庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

政権交代後の1年で国の将来立国の方針は定まったのか。

2010-08-31 | 国創り政治問題
民主党が国民の期待を担って総選挙で圧勝し、政権交代を果たしてから約1年になる。
この間に、自民党の馴れ合い的な政治手法や、官僚主導、省益中心主義にどっぷりと浸った政策に対し、マニフェストという、錦の御旗を掲げて進んできた。
しかし現実は厳しく、あらゆる場面で既得権勢力の抵抗にあって先送りしたり、なし崩しに骨抜きにされてきた。

政権交代に掲げた「環境先進立国」の日本の国策は、中国や中東の新興諸国の積極的な「グリーンイノベーション」方針の国策のもとに、豊富な資金を躊躇なく投資を集中して、瞬く間に世界の先頭グループにのし上がってしまい、日本は周回遅れに陥りそうである。
日本は既存のエネルギー業界や産業界の守旧派の抵抗で、温暖化対策基本法案は先送りされて、いつ基本の路線が動き出すか、見えてもいない。

また、昨年末に新経済成長戦略を発表して、2020年に向けての成長分野の達成目標を、数字で掲げたが、この内容については全く具体性に乏しくて、政府は6月末までに内容を具体化すると約束した。
しかし首相交代による政局の低迷や参議員選挙の惨敗によって、取組の腰がぐらついて何も進まずに、先送りされっぱなしである。

こんな状況では企業の経営戦略上の決断が出来るところ少なく、積極的な経営になりにくい。
仕方なく、企業経営者は確実に成果の出る方向に力を入れざるを得ない。つまり、
・一層の経費の削減と人員の抑制、人件費の削減。
・国内における需要回復、増加は見込めないので、海外事業に活動の主力を向ける。
・企業の内部留保資金は、国内への投資ではなく、振興国での新規市場開拓にむける。
これでは、国内の景気低迷、雇用の不安、デフレ経済は一向に好転することはないであろう。

この様な状況を打開するためには「新産業への積極的な優遇」方針を掲げて、揺るぎのない成長戦略によって、政府と行政の体制を集中することである。

2010年2月末のブログに、話の要点をまとめてあります。
この内容は少しも変更の必要はなく、今の政府のバラマキ的な政策を、戦略的に集中していくべき課題である。
その中で最重要な課題を、もう一度、確認しておきたい。
・「新産業」の基本は、脱化石エネルギ―産業であり、再生可能エネルギー産業である。
・交通戦略は、世界最先端の省エネ、技術革新で、世界トップレベルの技術を開拓、維持する。
・国土の保全、治山治水、森林保護、により地域経済の再生と自立を促進する。
・温暖化対策、25%削減目標を、ゆるぎない方針と定め、技術開発と起業を徹底的に支援する。
・原子力発電などの、将来に負の遺産を残す産業は、今の時点から拡大せず、安楽死させる。

この様な基本戦略を確固とした政権方針と掲げれば、日本の企業には優秀な技術者と経営者が多く育成されているのが、経済活動の活性化が図れる。
それが、日本再生の要である。

政権の実績は新規雇用をどれだけ創出したかで評価される。 

2010-08-30 | 国創り政治問題
アメリカの経済停滞はオバマ政権の数々の施策によって、悪化の方向をかろうじて転換してきた。
しかし長年の借金体質の国民性は染みついていて、おまけに多くの製造業は疲弊したり、海外に移転してしまった為に、ここ2年くらいの対策では容易に改善の方向には転換出来ない。
その影響で、失業率は10%を超えた状態で、各地で不満が高まっている。
歴代のアメリカ大統領の実績は、雇用をどれだけ生み出したかによって、評価される。

日本では企業の努力によって、製造業は何とか雇用を維持してきたが、規制緩和によって、労働者の雇用条件は低下の一途をたどってきた。
臨時雇用や派遣制度の拡大で、雇用は不安定化する一方で、政府の政策が適切であったとは言えない状況である。
それでも失業率は5%台で、アメリカや欧州諸国に比べれば、まだ雇用の不安は少ない。

金融業の破綻と低迷に加えて、蔓延している雇用不安が社会の安定性を損なっているので、欧州諸国の将来不安が増し、それを嫌った金融資本が日本の「円買い」に走り、円高が続いている。
日本はさらにデフレが進行する気配であり、一般国民は財布のひもをいっそう引き締める。
輸出依存の製造業は円高による利益減少で、経費の削減と人件費の抑制にさらに拍車をかける。

どちらを向いても、将来に希望が持てる「新成長産業」の展望が見えてこない。
菅内閣は、この円高に対する経済対策を緊急措置として打ち出す指示を各官庁に出しているが、一向に明確な具体策が出てこない。
やるべきことは、いくらでもあるのに、政策として具体的に仕上げる実行力が欠けている。
これは、自民党政権のときもひどかったが、官僚に依存していたので、各官庁の省益に沿う方向である場合は、速やかに具体化されて実行された。

