき人間で、それを前面に出すことは、自分の無能を得々と言っている様な事態である。
そこまで企業人が恥さらしであるとは思えないので、その説明は引っ込めるであろう。

多くの問題はこの先にある。
今までの価格競争激化時代に見られる様に、経費の削減を迫られた企業は、人件費を抑える事に力を入れる。
それも、景気の先行きが不透明の為に、解雇の容易な派遣社員や契約社員に増やして、できるだけ正社員を減らすことに奔走してきた。
これが、最近の各差社会を助長して、さらに国民全体に将来不安を拡大して、結果として、一層の需要減退、景気後退、企業活動の縮小を強いてきたことは、今や明白である。

政権を担う政党の公約には、この非正社員の増加を食い止めて、安定した雇用条件の正社員に出来るだけ移行させる支援政策が検討され、実施されるであろう。
さらに人件費の抑制の歯止めとして、最低賃金の引き上げも、大きな社会的問題としてとり上げられ、賃金の下方柔軟化に対する対策が必須である。
経済学では、「賃金は下方硬直性がある」と言われてきたが、現在は、「グローバル市場化」の潮流で、今の世界経済の中では通用しない原理となってしまった。
これを、ワーキングプアーを増加させない為にも、早急な法制度の見直しが迫られている。

企業にとっては、経費の増加(電力料金に値上げ)と、人権費の削減に限界が来ていることは、収益を圧迫する、大きな問題となっていて、これに立ち向かうことが経営者に苦痛であるから、なりふり構わず反対しているのである。
「国民の負担が増えるから」という説明は、言い訳に使うだけで、ホンネのところは、経営者にとって責任を負いたくない、のである。

そして、最後のステ台詞として言い出すのは、「それほど国内の事業環境を縛るならば、海外に生産拠点を移転するぞ!」、「国内の雇用が減っても良いのか」。
これを政府や行政関係への決め台詞として、影に日にロビー活動をしてきたのが、経団連加盟の旧産業である。

議論を進める必要があるのは、この課題に集中するべきである。(以下、次回に)

経済の活性化に賛同しない経営者は交代して社会に貢献。  

2010-07-30 | 快適エネルギー社会問題
「再生可能エネルギー電力」を普及、促進させるための「効果的で賢い政策」の事例となっている「固定優遇価格買取り制度」が、経済産業省でやっと原案の提示にこぎつけた。
EUの先進国(ドイツなど)で、10年以上も前に議論されて、実施に移されて実効性は明らかになっている。
同時に、この制度の細部において、弊害も認められる部分もあり、今はその修正が適時、実施されているので、これを参考により良い制度にしていく必要がある。

しかし、これだけ実効性のある制度に、頑強に反対する守旧派産業の経営者たちは、日本のことや国民のことは後回しで、自分たちに経営責任が多くなることが最大の関心ごとになっている。
「再生可能エネルギー電力の固定価格買取り制度」は、電力料金の値上がりを招き、事業コストを引き上げるので、収益を圧迫するから(経営者の責任を追及されるので)反対だ!と言う。
社会の変化によって、経営資源となる経費、エネルギー費、原料費などが変化していくのは当たり前であって、値上がりするから反対する、と言うのでは経営者とはいえない。

一昔前の石油ショック時には、石油価格の急騰で、多くの企業が苦労したことは事実である。
しかし、急激で、大幅な価格上昇は、確かに経営上の予測範囲を超えるであろうが、今回の電力価格の上昇は、それに比べたら微々たる上昇幅で、一昨年の原油価格高騰(投機によると見られている)に比べたら、ゆるやかでかつ、時間的に余裕のある価格上昇の範囲である。
この程度の事態に対応できない経営者は、能力なしとして、即刻交代をするレベルの人間である。

今さら言うことでもないが、経団連の会長、自らが企業の負担を嘆いているので、僭越ながら対応策を、ここに少し書いておきましょう。
3年後から電力経費が余分にかかると予想されるなら、経営者の採る方策は、各種用意できる。
値上げ分の相当する経費を削減する為に、省エネルギー設備の投資を、追加して検討すればよい。
その方策は事業毎に各種あるが、事例を上げると、熱源でいえば、「ヒートポンプの活用」、照明でいえば、「LED照明」に切り替えていけばよい。
自動車関連の経費でいえば、乗用車ならばハイブリッド車に切り替える。
いずれも初期投資が必要であるが、今なら金利は安いので、切り替え後の設備投資の資金を回収する期間は短くて済む。

このような経費の削減策は、企業にとって負担と考える場合が多いが、これが需要喚起の起爆剤になるので、現在のデフレ経済下においては、有効な景気対策となる。
この投資を出来ない企業はどうするか、と経団連の会長が言うわけがないと思いますが、中小企業には、省エネ投資に対する「金利負担助成策」などの、支援政策を追加していけばよい。

「省エネルギー投資」「経費削減投資」はやり尽くしたというならば、もう後は製品、サービスへの価格転嫁、つまり値上げによる事で消費者に負担を回すことにするしかない。
それでは市場競争に負ける、と本当に考えているならば、即刻、経営者を退くべきである。
対抗する競争企業が価格転嫁しないで経営出来ることは、手腕が上手であることの証明である。
負けを前提にするから「再生可能エネルギー電力固定価格買取り」に反対しているのであろう。

経団連は決断と投資を先延ばしする経営者の集団。

2010-07-29 | 経済問題
前々回に経団連が、「再生可能エネルギーの電力全量買取り制度」に対して、反対表明をしたと書いた。
要するに、経済性がまだ十分に進化していない「再生可能エネルギー電力」が国民の費用負担になるから、そのコストが(化石燃料による発電コストよりも)十分に下がるまでは、電力会社に買い取りの義務を課すのは良くない、と言っているのである。

