ついに、異次元の超金融緩和を実施した日銀総裁が、経営者との懇談会で、「2%の物価上昇にふさわしい賃上げを実施するのは労使の役割」と発言した。
日銀が目標とする「デフレからの脱却と2%の物価上昇」は、労使の責任で「ふさわしい賃上げ」の実現が必要だと、企業に強く促したのである。
安倍首相の言及で『最低賃金の政府権限での上昇』を約束したが、「GDPの成長率に配慮しつつ引き上げていく」として、逃げ道を作ってしまった。
黒田総裁は、はるかに強い主張で「労使に賃上げの責任」があると、断言した。
これで、日銀が賃上げの先頭に立つ姿勢を示し、デフレ脱却を強調したのだ。
安倍政権が「経済成長に即した賃上げ率」との姿勢を採り続ける限り、企業の方は「名目3%成長の可能性」は限りなくゼロと見てしまう。
だから給与の増加額は、物価上昇率に追い付く程度にしか、実施しないだろう。
すると、消費購買力は給与増加額程度しか増えないから、民間企業の新規投資は物価上昇率以内に留まる。
結局、安倍政権の意思の入らない「賃上げ要請」では、実質的な需要の増加は生まれない循環構造になってしまう。
安倍首相に任せる限りでは、物価上昇率2%の実現は不可能である。
超金融緩和の仕掛け人である黒田日銀総裁は、おカネを市場に供給しただけでは、デフレ脱却が不可能だと悟ったのである。
日銀の役割ではないと承知の上で、「賃金引上げは労使の責任」と、他人の領域に踏み込んででも強く言及したのは、【賃金デフレの根幹】をついたのだ。
安倍首相が「お坊ちゃん政治家の本質」を露呈した弱腰姿勢では、経営者が賃上げの責任を果たす可能性は、皆無である。
異次元の言及と言われ様が、【経営者側の賃上げ消極姿勢を「デフレ経済の元凶」】と想定して、「賃金の鈍い伸びが足かせになっている」と強く促した。
しかし、民間経営者側は、政府や日銀に言われて【賃上げに応じるポーズ】だけはとっても、ホンネのところでは、日本国内市場の成長は期待していない。
黒田総裁は、「デフレ期に考え方で、投資や雇用判断、価格設定」をしている企業は、競争に出遅れて不利になると強調した。
それは、2%の物価上昇率が実現した場合、との但し書きつきである。
2016年度の後半には、「インフレターゲット政策」の2%実現というが、それも願望的な目標で、政府も民間企業も、他人の責任に押し付け合っている。(続)