民主党政権は脱官僚依存を標榜しているので、官僚から出される政策を採りあげたくない。
それなのに、自分たちで実行可能な政策立案は、ひとつも出来ないのが実情である。
マニフェストに載せたバラマキ政策は、おカネを配ることに終始するので、何も障害はない。
ただ、財源不足の状況からして、新たなバラマキ政策はもう出来ないであろう。

政権交代を果たしてから、約1年が経過したが、社会の不安は一向に良い方向になっていない。
民主党はリーダー争いのしている時期ではないのに、自分たちの地位や権力の取り合いをしていることに、活動エネルギーのすべてを注ぎ込んでいる。
長年の野党生活に浸った古老議員と、選挙活動の勢いだけで当選して、政策の立案には、まったく経験のない1年生議員ばかりである。

地域主権を実現する為に、どのような産業政策を実施して、地域社会を活性化させるのか。
そのためには、中央政府の過剰な権限を、財源とともに地域に移譲していく政策は、どのように具体策を決めてきたのか。
テレビに出演するならば、この具体化した政策内容をキチンと説明して欲しいモノである。
この大事なことを大きく採りあげないマスコミにも、大半の責任があることを自覚自覚すべきだ。

バイオマスエネルギー優遇政策は地域社会の自立に貢献する。

2010-08-29 | バイオ燃料・バイオマス
前回にエネルギー需要の増加に対応する方向として、再生可能エネルギー(特にバイオマス資源、木質資源)の生産に投資をすることが、雇用を生み出す事に貢献すると説明した。
これは、途上国に限る話ではなく、日本においても同じことが言える。
しかし、日本の経済産業省は2020年、2030年に向けたエネルギー供給政策において、原子力発電所の14基の増設を計画している。

これは、2020年までにおける「温室効果ガスの排出削減」を国際公約にしようとしている政府の方針にそって、現在、50基もある原子力発電の大幅な更新と増設をもくろんでいる。
地元の賛成を得る事が条件とはなっているが、一次的に工事期間にお金が地元に入るが、多くの設備の投資資金は、中央の大企業の収入となって、地域社会に還元されることは少ない。
バイオマスエネルギー関連の施設であるならば、原料の樹木の生産やエネルギー化工場での雇用機会が大幅に増える。

途上国と先進国における構造が、地域社会と中央経済社会の構造と同じ様相となっている。
地域社会が自立に向けて経済を活性化し、雇用機会を大幅に増やす事が必要である。
この日本のエネルギー生産構成を、2020年、2030年の目標に向けて計画的に転換する機会をいかして、地域主権を伸ばしていく方向に向けるべきである。
その為には、原子力発電ではなく、バイオマスエネルギー利用(発電と熱エネルギー)の技術を徹底的に優遇していくことである。

今まで説明してきた様に、日本は森林資源の恵まれた気候であり、その自然の成長量の半分を適正に利用することで、1次エネルギーの5%以上を賄う事ができる。
この分は、現在では石油などの化石燃料に依存しているので、そのおカネは中東の産油国などの、大金持ちの収入となってしまっている。
これが、日本の地域社会にお金が回る仕組みになれば、波及効果を生みだして、地域経済が活性化する。

民主党の政権交代によって、今まで放置されてお荷物扱いされてきた日本の林業を、技術革新と事業の再編を通じて活性化しようとしている。
それを今までの林業だけではなく、副産物である端材や小径材をエネルギー利用に回し、エネルギーの地産地消を優遇する政策を選択すれば、地元の経済にとって効果が大きい。
しかし、残念ながら、民主党の政治家はそのことをほとんど理解していない。

林業活性化を政策として、日本の木材需要の自給率20%を2020年までに50%に引き上げることを経済成長戦略の中に謳っている。
しかし、農水省と林野庁の官僚にそれを指示しただけで、政治家は何も行動していない。
官僚依存の政策立案から、一歩も進んでいないのが、現状である。

マニフェストを実行しているかどうかで、リーダーの言い分の争いをしている状況ではない。
本当の地域社会の経済的自立と、将来立国のあり方を真剣に取り組む大事な時期であるのに・・!

エネルギー需要の増加対応技術で雇用の増加を生みだす選択。

2010-08-28 | バイオ燃料・バイオマス
発展途上国にとって、エネルギー需要の増加にどう対応していくかは、国の重要な政策選択課題である。
今後の石油需給のひっ迫が予測される状況では、石油や化石燃料の比率を高くすることは避けたい方向である。
だから日本政府は途上国に対して、化石燃料の価格変動に影響されない原子力発電が推奨出来るとして、日本の原子力産業企業のお先棒を担ぐ形で、技術輸出の体制を作ろうとしている。

前回には、その国が森林資源などのバイオマス原料に恵まれた気候条件ならば、再生可能エネルギーの組み合わせ(太陽光発電・風力発電・バイオマス発電と燃料)によって、今後のエネルギー需要の増加に対応すべきで、その技術はすでに実現して身近になっている、と説明した。
特にバイオマスエネルギーは、アメリカやドイツなどの森林資源の多い国では、実用化の技術が進化して、今後の利用拡大が想定されている。