では、「再生可能エネルギーによる発電」の必要性はない、と言っているわけではない様だ。
つまり、どこかの企業が頑張って研究して、十分にコストが下がる見込みがついてから、事業に着手して、それを電力会社が採用すればよい。と言いたげである。
そのどこかの企業とは、どうやら日本の企業(経団連に加盟している企業)ではなく、ヨーロッパや中国やアメリカの優秀な企業がやってくれる筈であるから、それを待っているのが良い。
これが、経団連の老害集団による結論の様である。

それで良いのなら、国民にその様に説明をしていけば良いモノを、あたかも国民の皆様がたのことを一番心配して、配慮しているのは、経団連に加盟している企業経営者達です、とばかりに、親切の押し付けをしている。
それくらいに国民のことを思うならば、もっと再生可能エネルギーへの研究投資と、事業投資を積極的に進めて、世界で一流のレベルの技術力と事業採算性を実現して欲しいモノである。

「再生可能エネルギー電力の固定価格買取り制度」は、大企業(経団連に加盟している各社)が、しっかりと投資をしないから、やむを得ず国会で法律を成立させて、この事業面への投資を加速させようという狙いである。
企業がなかなか研究投資をしないで、技術開発の速度が上がらないので、広く国民(電力消費者)から寄付金を集めて、果敢に「再生可能エネルギー発電」事業の取り組んでいる企業(中小でも、べbチャ―企業でも分け隔てなく)に、発電電力量に応じた資金を投入する仕組みである。

この新技術、新事業への投資増加は、間違いなく経済効果を引き出し、事業が成功につながれば雇用の創出、増加に結び付く。
なんでの、国民の為にはならないと言えるのか。
ホンネは、自分たちの旧産業にとっては、電力コストの値上げ要因は、事業経費の増加になるので、商品やサービスの価格に転嫁せざるを得ない事にある。
ところが、経営力に自信のない経営者ほど、このコストアップ要因に対する対策を講じていないので、とにかく先延ばしをして欲しい、と思っている。

この先延ばし体質が、この20年ほどの日本に定着して経済成長を停滞させてしまった。
厳しい目標を課されるのは誰しも嫌うし、ナアナアの状態を上手く過ごしたいところである。
しかし経済がグローバル化して、さらに世界共通の課題である「気候変動問題」がひっ迫してきたのであるから、この先延ばしの体質は、もう許されない状況になっている。

消費者は、毎月150円~200円の電力料金の負担を、(寄付として)容認する時代になっている。
では企業負担の電力コストの上昇はどうするか、それは企業経営者の責任、役割である。(次回)

日本の原子力産業界は、石油業界の様なリスクは負えない。

2010-07-28 | 核エネルギー・原子力問題
石油時代の転換を思わせる大事故となった「米メキシコ湾の原油流出事故」の報道が出された。
朝日新聞(7月28日朝刊3面)によれば、事故を起こした、英BP社の2010年4月~6月期決算は、1.5兆円の赤字となった。
事故対応に伴う原油回収や地域住民への補償の負担などで今後見込まれる費用として2.8兆円を計上して対応費用としている。

この損失額は、英国企業の歴史上で、最大の規模となっている。
さらに、今後の原油の流出量当たりの罰金が課せられることになっていて、事故原因に重大な過失が認められる場合には、罰金は1.3~1.5兆円に達する見込みと予測されている。
この原油の流出量の正確な把握は困難で、推定値によることになるが、どのような方法で推定値を出すかも決まっていない。

アメリカの連邦法にもとづいて、罰金を科していくと同時に、今後明らかになる事故被害の補償は、すべてBP社の負担させるべきだとアメリカ政府は主張してきている。
「アメリカ国民の税金は、外国の一企業の為の損失補償には、1セントたりとも使わない」とオバマ大統領は主張している。
これは、アメリカ政府が原油の採掘を、危険性の大きい海底油田まで広げて欲しいと、依頼したわけでないから、当然の措置であろう。
一企業が利益追求の目的で事業を進めた場合は、失敗のリスク(損失額の穴埋め)をすべて企業責任で負うのが、原則である。

英BP社は、社内留保が約7兆円以上あるので、損失額を全額負担しても、倒産するには至らないが、企業としては大きな痛手になる。
今後の油田の採掘、操業には、一層の安全対策を重点的に行うことにしていくであろう。

このような流出事故の損失補償によって、企業が倒産した場合は、どうするのであろうか。
その場合は、被害者が損害を被るだけとなっては、大きな社会問題となるので、最後の救い手、損失負担は、政府、国の仕事となり、結局は国民の税金での負担となる。

これが石油事業の規模である場合は、まだ被害の範囲も損失も推定の範囲で対応策を検討しておくことができるが、原子力発電事業となった場合は、どのように被害を想定しているのか。

日本の原子力産業界は、海外の発展途上国に輸出をもくろんで、国の後押しを要請している。
国は、何を勘違いしたのか、原子力産業を後押しすることが国民に利益にかなうとして、この原子力産業界の言い分をのみ込む方向に転換している。
しかし、原子力発電所は、事故をおこす危険性とテロ攻撃を受ける危険性のリスクが、見積もることは困難で、その時の被害額は想定もできない位に膨大になる恐れがある。
事故が起きた場合には、相手先の企業も日本の企業も、倒産する規模の損失額を負担しなければならない。
倒産してしまえば、あとは日本政府、日本国民の負担となる。
結局、原子力産業界は、失敗のリスクを国民に回す、ツケ回しを要求していることと同じである。