日本でも遅ればせながら民主党政権は、森林資源の活用に力を入れる方向に国策を転換して、2020年までに自給率を20%から50%まで引き上げる中期計画を立てている。
その中で林業の副生産物である「木質バイオマスのエネルギー利用」を進めている。
この事業は地元の雇用機会を増やして、それに関連する各分野の事業に波及効果を起こして、地域社会における経済的な貢献度が期待されている。

これは、発展途上国の大きな目標である地域社会の事業機会を増やして、雇用と経済発展に貢献できる「経済効果の大きい事業」に育生出来ることで、途上国支援に最適な事業である。
技術を輸出し、関連事業の設備投資に協力をして、地元のシステムを構築すれば、それ以降の50年以上に渡って、事業運営に多くの地元雇用を生み出して経済活動を活発に継続できる。

一方、同じエネルギー(電力のみ)を生みだす原子力発電は、初期の投資は莫大になるので、大企業レベルの事業になり、その殆どの投資設備は、海外の原子力発電技術企業からの輸入となり、地元の雇用は増えないので、おカネが回ることは少ない。
その上、いったん運転を開始した後は、最小人員の運転、保守となって、雇用の創出効果はほとんどない。
原子炉の燃料も、海外の原発先進国の製造した製品を輸入することで、おカネは地元には来ない。

確かに原子力発電は、技術を持った先進国にとっては、大きな売り上げを期待できるので、おいしい事業案件である。
だが、その事業を要請している発展途上国(例えばベトナム)にとって、一次的に大きなおカネが海外に出ていく割には、自国にとってメリットは少ない。

エネルギーの自律的な供給を目指すならば、再生可能エネルギーを選択し、特にバイオマスエネルギーを積極的に取り入れて、国内の自給可能率を高める事が、途上国にとっても将来性のある、政策選択である。
日本が推奨するエネルギー技術支援は、どちらが適切かは、自明のことであろう。

発展途上国への技術支援は重要な国策で、政治家の判断を。

2010-08-27 | バイオ燃料・バイオマス
これから発展する途上国にエネルギー利用増加が大量に発生することは必然である。
この需要の増加に対応する技術として、石油などの化石エネルギーによることは、世界の需給ひっ迫が予測されるので、再生可能エネルギーの技術先進国から技術支援をしていくことが重要な課題になってくる。

日本の政府は、途上国の発展に伴うエネルギー需要増に、原子力発電の技術輸出を国策として支援することを、国民に対して何の説明もなしに進め、承認を得ていく姿勢を一切示していない。
先日のブログの書いた様に、いったん、原子力発電技術を輸出すれば、この先50年くらいは責任を分担しなければならなくなる。
本当にそれでいいのか!
国民の理解を得てからにすべき重要な判断の分れ目になる。

適切な政策選択は、再生可能エネルギーの徹底的な優遇策をとって、まず、日本の技術レベルを世界の一流に押し上げる事が必要である。
これは、すでに太陽光発電技術は世界のトップレベルであり、風力発電技術の水準も、企業の努力によって世界のトップに連なっている。
国の優遇策が不適切であった為に、風力発電の企業は苦戦を強いられて、日本の普及率は世界の20番手クラスに低迷しているが、技術のレベルはトップ水準にある。

これらの技術をさらにコストダウンの成果を出すことで、これから発展する途上国には、安全で安定した供給の出来る、再生可能エネルギー発電の技術支援が可能になる。
さらに、天候の影響を受けない、バイオマスエネルギーの利用が、これからの重要な課題になる。

ベトナムには、日本の森林面積の約半分の森林があり、成長量の範囲内の木材を適切に伐採して、優良な木材資源とすると同時に、発生する端材や小径樹木は、エネルギ―化して利用することで、自国内の資源をエネルギー利用出来る。
化石燃料の輸入に頼ることにならないので、発展途上国にとって有益なエネルギー資源となる。
マレーシアなどは、国土の森林資源が豊富で日本の約8割の森林面積がある。
天然林の保護や生態系の維持を重視しながら、適切に林業を育成していけば、国内の産業育成になる。

現在でも、開拓済みのパームヤシ農園などでは、パーム油の生産が地域の安定した産業として、地元の重要な収入源として貢献し、その事業で働く人の雇用機会を多く生み出している。
また現状では、パームヤシの原木は30年毎に植え替えをして更新をしているが、老木は利用されずに、廃棄焼却されている。
これをバイオ燃料に加工することと、バイオマス発電に利用する技術は日本の森林研究所が開発済みであり、現地に技術移転をしていけば、地元のエネルギ―源として大きく貢献できる。

だが、それを重要視しないで、日本の経済産業省は、安全性や核拡散の懸念のある原子力発電を技術輸出することばかりを考えている。
この様な政策選択を判断するのは政治主導であるべきだが、省益優先ばかりである。(次回に)

国を挙げての支援技術は国民が納得の上で行動すべき。

2010-08-26 | 核エネルギー・原子力問題
インドの原子力発電に、技術輸出を日本が積極的に売り込んで協力することは、日本の基本的な国是である核兵器の廃絶の理念に反する行動であることは明白である。
日本の国民の期待を裏切らない外交交渉を、慎重にすすめ、安易なカネもうけの為の妥協をしないことを望むばかりである。