日本の経済政策を無策にし続けてきた経団連とマスコミ。

2010-07-27 | 快適エネルギー社会問題
ヨーロッパの先進諸国における「再生可能エネルギー産業」の育成、拡大のための政策として、
優遇政策が2000年の初頭から実施されてきた。
これらの成果は確実に表れて、その産業に従事する新規の雇用者が増加している。
日本は今までに打ち出した政策は、限定的なレベルであったので、新規の雇用増はほとんどない。

今回の政権交代で、民主党政権は再生可能エネルギーの発電電力を優遇する制度として、「固定優遇価格買取り制度」の実現を公約していた。
政官発足から11カ月経過して、やっと、経済産業省から、その制度の中身が有識者会議(これもメンバー選定が妥当か疑問があるが)で了承されて公表された。
これについて、マスコミの報道と経団連の動向を書いて、その問題点を指摘したい。

再生エネ買い取りで負担増 標準家庭で150~200円  2010/07/23 【共同通信】
 経済産業省は23日、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電力 を、電力会社が全量買い取る制度を検討する同省の有識者会議に、買い取り費用 を電気料金に上乗せする制度案を提示し、了承された。
制度導入から10年後には、夫婦と子ども2人の標準家庭で月約150~200円の負担増を求めている。(中略) 同省は、早ければ2011年度からの導入を目指す方針。
買い取りの対象は、これまでは太陽光発電だけだったが、風力、水力、地熱、バイオマスの発電にも広げる。家計の負担増が明確に示されたことで、国民から反発が出る可能性もある。(後略)

このマスコミの論評では、家庭での負担が増える事に国民から不満が出そうだとしているが、負担が増えることで、何が国民へのメリットとして生まれるかを説明していない。
もう10年以上に渡って、日本は雇用の減少に有効な対策を打ててこなかったが、「再生可能エネルギー発電の新産業」が拡大すれば、雇用の増加に貢献することは明らかである。
つまり、国民は負担増ではなく、新産業への投資をすることに協力をすることになる。

また例によって、守旧産業の集まりである「経団連」は1998年以来、一貫して、温室効果ガスの削減政策に対して反対姿勢をとり続けてきた。
この為に、日本の再生可能エネルギー産業の育成が阻まれてきた事実を直視せず、雇用を生みだす波及効果には、目をそむけてきた。
今回の「固定優遇価格買取り制度」に対して、さっそく、反対声明を発表している。

エコ電力全量買い取り制度、経団連会長が「反対」 2010年7月26日 朝日新聞
 日本経団連の米倉弘昌会長は26日の記者会見で、電力会社による太陽光など再生可能エネルギーの全量買い取り制度について、「国民にも負担増になる。経団連としては反対していきたい」と述 べた。経済界の協力が得られなければ、再生エネルギーの普及は難 くなる。
米倉発言は、今後制度の詳細を詰める過程で影響をもたらしそうだ。(以下、次回に引用)

この10年以上に渡って、国民負担が増えるとキレイごとを理由に阻んできた姿勢のままである。、2000年代の認識の誤りを少しも反省していない経団連、救い難い老害集団。(以下、次回に)

気候変動は異常現象ではなく、変動過激化が自然界の流れ。

2010-07-26 | 暮らし・健康問題
集中豪雨の連続のあとは、連日の猛暑で多くの人が健康を損なう状態になっている。
日本では、先日の特定地域への集中豪雨によって、山肌が削り取られて土石流が大量に発生し、
国土の崩壊現象を、各地で引き起こして国土の脆弱さを表している。
緑に覆われた山林は、実は40年くらい前の「林野庁の拡大造林政策」によって、保水性の良い広葉樹林が伐採されてしまい、そのあとに、成長の早い針葉樹林を植えた山林である。
それも、手入れをキチンとして適切に間伐を実施していれば、まだしも、密に植林したままで、間伐を怠った為に、成長が邪魔されて細い幹の樹木ばかりがヒョロヒョロの状態で、上部の部分だけに葉がついている、不健全林である。

この山林では、樹木の根も浅い部分にしか伸びていないで、土壌の保持力も弱い上に、上部の葉に日光をさえぎられた地面には、土が露出している。
降った雨水は斜面を勢いよく流れた表面に土を流し去り、根元の土を少なくしていく。
限界を超えたところで、樹木が倒れて一気に土壌が崩壊していく。
これが、テレビの画面でも見られた「山肌の筋状の崩壊現場」の実態である。
この状況が日本の全国のいたるところで進行しているので、今後も集中豪雨のあるたびに、山林の崩壊と土石流被害が多発するであろう。

これは40年~50年前の林野庁のお役人の誤った政策が原因であって、それを後の手入れを怠りながら、定年後は悠々と天下り先で閑職をこなして勇退していった「まぎれもない人災」である。
これから10年、20年かけてでも、この「拡大造林政策の誤り」を修正して、豪雨にも耐えられる健全な山林にしていかなければ、次世代に「山肌の筋状崩壊あとばかりの国土」を残すことになるであろう。

また、世界レベルでは「異常気象」ということで、偏西風が大蛇行した影響で、ロシアに熱波が襲い、南米には寒波が襲来している。
これを異常気象と呼んでいるうちは、人間は反省しないであろう。
ここ20年以来の議論となっている「気候変動問題」の一部が、確実に現時点でも表れていると、
受け取るべきである。
もう異常気象と思うのではなく、これから時代は気候の変動が激しくなる「気候変動過激化時代」に入っていくのである。
その原因となっている「温室効果ガス」の排出削減も重要な世界課題であるが、それを最大限に実行したとしても、「気候変動過激化」は避けられない。