新聞の報道によれば、ベトナムへの原子力発電所建設に、日本が政府を先頭にした売り込みをかけているという。
背後には、原子力関連産業の東芝、日立、三菱重工など、日本の重厚長大産業の大手が後押しをしている。
ベトナム側からは原子力発電所の建設だけでなく、人材教育から運転管理のノウハウや核燃料の供給保証までも、要求項目になっている。

一端、この契約が結ばれて発効すれば、向こう50年間は日本がベトナム側に対して、ほとんどすべての面で原子力発電所関連の安全維持に多くの責任を負わされることになる。
ベトナムは核兵器の保有は意図していないとされているが、人材育成によって原子力関連の技術の蓄積ができれば、10年後以降はいつでも核兵器の開発に取り掛かることで、核保有国になる可能性が発生する。

現状は4基の建設を計画し、始めの2基はロシアが受注した。
ロシアとしては、輸出出来る数少ない技術である原子力発電は、国を挙げての重要な戦略産業で、多少のリスクを冒してでも、受注にこぎつけたいところであろう。
日本側は、先のアラブ首長国連邦「UAE」への売り込み競争で、韓国勢に受注をとられたこともあって、今回は経済産業省の大臣を先頭に立てての売り込み体制である。

日本の企業連合だけで、外国への売り込みをかけるならば、それはある程度自由な経営判断に任せることでよい。しかし、原子力産業の様な世界の安全、平和維持に直接関連する重要案件に対して、国会にも国民にも一切の説明がない上に、政権の公約に反する方向で、政府を挙げての支援となれば、国民の血税をつぎ込むことになる。
それを非難もしない野党の追及姿勢も中途半端な及び腰であり、マスコミ界もだらしがない。

もし、国の支援で契約してしまうと、国際的な責任も生じるので、現在の野党勢力が将来に政権交代をしても、その後の原子力関連のお守を国として負わされることになる。
ベトナムは、大きな戦争体験もしているので、治安の維持には注意を払うであろうが、テロ勢力などが台頭した場合に、原子力発電所や核燃料の輸送・保管に対して、守れる保障は大丈夫なのか不安が大きく残っている。

同時に進められている新幹線技術の輸出については、日本の技術ノウハウを途上国に広める意義があり、事故対策なども万全の体制をとれる様に、日本の技術支援を惜しまず提供することに、多くの国民が納得するであろう。
しかし、原子力発電は、話が違う。
トップセールスを実行するには、対象とする技術分野を国民の支持を受けて行うべきである。

不条理だらけの原子力協定。儲けは企業に。損失は国民に。

2010-08-25 | 核エネルギー・原子力問題
インドに対する原子力発電技術の提供と設備輸出を可能にする「日印原子力協定」が6月に交渉入りして、協議の段階になっている。
岡田外相は、インドが「核兵器軍縮・不拡散」に向けた姿勢をとり、包括的核実験禁止条約「CTBT」を早期に批准するなど、インド側に不拡散の確約をとれる事を、条件として示した。
これは、現状における「インドに対する核軍縮への行動」を要求することになる。

インド側は、それを丸々、受け入れるとは思えないが、核兵器の削減に向けた「交渉カード」として、原子力協定を入念に交渉材料にする価値はある。
日本としては、核軍縮に逆行する「インドの核実験」を停止させ、核兵器の廃棄につながる道に、振り向けていく外交交渉として、重要となっている。
原子力の平和利用に徹するならば、核兵器の廃棄に向けた路線に転換させる可能性はある。
この中身はまだこれからの交渉によるが、原子力発電所の工事の契約をして進める段階で、インド側が核実験を強行した場合には、工事の契約は停止されて、それまでの工事費用は一切、支払われない事態がおきる。

この場合の損失額はどこが負担することになるのかが問題である。
日本の政府で、工事費用の保証をすることになれば、日本国民の税金を充てることになる。
上手く工事が進んで完成後の工事代金が全額、インド側から支払われれば、それは原子力関連企業の収入となり、かなりの儲けが出ることになる。
「上手く進めば、企業の儲け。事態が悪化すれば、国民の税金で穴埋め。」
この構図は、どこかで見た状況に良く似ている。
そう、・・・アメリカの金融業界のサブプライムローン破綻問題に、そっくりである。
融資が順調に返済されれば、金融業界企業の丸儲け。破綻して、金融業界の混乱がおきれば、経済への悪影響を減らすために、アメリカ国民の税金を金融破たん処理の充てる。
『上手く進めば、企業の儲け。事態が悪化すれば、国民の税金で穴埋め。』
これは架空の話ではなく、一昨年の起きた記憶にも新しい不条理である。

またインド政府は原子力発電所で事故が起きた際、設備を納入した外国企業にも、一定の責任を負わせることを盛り込んだ「原子力損害賠償法案」を閣議で了承し、国会で成立する予定である。
原子力発電を運営した電力会社が、事故が起きた場合に被害者の支払う補償金の上限を約270億円とし、設備の納入企業に補償金の肩代わりをさせる事が出来る。
これは設備の重過失があった場合、とされているが、国際間の問題となった場合、その時の状況次第では、賠償金の支払いを強行に要求される可能性がある。
また、原子力発電所の運転寿命を50年間としていく方向で、この期間内に設備に起因する事故が起きれば、すぐに設備企業側に対して賠償金の要求が起こされる。

これは、先のアメリカ、メキシコ湾の海底油田の噴出事故によって、沿岸の多数の事業者や住民が被害を受けたが事例に相当する。
アメリカ政府は、その賠償金をすべて原油削屈事業者の「英BP」に請求した。
日本の原子力産業関連企業は、その覚悟があるのか。50年以内に企業がなくなっている可能性も大きい。これほどリスク(危険性)が大きい不条理を、何故に国が支援するのか不可解・・!

大義と立国理念を無視したカネもうけ経済は無価値だ!

2010-08-24 | 核エネルギー・原子力問題
日本は核兵器の攻撃を受けて多大な被害をこうむった世界で唯一の国である。
その日本が世界の核兵器廃絶に向けて、先頭に立って活動することは、大きな意義があり、非核3原則の堅持などは、世界に向けて発信すべき国策である。
その姿勢を貫きながら、まずは核兵器の不拡散に対する積極的な行動を、国を挙げて取り組む姿勢が重要である。

核兵器拡散防止にむけて「NPT」(核不拡散条約)が1970年に発効した国際条約で、米、ロ、英、仏、中の既に核兵器を保有していた国を以外には、核兵器の保有を禁じた。
しかし、それを不平等だとしてインドが拒否して、1974年に核実験を行って核兵器の保有を強行した。
その影響もあって、パキスタンやイスラエルが核兵器の保有を実現して、対抗してきている。
最近では北朝鮮が核実験の強行と核兵器の保有を進めている。
インドの「NPT」拒否の動きが、核兵器の拡散を進めたことは否定しがたい事実である。

この国際条約拒否の対抗策として、日米などの約50カ国の「原子力供給グループ」(NSG)はインドへの原子力関連機材の輸出を禁じてきた。
日本の歴代の自民党政権も、この動きに同調して「インドへの原子力発電技術の輸出禁止」を、政権の姿勢として堅持し、日本の原子力産業界の要請を受け入れなかった。

ところが、【核兵器廃絶の先頭に立ち、テロの脅威を除去します】とマニフェストに掲げながら政権交代を果たした民主党政権は、原子力産業界のお先棒を担ぐ「原子力発電所技術の海外売込」に力を入れる方針に転換してしまった。
その口実には、すでに米、ロ、仏などは、インドへの原子力技術輸出を開始しているからと言う。
このままでは、世界の国同士のセールス競争に負けてしまうというのである。

ちょっと良く考えろ!菅内閣の閣僚たちよ!次の事実をどう考えるのか。
インドの核拡散防止への違反を抑える大事な外交手段に対し、アメリカのブッシュ大統領が2005年に同盟国を裏切って、インドへの原子力協力を打ち出してしまった。
後追い的に、ロシアやフランスの言い分の「インドは核兵器を他の国に広めていない」から、例外的に認めても良いとして、2008年に「NSG」の方針を変更させてしまった。
イラク戦争を嘘の情報で始めてしまって、世界の不安定を増強した「ブッシュ」。
気候変動条約の締結を拒否して「京都議定書」の実効性を骨抜きにしてしまった「ブッシュ」。
金融業界のリスク大きい証券を野放しにして、世界の経済をどん底に落とした「ブッシュ」。
石油メジャーの後押しをして、メキシコ湾の海底油田の開発の安全性管理をおろそかにして、環境汚染の大被害を招いた張本人の「ブッシュ」。
その後追いをして、おカネもうけを大事にしていく姿勢は、いったい、どうした事なのか?

インドとの交渉を始めた外務省の岡田外相は、被爆国の日本が「NPT」に未加盟のインドと原子力協力をすることについて「核なき世界を目指す事に反しているという国内の批判がある」として、交渉の前提に、インドの不拡散に向けた姿勢を重視する考えを示した。(以下、次回に)

政府の迷走を理由にして需要減少に甘んじていては闇。

2010-08-23 | バイオ燃料・バイオマス
日本の政府には新産業の育成に向けての確固とした具体策ができていない。
政権を交代させる為のマニフェストは、実際に効果的な施策を実行するには、あまりに政策手段の検討が不足している。
政権と獲ったならば、その公約を実現する方向に向けて、政策の具体化を最優先で進めなければならないのに、リーダーのスキャンダル紛争や財政論争で、大事な時間をつぶして、不毛の党内抗争にエネルギーを浪費している。
税金の無駄使いと同様に、貴重な時間の無駄遣いを、もっと批判されるべきである。

政府がダメなら民間に力でと言いたいところだが、前回に書いた様に企業の内部留保として、200兆円もの資金は、いたずらに遊んでいる状態である。
これは、資産の大きな無駄使いと言えるが、新産業への投資のリスクが心配である経営者が多いということであろう。
ならば、そのリスクを減らす様に、優遇政策を打ち出すべきであるが、政府は財源不足の議論が足を引っ張って、堂々巡りで迷走している。