その事態を想定内に入れて、インフラ整備や国土保全、そして、何よりも重要な食料の安定的な供給の確保を図るべきである。
今回の熱波で、ロシアの小麦の収穫は例年の2割減収になり、輸出余力はゼロになる。
昨年はオーストラリアの大干ばつで小麦の減収が著しく、小麦価格の投機を招いて、価格の高騰につながった。

日本は食料の自給率が40%であるが、対策を急ぐ必要がある。現内閣には危機感は皆無・・か?。

新産業の戦略目標を定める前提には基礎研究と核心技術開発。

2010-07-25 | 海洋産業問題
大きな戦略目標を定めて、継続的に必要な資金を投じて、新産業を興すこと。
これが、21世紀における国と地域社会の重大な使命である。
医療や福祉の充実も怠ることはできないが、その財源のもとになる「新産業と雇用」を増大させなければ、キレイごとのスローガンだけに終わってしまう。
「強い福祉」「強い財政」などの、呪文を唱えるなら、まず「新産業の育成」をお題目にして、あらゆる知恵と汗を結集しなければならない。

前回に民主党の政権交代の目玉マニフェストであった「国家戦略局」を設置していく実行段階で、菅首相の路線変更(従来に自民党と同じ様に、首相への提言組織に縮小する)を批判した。
官僚支配の政策、予算配分から脱却して、内閣の生命をかけた「戦略目標の実現に向けての司令塔」として組織つくりであるのに、腰砕け状態になっている。
これには、各界からも菅内閣の「官邸の迷走」として批判を大きく浴びている。
なぜ、路線を変更したかの説明も曖昧なままで、参議員選挙前に唐突に消費税増税10%路線を自民党の主張にすり寄る「現実的政策」という「腰砕けを露呈した事態」に酷似している。

行政の縦割り権限に任せて、それを予算編成権限で取り仕切る「財務官僚主導」の政策では、
日本は空白の20年の停滞から抜け出せないことを、実績が証明しているにも拘わらず、である。
たとえば、このブログでかなりの回数に渡って書いてきた『海洋産業立国』の構想なども、今までの官庁に任せていては、絶対に構想すらも出てこない。
まして、実行段階になると、縦割りの権限によって、あらゆる面で調整と妥協が必要になる時間の膨大なロスが予測される。
このような事態を官僚経験者は、良く知っているから、無益な成果の上がらない仕事はやらない様にしている。

4月26日~5月5日に書いた、「漁業資源の課題」「地域産業としての海藻類産業の活性化」は、水産庁の責任と権限であるが、弱小官庁としては現状の維持がやっとで新しいことはできない。
世界の潮流は、バイオマス由来のエネルギー源の原料として、「藻類の栽培」による事業化があらゆる方向から研究されているが、経済産業省も、農水省も、まったく関心を示さない。
前回、前々回に紹介した「海洋風力発電」「海洋エネルギー潮力発電」などの新産業分野も、ヨーロッパ諸国では、着々と進んでいるが、日本はどの官庁も様子見に徹している。

それぞれの分野においては、まず、着実な基礎研究と、核心となる技術開発が必須であるが、今の様な乏しい予算の縦割りでは、世界のレベルからは、まったくおいていかれる状況である。
各省庁の権限での優先順位からすれば、これらの課題は一番低いレベルに置かれる政策目標であるから、これからの緊縮予算、無駄使い削減の流れで、確実にカットされるであろう。
しかし前にも書いた様に、日本は世界で6番目に広い、「排他的経済水域(EEZ)を持つ国家」
であって、この資源を活かすには、絶好の条件に恵まれている。

まずは、この3年間で【海洋産業立国】の「基礎研究分野の拡充」と「核心となる技術開発」の着手をすべきであろう。
それすらできない様な内閣では、政権交代をしてもらうしかない。

大きな国家目標を進めるには組織を改革することが始まり。

2010-07-24 | 経済問題
再生可能エネルギーの普及促進政策について、1990年代から2000年代の日本の法制度は、経済産業省が担当してきた。
この期間で、日本はEUの先進諸国に立ち遅れる制度のもとで、ほとんどの分野で後退してしまった。
太陽光発電の設置量では、ドイツ、スペイン、中国に抜かれて世界一の座から転落してしまった。
風力発電は、アメリカ、ドイツ、中国、スペイン、のベスト4に対して、日本は10分の1以下である。

これだけの失政としてきても、経済産業省が今後も再生可能エネルギーの普及促進政策の担当官庁であり続ける事態は、なんとも言い様のない理不尽な事態である。
企業活動やプロスポーツの世界であれば、10年に渡って負け続けていれば、首脳陣は責任を取らされて、当然、交替させられている。
官庁は責任をとらない組織として、権益だけは保持し続ける非合理な組織の代表であろう。

それは政策の失敗は、政権を担っていた政権党の幹部、担当大臣の責任とされて、選挙の洗礼によって、交替させられることで、ツジツマを合わせることになる。
とは言っても、政権党の政治家が、その分野での専門家でもなく、政策立案能力は乏しいので、官僚に依存している状況だから、大きな政策変更は出来ない。
先進国での成功している制度を、後追いすることしか、対策は出来ない状況である。

前回に紹介した「洋上風力発電」と「海洋エネルギー潮力発電」の構想なども、もともとはEUのデンマークや、イギリスで成功して実績が出ているから、否定することはできない筈である。
しかし、日本の官庁は、縦割り制度になっているので、港湾施設に設置となると「水産庁」の担当になる可能性があるが、これはナンセンスである。
また、海岸線に近い護岸設備の関連して洋上風力発電を設置するならば、国土交通省の担当になって、経済産業省は口を出せない。
がしかし、発電した電力を送電線網につなぐ必要があり、この面では、電力会社とその担当官庁の経済産業省が口を出してくる。