エネルギー業界の代表である石油業界は、8月8日~10日にかけて書いた様に、後ろ向きの取組に終始してきたので、長期的な低落傾向に拍車がかかっている。
その打開策は、温室効果ガス(CO2)排出削減に効果のある「バイオ燃料」を積極的に開発して、現状のガソリンや軽油に混合して、販売に力を入れる方向である。
政府は既に、ガソリンでは[E-10](エタノール10%混合)を規格として定め、石油会社に販売する様に指導しているが、業界の取組は全くの後ろ向きである。
理由は、エタノールの製造コスト(現在はほとんど輸入依存)が高いので、ユーザーが逃げてしまうとばかり、思い込んでいる。

しかし、日本のユーザーは、環境の保全に貢献する商品には、余分の費用を払っても良いと考える人が増えている。
ある調査によると、通常価格よりも5%程度高くても、環境に良い商品を購入したいと答える人は50%以上になっている。
ならば、[E-10]燃料の価格を5%高に設定しても、利用する人は十分に見込まれる。

さらに、通常燃料の分に「1円/リットル」の臨時課税をかけて、その財源で[E-10]燃料の値段を通常ガソリンよりも安くするように制度を作れば、一気に需要が増えるであろう。
石油業界の不況の原因である重要不足は、このようなユーザーの購買意欲に応える事が基本であり、コストが上がるからダメだ!ダメだ!と言っているばかりでは、じり貧になるだけである。

また、バイオ燃料の将来性を考えると、海藻類の人工栽培から製造する「バイオディーゼル燃料」は、国内資源の活用によって、石油の輸入依存を減らす事に貢献できる。
石油業界の総力を挙げて取組む課題であるが、政府の姿勢が全くダメな為に、業界の取組もわずかである。
しかし、アメリカや中国の企業は既に、開発競争に突入している状況で、政府の指導を待っている様では、石油業界の将来性は、お先真っ暗な状態に陥る。
企業経営陣の交代が必要である。

民間企業の資金を活用して新産業への研究開発促進を。

2010-08-22 | 経済問題
日本の経済規模はGDPにおいて世界の第3位であり、中国に2位の座を奪われたと、マスメディアは騒ぎ立てている。
その責任はメディア側にはないという姿勢で、相変わらず、政府側のリーダーシップのなさを批判している。
しかし、政府側の政治家も、対立する野党の論客も、あれこれと対策の必要性を語るが、従来と同じレベルの総論に終始している。

結局、最後は新経済成長路線を活性化するしか、今のデフレ経済、長期の経済停滞を脱することはできない、というお定まりの締めで終わる。
菅内閣は、各省庁の官僚におカネを使わないで、経済を活性化する案を絞り出せと、指令を出しているだけである。
確かに今の政府では、無駄使い見直しによる財源創出は、わずかに留まるであろうから、2010年度予算の様なバラマキ的な景気刺激策は、続けられないであろう。

ところが、一方の民間企業には、驚く規模の内部留保が蓄積されているという。
過去最高の200兆円と言う資金が、民間企業の金庫に眠っている。
いや、いざと言う時に、備えてリスクの多い新産業への投資に対して慎重になっている。
そうような言い方は聞こえがよいが、要するに先のことが読めないので、経営者の腰が引けているだけである。

唯一の新成長分野である「環境立国産業」についても、政府の方針が掛け声だけで、実効性のある制度は国会審議の迷走で先送りされ、その後の動きは全く鈍いの一言につきる。
これでは、産業界も思い切った投資計画や、将来への研究投資を差し控える経営判断をしてしまう。

だが「IT産業立国」を目指した2000年代初期にも、政府の規制体質に邪魔をされて、民間企業の投資意欲を削いだ為に、韓国などの国を上げての支援を受けた「IT産業新興国」に、あっという間に抜かれて世界から脱落してしまった。
日本は「IT技術先進国」であったにも拘わらず、国の対応の愚鈍さと、経営者の慎重姿勢によって、技術的に優れていても、産業としては3流に落ちることを実証してしまった。

国の政治家や官僚の無策為に責任を回しても、経営者としての判断は、成果が出せなければ失格である。
今、もてはやされている「再生可能エネルギー関連産業」においても、政府の対応の遅れに責任を転嫁しても、世界から脱落する様では、企業経営者は失格であることは明白である。

200兆円と言う内部留保を、低利の国債の運用に任せている様な経営者は、早々に交代してもらい、その半分の100兆円で良いから、新成長産業分野への投資に回すべきであろう。

バイオマスエネルギー産業は、説明してきた様に、まずは技術開発への研究投資を徹底的に重視して、せめて10兆円規模の研究開発を、民間主導で計画する必要がある。

日本のCO2排出削減の手法は海藻類の人工栽培が主力に。

2010-08-21 | 海洋産業問題
海藻類の人工栽培で「地球温暖化対策」に貢献する、といっても「理屈としては分るけれども、大した量にならない」だろうと、大方の人は思うであろう。
現に、地球温暖化対策を熱心に進める専門家や環境団体は、再生可能エネルギーの促進を主張しているが、「海藻類の人工栽培」を対策の手法としては誰もあげていない。
だから、そんな筈がない、と思っているのでしょう。

でも、このブログの「海洋産業問題」の内容を、読んでいただいた方には、それは十分に可能性があると理解していることでしょう。
既に海藻類の人工藻場の造成を提唱している専門家は温暖化対策に貢献できると提言している。
だが、日本で環境問題を扱う人たちは、バイオマスエネルギーには詳しい人は少ない。
その上、水の中の藻類については、その光合成能力の高さを知っている人もほとんどいない。
だから、マスメディアに採りあげられることは滅多にない。

そこで、海藻類の人工栽培は、どれくらいの[CO2排出]削減能力があるかを、要点をまとめておきますので、機会があれば、他の人に教えてあげてください。

海藻類の光合成能力は樹木の10倍以上になる。
コンブ類では、1平方メートル当たりで、年間で1500~4500グラムの炭素固定能力になる。
これは、1平方キロメートル当たり、1500~4500トンになる。(平均で3000トンとする)
日本の年間での炭酸ガス排出量は12億トン(一人当たり10トン)で、炭素に換算すると、
3.65億トンであるとして、12万2千平方キロメートルの海面があれば、海藻類の栽培で、炭素固定ができる。
日本の国土(37万平方キロメートル)の1/3の海面を利用して、日本の[CO2排出]をすべて海中に固定することができる。

海藻類は寿命が1年から5年程度であるので、栽培した海藻は必ず収穫して、エネルギーの代替原料として利用しなければならない。
収穫をせずに、そのままにしておいては、寿命とともに枯れて海中に拡散し、最終的には微生物の栄養源となり、[CO2排出]となって空気中に戻ってしまう。
だから、栽培技術と同時に収穫技術、精製・エネルギー化技術の開発が必要である。

再生可能エネルギーの中で太陽光発電や風力発電は、20年来の研究と技術開発が進んで、多くの国で2020年に向けての主力な対策手法となっている。
しかし、日本は設置できる場所も限られていて、気象条件も優位ではないので、普及促進をしても、限界がくるであろう。

それに対して、海藻類の栽培技術の進化が期待できるので、これによって日本の[CO2排出]削減の手法として、主力とすることが可能である。
2050年に向けて、日本は[CO2排出]削減を80~90%を実現する必要がある。
だが心配はいらない。
海藻類の人工栽培とエネルギー化技術が進化すれば、この難問を克服することが確実に可能になる。
後は、早くその方向に国の方針を決めることである。

温暖化対策には飛びつくのに海藻類には無関心のまま。

2010-08-20 | 海洋産業問題
日本が島国であって、沿岸の海域は寒流系と暖流系の交わり合う、漁業資源に恵まれた国土環境であると、中学生のときの学校授業で教えられた。
世界の4大漁場のひとつに上げられて、そのころは日本の漁業は世界一のレベルにあった。
しかし、「狩猟・採集産業」の認識から抜けられずに、漁業資源の減少に何の対策も出来ずに、海外の漁獲資源の輸入に頼る、情けない海洋国家になってしまった。

海藻の人工栽培の藻場造りが、海洋資源の恵みをもたらすことは、もう理解されたと思いますが、今から取り組んでも実際の効果が出るまでに、期間は長くかかるでしょう。
短期的話題に集中しがちなマスメディアにとっては、採りあげてみたいテーマにはなりにくい。
だから特集記事にしたり、番組制作には一向に関心が向かないのであろう。
国策とか日本の将来の姿などは、建前上で言っていても、要は購読者や視聴者の関心を呼ぶ、「売れる情報」がなければ採りあげない「マス」メディアの宿命である。

海洋産業と言っても一般の人には必要性が分らない。
魚はスーパーの売り場に行けば、食肉類と同じに、国内と海外の産地が書いてあるだけで、どちらもおカネでの評価しかできない。
養殖モノも、天然モノも、値段で評価し、生産の仕方(幼魚から育成)などは関心が一切ない。

そこで、「海藻の人工栽培」による恩恵を、食用はもとより、「健康食品」「医薬・化粧用原料」への価値の高い原料生産のメリットを説明してきたが、それも話題にするには難しい。
たとえ、普及に弾みがかかっても、数量的にはそれほど期待される量ではないので、小規模の産業の話と、軽く扱われてしまう。
そこで、前面に打ち出す経済効果と環境効果を「海藻の人工栽培」による「バイオ燃料製造」として、石油資源の代替によって「地球温暖化対策のエースに格上げ」するという、国家目標を立てるべきである。

海藻類の光合成能力は、樹木の10倍以上の種類が多く、地域での海流、海水温度、地形に適した種類を人工栽培で大量に生産できれば、相当量の生産規模の栽培が可能である。
それを定期的に収穫して「バイオ燃料」や「バイオ発電」によって地域社会のエネルギー利用に活用すれば、地産地消のエネルギーとして「地域の自立経済」が可能になる。
政府や各政党の目指す、「地球温暖化対策」と「地域主権」(地方分権)など、日本の将来の骨格となる、重要な政策の入り口となる。

8月18日のブログに書いた「コンブ海中林造成」の10年計画では、1500億円の投資により、1兆円を超える新産業が育成される構想であった。
これに、エネルギー利用の技術開発と産業化の構想を追加していけば、さらに新産業としての規模は拡大出来る可能性が大きい。
新成長戦略に採りあげる価値は大きいが、政府も行政もマスメディアも無関心のままである。
国家戦略局の構想も、水面の下に沈んでしまった菅内閣には期待できそうもない。
海面下の海藻類の無限に近い将来性に、目を向けて行動する人は、どこにいるのか・・・?