今までにない大規模な設備を構想しても、今の行政の縦割りのママでは、実際に具体化して建設段階になると、権限と責任の取りあい、なすり合いで、収拾がつかなくなる懸念が大きい。
このような革新的な構想を、国家レベルで行うには、強力な権限を持った、指導的な組織が必要になる。
民主党政権のマニフェストには、このような分野を統括して、予算と人事権、命令権をもった、「国家戦略局」を創設する、と明記されていた。

それが、どういう検討の結果か説明のないままに、現状の「国家戦略室」の小規模の組織に留めて、首相直属の政策提言の役割にするとの、突然の方針変更となった。
官僚主導の縦割り行政の弊害と停滞が、大きな問題となっているのに、自民党政権時代と大差のない組織では、新産業の育成と活性化など、望むべくもない「腰砕け状態」に陥っている。

長期の国の戦略目標によって新産業を活性化することが本筋。

2010-07-23 | 海洋産業問題
再生可能エネルギーの産業を育成して、経済成長の活性化に役立てて、雇用の創出と地域の新興に役立てる。
この目標は今では、どこも異論を言い出すところはなくなったが、今までの消極的な政策の連続で、世界からズルズルと遅れている。
前回に太陽光発電の立ち遅れについて実績を書いたが、それでも日本の太陽発電設置容量は世界の3位であり、生産技術や開発技術力において、今からでも追い越す政策をとれば、挽回は可能であり、経済成長に貢献できる。

しかし、風力発電の設置容量となると、これは経済産業省の消極的な姿勢に災いされて、10年前から世界の風力先進国から遅れっぱなしで、今では世界の13位に低迷して、2009年末では累積の設置容量は世界のわずか1.3%にしかなっていない。
この普及の圧倒的な停滞にしびれを切らして、日本の風力発電機器の有力企業である三菱重工は、
せっかくの優れた風力発電関連の機器製造工場を、日本での拡充をあきらめてアメリカに工場設置を移すことになった。
新たな雇用機会をミスミス海外に移さざるを得ない決断に追い込んだのは、国内での普及にブレーキをかけ続ける電力会社と、天下り先を確保したい経済産業省の官僚の既得権重視体質である。

日本で風力発電が増やせない理由を、今までも電力会社と経産省は、あらゆる知恵を出して、出来ない理由を並べたてた。曰く、
日本は台風が来るので、風力発電機の強度が必要で技術的にむずかしい。
人家が多くて、騒音被害が懸念されるので、設置可能場所は限られるので増やせない。
人の住んでいない地域は送電線がないので、そこに設置するとコストが高くなり、採算性が悪い。
風力発電は天候に左右され、風任せの安定した発電ではないので、電源として価値が低い。
予備電源の用意が必要で、燃料のタキ減らし(火力発電の燃料代を削減する)にしかならない。

これらの理由は間違いではないが、要するにリスクのある新しいことはやりたくないのである。
このように、民間企業の経営判断に任せていては、新産業となる再生可能エネルギーの技術開発と生産は、ほとんど進まないのが当たり前であるのに、自民党政権は何もしてこなかった。
民主党政権になってからは、温室効果ガスの25%削減目標の方針に合わせて、風力発電にも力を入れる方針に、やっと転換している。

そのひとつに、「洋上風力発電を大増設する政府の海洋エネルギー案」が公表されて、2020年までに、海洋に風力発電設備を設け、1千万キロワット以上の電力を生み出す計画を検討し始めた。
直径120メートルの大型風車が2千基以上稼働する計算だ。
潮流を使ったエネルギー技術も開発に力をいれて、温室効果ガス削減や沿岸部振興につなげる。

 洋上風力発電の普及には大型風車の開発や、工事用の特殊船舶の建造などが必要とされ、鉄鋼、機械、造船といった産業への波及効 果も大きい。
政府は6月に策定する成長戦略に、洋上発電の支援を盛り込む考えだったが、菅内閣に代わってしまい、この構想も迷走しかねない状況である。

国民の期待を裏切り続ける「腰砕け管内閣」の方針は如何に?

環境規制と普及促進への規制改革の両面で立ち遅れている日本。

2010-07-22 | 環境問題
新産業を育成、拡大することが、日本の経済成長を促進して雇用を生み出し、付加価値の増加が働く人への収入増につながる。
この一般の勤労者への配分が増えることこそが、国内消費の需要停滞を打ち破る、重要なポイントであることは論をまたない。
それにも拘わらず、ここ10年近くに渡って日本のデフレを脱却するには、規制緩和だ、構造改革が優先だとして、市場の力に依存する政策を最重点に進めてしまった。
この経済の原理を知らない偽物の経済学者の論拠に従って、日本の政治、行政、制度をし切ってきた経済官僚と政治家の責任がおおきい。

前回に自動車の環境規制(特に燃費規制、CO2排出削減)によって、大企業の研究投資、開発投資、新技術への設備投資が大幅に促進されて、それが経済の活性化に貢献する事例を書いた。
これは、自動車産業の分野だけでなく、再生可能エネルギー分野(太陽光発電、風力発電など)の規制と普及促進制度を適切にしていくことが、大きな力になる事例である。

新聞報道によれば、世界で新たに設置された再生可能エネルギーによる発電容量は、2008年から2009年への1年間で、22%増加したと発表された。
しかし再生可能エネルギーの日本での総設備容量は、1位の中国の7分の1で、世界6位にとどまって、GDPで中国に抜かれた事よりも、新産業分野で大幅に立ち遅れている方が深刻である。
その中で、日本で太陽光発電の設置容量は2004年までは世界1位であったものが、制度の立ち遅れで、ズルズルと後退して、世界トップのドイツの8分の1にとどまる。
風力発電の停滞も日本は深刻な状況であり、中国では1380万キロワットが新設されて、世界での設置容量増加分の3800万キロワットの36%の比率を占めている。
中国政府の再生可能エネルギーの普及拡大政策が、実績を上げ始めている実情を示している。

再生可能エネルギー分野が、新産業としての最有望であると解っているにも拘わらず、ここまで立ち遅れるのは、政府の普及促進制度、環境制約が実効性のない仕組みになっているからである。
そのなかで、「再生可能エネルギー発電の固定価格優遇買取り制度」の立ち遅れは、顕著な例であるが、いまだに経済産業省の内部で、国民の意見聴取をしてからなどと、モタモタと制度検討をしている段階にとどまる。
早急に優遇制度と公的な設備への義務的な設置規制など、矢継ぎ早に手を打つ必要がある。

一方、日本の行政には、縦割りと過剰規制の弊害によって、新産業が普及しにくい仕組み、規制が各方面にガン細胞のように、はびこっている。
太陽光発電の設置をする場合、20キロワット以上の設備をつけると、電気事業法によって安全管理のために守るべきことを定めた保 安規定や電気主任技術者が必要になる。
また、太陽電池パネルを高さ4メートルを超す建物の屋根などに つける場合は、電気事業法に加え建築基準法に基づく手続きも必要で、規制が2重になっている。
こちらも国土交通省と一本化するなどの見直しを検討するとしているが、このような旧態依然とした規制を、即刻、改革することが迫られている。

日本の新産業の普及促進には、規制の適切な設定、無用の規制を改革することが必須である。

新産業の育成と普及は環境制約を強化することで促進される。

2010-07-21 | 交通問題・自動車
先進国においては需要の伸びが鈍化して、生産の増加を目的とする事業投資は控えられる。
生産設備や流通の増加に対応する必要がなくなり、投資が減ることは経済の理屈どうりである。
さらに限られた需要の奪い合いで競争が激化するので、価格競争、コストダウン競争には、一段と力を入れなければ、事業は生き残れない。
これが人件費の抑制や非正規雇用従業員の増加に結び付き、全体としての賃金ダウン、働く人への配分が減る。
労働分配率の減少が、さらに需要の伸びを抑える効果を生んで、デフレスパイラルに陥る。

これは、もう誰にでも解る理屈であり、いまさら説明の必要もないのであるが、政治家や産業界の守旧派の人たちに対しては、しつこいかも知れないが、まだまだ説明を続けなければならない。
つまり、「みんなの党」のアジェンダにある様に、『「緑の成長」=環境制約による成長の実現』の意味が良く解っていない人たちが、多く取り残されているからである。
具体的には、自動車の例、それも今話題の「エコカー」に関連する実例を書いてみよう。

本日の新聞(朝日、朝刊13面)に、「次世代エコカー覇権争い」の表題で、[EV](電気自動車)、[PHV](プラグインハイブリッド車)に対する、各自動車会社の動きが報道されている。
そのなかで、ホンダはアメリカ市場の売上比率が約4割と多く、そこでの販売確保が社運を制することになるので、絶対に優位を保つ経営戦略である。
アメリカには、2012年から環境規制がさらに強化され、特にカリフォルニア州では、「排ガスを出さない車を一定の割合以上を売らなくてはならない」として、これをクリアーするためには、
[EV]か[PHV]の販売台数を増やさなければならない。

自動車各社は、それぞれの判断で、トヨタは、[EV]、[PHV]の両方を発売する。
ニッサンは[EV]に集中し、ホンダは[EV]か[PHV]の判断を迷っていたが、時間の制約で、両方を販売することに決断をした。
いずれにしても、新機構、新技術の塊の様な「エコカー」を販売するためには、莫大な開発投資と、製造設備への新規投資が必要であり、自動車企業にとっては大きな負担であって、失敗すれば社運が傾くリスクもある、大きな決断を迫られる。

この決断を促すのに、環境規制(自動車でいえば、カリフォルニア州規制)が、大きな促進要因になっている。
もし規制がなければ、研究は続行していても販売に向けての莫大な開発費の投入は先送りをしたいところであり、さらに大きな借入れをしての新規設備投資は、経営のリスクを増加させるので、経営者としては、時間をかけて様子を見ていきたい誘惑が大きい。
しかし、環境規制は時間が決められていて、決断を躊躇する時間を経営者に与えない。
イヤがオウでも、決断をして開発と設備に大金を投じる事が必須になる。

これが、環境規制が設備投資を増加させて、経済成長の加速に貢献する理屈であるが、これは、自動車業界に限られた話ではない。
このような投資を促す環境制約、目標の設定が経済成長の大きな要因になることは自明である。

成長戦略の要である「新産業の育成」は規制廃止で出来る・・?

2010-07-20 | 経済問題
政権交代によって、惰性的に行われてきた産業界に活力を吹き込めるかが、これからの重要な課題であろう。
近年の20年に渡る政治状況ももとでは、日本はデフレ経済から抜け出る活力を引き出すことができなかった。
今までの官僚主導による経済政策では、民間に活力が醸成される効果が少ない証拠である。

そこで、これからの経済成長には、何が効果的かをもっと深く検討し、政策を打ち出すにしても重点的、集中的に効果を出す様にしなければならない。
国民の期待を集めた「みんなの党」の打ち出している「成長戦略」を、事例に採りあげてみたい。
「みんなの党」のアジェンダに書かれていることから引用すると、
『経済の成長は、バラマキというカンフル注射でもたらされるものではない。』
『企業人や地域の現場の人々のチャレンジ精神と活力によってこそもたらされる。』

この部分の指摘は、まさに、そのとうりであって、これを基本に認識に置く必要がある。
このチャレンジ精神と活力を引き出す、具体的な政策が、本格的に検討されなければならない。
「みんなの党」のアジェンダには、「脱官僚」と「地域主権」が強く提案されている。曰く、

『その意味で、成長戦略の根幹は、官僚統制経済(霞が関による民間統制)と中央集権体制(霞が関による地方統制)からの脱却。』であると主張している。
『「科学技術の振興」が最も重要であり、教育の強化、競争政策、規制緩和、など、成長基盤の整備を行う。』としている。
だが、今までの政権に対する革新のポイントは、どうも良く見えないで、とにかく、中央集権の官僚統制を破壊することがポイントだと主張しているだけに見える。

どうもアジェンダの内容だけでは、「みんなの党」の掲げている「経済成長戦略」の実施目標政策は、少しも具体性が見えないので、今後の動き方や政策論議を見ていくしか、判断のしようがない現状である。
具体的には、例えばとして、
『・地域密着型産業(医療・介護、福井市、子育て、家事支援、教育、農業など)は、時代に合わない規制などで本来の成長可能性が阻害されており、規制改革のよる産業創出が期待できる。』
として、中央政府による規制を取り払えば、自立的に成長軌道にのって、雇用が増えていく路線に乗れる、と言う、規制撤廃、一辺倒の主張にしかみえない。

『規制改革を進める前提として、
・政治主導体制の実現(「国家戦略局」「内閣人事局」「内閣予算局」により、政策・ヒト・カネを官邸で掌握など)
・「地域主権型道州制」の導入。などを進める。』としているが、
「脱官僚」と「地域主権」を進め、「バラマキ」もしない。
この繰り返しの主張だけである。
これでは、威勢の良い掛け声を、いっしょくたにぶちまけた、公約のバラマキであろう。

大多数の国民が支持する緑の成長政策を実現できない筈はない!

2010-07-19 | 快適エネルギー社会問題
日本の経済成長にとって実行すべき計画が「新産業の育成による雇用の創出」であることは、今や異論を唱える人はいない。
この新産業の分野で、グリーン・イノベーション、グリーン・グロース、などと呼ばれる分野が、世界中で加速している。
日本でも、民主党とみんなの党が「緑の成長」=環境制約による成長の実現と言う視点で、公約に打ち出しているし、公明党はさらに積極的である。

しかし、民主党は世界に向けて「温室効果ガスの削減を25%」と打ち出して、「温暖化対策基本法」を創る動きをしてきたが、政治とカネの問題につまずいて、先の通常国会では、もたついて廃案としてしまった。
今度の選挙で「参議院のねじれ」によって、成立がさらにもたつく懸念が大きくなった。
だが、選挙の得票を見ると、民主党とみんなの党、公明党の3党を合わせると、選挙区では53%(民主39、みんな10.2、公明3.9% )を獲得し、比例区でも58%(民主31.6、みんな13.6、公明13.1%)となって、この3党の主張する公約を実現することは、まったく問題ない筈である。
3党の共通公約は、「緑の成長」であり、その主力は、温室効果ガスの削減を25%目標として進めるべき、と言う確固たる取り組みを実現することである。

自民党政権の時代には、産業界の抵抗によって、「グリーン技術」は、省エネルギー方面に偏重してしまった。
再生可能エネルギーなどの新産業に育成する分野への投資と優遇は、限定的な政策にとどまり、世界から大きく遅れる原因をつくりだしていた。
昨年の政権交代の時点からは、この「グリーン・イノベーション」は世界の潮流である事を、表明して確実に優先度の高い政策目標をなった。

今回の参議員選挙でも、この方向の政策で「新産業育成」を図ることには、国民の大多数が賛同していることを得票が示している。
3党以外に社民党、共産党なども含めて、このグリーン・イノベーションを加速する方向への法案は、異論がない筈である。
部分連立でもよし、連立政権を創るまでもなく、早々に「温暖化対策基本法」を5党の合意で(3党でもよいから)成立させるべきである。

大企業も新進のベンチャー企業も、この「環境制約による経済成長」と言う方針を、国の政策で決定するならば、一気に事業の重点を「緑の成長」の波に乗る方向に転じる筈である。
自民党政権のときには、緑の改革をやるやると言いながら、事実は1990年比での削減率はゼロ%に留めるし、2020年の目標は、世界のヒンシュクを買う「1990年比で8%削減」に留めようと、消極姿勢に終始してきた。
これでは企業経営者も重点を「緑の成長」に振り向けることを躊躇して、様子見をする姿勢になり、投資を絞ることになって、その分は経済成長の足を引っ張ることになった。

大多数が賛同しているのに、実行できないとなったら、それこそ全くの無能政治となってしまう。
菅内閣は、この国民が期待する政策を、まず、イの一番に実現すべきであろう。

選挙においての基本理念をないがしろにする民主党のブレ。

2010-07-18 | 核エネルギー・原子力問題
民主党が政権交代に向けて国民に約束をしたマニフェストが、次々に反故にされて信頼を失っている状態は、日本にとって不幸な状態である。
圧倒的な多数を確保した先の衆議院選挙では、日本の将来に対して希望の持てる大胆な政策目標を掲げて、従来の硬直化した官僚統制政策を打破するモノと期待された。
しかし次々と目標は曖昧となり、従来の官僚が作った路線に引き戻される状況が、露見している。

これは、政権党の政治家の理念や目標に対する熟慮のある信念が不足していることに起因する。
確かに、現実の政策立案に向かうと、官僚の情報量と経験にはかなわない面があるであろう。
しかし、官僚はあくまでも国民から選ばれた権力ではなく、国をどのような方向に導くかは、政権を任された政治家の理念、信念に基づいての長期的な戦略の上での政策によるべきである。
どれ一つをとっても、たった10カ月程度で、コロコロと政策目標を変える様な、腰の座らない、軸足がブレている政治家には、日本の将来を任せるわけにはいかない。

民主党の理念のなさには、このブログで何回も採りあげた、原子力政策のブレぶりがある。
核兵器廃絶の目標に向けて、世界の先頭に立って努力する、としていたのに、現実の「原子力発電の海外技術輸出」という、おカネにつながる魅力に翻弄されて、原子力産業界と、経済産業省の原子力族官僚の言いなりである。
インドへの原子力技術輸出を可能にする協定を結ぶ方針に転換してしまい、選挙の時には一言も国民に説明なしである。

本日の朝日新聞(朝刊6面)に、インドの史上最悪の産業事故の事例が載せられて、インドの産業技術にまつわる、法制度や管理体制の不備が、最悪の事故を未だに問題だらけの状態に放置されている状況を伝えている。
要点を紹介すると、インド中部のポパールで、有毒ガスの流出事故が、1984年に発生した。
この刑事訴訟の判決が26年もたってようやく出されたが、被害者の補償は全く不十分である。
有毒ガスの漏れに対する安全装置が機能しないで、犠牲者は5295人に達し、負傷者は56万8千人に上る。
地元のNGOの調査では、死者は約2万3千人に上るといわれ当局の取組姿勢も疑問が残る。

被害の大きさに比べて、判決内容はあまりにも軽く、「正義は否定されて葬り去られた」と法相が嘆くほどである。
インド政府は、工場を運営するアメリカ企業に2900億円の損害賠償を求める訴訟をアメリカに対しておこしたが、インド国内の事故はインドの裁判所で扱うべきだとの判断で移管され、約410億円の補償金の支払いで、決着された。

一方、アメリカのメキシコ湾沖の原油流出事故では、イギリスのBP社に被害額の全額を賠償させる姿勢であり、これは、「アメリカのエゴのダブルスタンダード」と、インド人の中で、大きな反発を強めているという。

原発技術輸出が、このような大事故、国際紛争のリスクがあることを国民には隠している。
その上、核拡散防止の重要課題に背を向ける姿勢は、民主党の理念に背いていないのか?
他の政党もこの原子力問題については、頬かむりを続けているので、争点にはならないが・・・。

民主党のマニフェストの空手形になる国家戦略局構想の挫折。

2010-07-17 | 国創り政治問題
民主党の政権交代の目玉政策として、政治主導を目指して「各省の縦割りの省益から官邸主導の国益へ」と高い目標を掲げていた。
それが現実の政策として、「総理直属国家戦略局と設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する。」として、戦略室から始めた。
政権交代ヘ向けた民主党の総選挙用マニフストの、重要政策であり、看板でもあった。

それが、昨日に「国家戦略局構想を断念」と報道され、鳩山内閣において暫定的に設置した国家戦略室を単なる首相への政策提言の知恵袋の地位にとどめる方針に転換した。

これは、各省の縦割りの弊害と、長期にわたる国家目標による重点戦略の策定が出来なかった、従来の自民党政権と同じ構図に立ち戻ることになる。
何の為の政権交代、選挙民の期待感であったかが、問われないままの「戦略局あっさり挫折」である。

戦略局を重要な組織に格上げする「政治主導確立法案」を作成してまとめてきた松井孝治・前官房副長官は、菅総理に直言をして「官房長官が首相・財務省と相談し、政調会長も加わって予算編成をするというなら、自民党内閣とおなじじゃないですか」と批判した。
これでは、従来の自民党政権では出来なかった、省益を超える国益を長期的な戦略として立案し、的確な優先度のもとに、予算を確実に割り当てることができるのか。
国民に対して、また民主党政権を選択した選挙民に対して、丁寧な説明もなくマニフェストをあっさりと転換するのは、『菅直人首相のブレとセッカチ体質』をモロに表している。

先の参議員選挙が始まる直前に、説明もなしに、「消費税の議論を始めて数年以内に、自民党と同じ10%に増税します」と言いだしてからは、信頼感の喪失は相当なレベルに達した。
その反省も不十分なままに、今度の政権交代の目玉に等しい、国家戦略構想の基本となる組織を、自民党と同じレベルに留めるという状態に、わずか10カ月の短期間に基本政策の転換をした。
これが公約違反であることは明々白々であって、衆議院選挙をもう一度、やり直す必要があるくらいの重要転換である。

従来は各省の官僚ブレーンによる政策立案と、省益がぶつかった場合には、官邸の官房長官と与党の政調会長のルートで、族議員の中での利害調整をして、落とし所を決めていく。
これでうまく進んだ時代は、1980年代までの高度成長時代で、この時は長期的な展望による戦略立案に基づいての政策実施の必要がなかった。
アメリカやヨーロッパの様子を見ながら、後追い的な政策を各省の権限維持の目的に沿って、立案して実現していけば、日本は経済成長ができたのである。
これは、実業界でいえば、2番手戦略であって、失敗するリスクは少ない。

だが、冷戦終了後の経済のグローバル化と、途上国の急速な発展によって、生産拠点の海外移転が加速化して、国内経済の衰退が激しくなると、この2番手戦略は通用しなくなる。
しかし、自民党政権は、このことを認識せずに、従来のままの中央集権、各省の権益確保の重点政策に主導される、寄せ集め戦術レベルの政策に終始していた。
それを繰り返すことになる。