海藻類人工栽培は温暖化対策の主力産業になりうる。

2010-08-19 | 海洋産業問題
海藻類の栽培がこれからの地球環境、海の生態系にとって重要な役割をすることは、ここ数回に書いてきたので、理解されたと思います。
しかし、日本ではいまだに「海藻海中林」の言葉も知られず、漁業資源の減少や価格高騰の話題は出てきても、大元の魚類の生育に重要な藻場を造成することに話は発展しない。
漁業、魚介類の「狩猟産業」の時代に留まり続けているのが、日本の現状である。

また、「海藻類・コンブの養殖事業」といっても、衰退していく1次産業の中の一分野という認識しか、行政官僚や政治家の頭にはない。
だが、少し関心を持って情報を集めれば、単なる1次産業に留まるモノではないことが解る。
古来から海藻は食用としてだけではなく、医薬・健康原料でもある。
また、旨みの成分である「グルタミン酸」を多く含み、ダシ材料としての嗜好品でもある。
近年はコンブなどの褐藻類特有の成分の「アルギン酸」が工業化されて、食品への添加材としての利用が広がり、ダイエット、整腸作用など、有益な材料として用途が広がっている。
化粧品への添加材にも利用されて、高付加価値の原料ともなっている。

それでも、多くの人は、海藻類の用途は、広がってもキリがあるので、大した規模の産業にはならないと思い込んで、軽視や無視を決め込んできている。
ここにきて中国をはじめ、世界の主要国、特にアメリカにおいては、藻類からバイオ燃料を製造する研究が活発化してきている。既に、量産規模でバイオ燃料化する技術も実現されているが、
今の段階では石油からの燃料に比較して、コストが高いレベルにある。
しかし、猛烈に研究投資を加速しているので、2010年代の半ばには、石油系の燃料よりも価格が有利な「藻類系バイオ燃料」が実現する可能性はおおきい。

ここまで世界の流れが来ても、海藻類の人工栽培は、1次産業の一分野程度にしか考えないのは、日本のマスコミの怠慢な報道姿勢によるものである。
衰退する漁業、過疎化する漁村、のイメージばかりを強調する、悲観的な取材態度に終始する。
バイオ燃料は、食料・穀物を奪う「悪玉燃料」のネガティーブ情報ばかりをクローズアップする。
欧米の先進国の情報を重視し、中国などのアジア諸国は遅れているとの色眼鏡で見る偏向姿勢。
これらの先入観と報道姿勢に固まっているので、将来の姿を想定しての取材や報道姿勢がとれないでいる。

政治の世界では、20年遅れて林業の復活と活性化により、山村地域の新興に貢献する姿勢を打ち出した。
しかし、管内閣で森林保全・林業活性化に大きな可能性を見ている閣僚はいないに等しい。
林業の1次産業から6次産業化への転換を謳っているが、林業界と地域社会の疲弊による停滞を打破するには、10年以上かかる、粘り強い国策としての取組が必要である。

それに対して、「海藻海中林造成産業」は、政治課題としても上がっていない上に、マスコミの怠慢が続く様な事があれば、中国に30年遅れている現状がさらに拡大する恐れがある。
現在は、地球温暖化対策として、「藻類の人工栽培と燃料化」政策を打ち出すのが打開策である。

海藻海中林造成による新産業育成に力を傾注すべき。 

2010-08-18 | 海洋産業問題
日本の水産技術者には、中国の海藻人工栽培を最初に実現した大槻氏のように優れた人がいる。
北海道大学の水産学の「境 一郎」教授は、2000年初頭に「コンブ海中林造成による水産資源倍増十ヵ年計画」を立案して提言していた。
その中身の一部を紹介すると、基礎研究を中心とした一次5カ年計画(2001年から2005年)で、コンブ海中林造成技術の普及のパイロット試験事業を実施する。
その成果を全国に普及して、水産資源の倍増と海藻生産の10倍増を目指す事業に拡大する。
この計画が目標とする2010年には、海藻の生産量の増加分と、漁業資源増加による沿岸領域の漁獲量の倍増により、年間で1兆円の産業収入が見込まれた。

しかし、この計画は進展していない。
海藻生産額は、中国の20分の1に留まり、海藻海中林の造成をしていないために、沿岸漁業の漁獲高は減少の一途をたどってきた。
何も手を打たなければ、狩猟産業のレベルの漁業はじり貧になっていくことは目に見えている。
なぜ、日本は海洋国家であるのに、中国からは圧倒的におくれてしまったのか。

「コンブ海中林造成計画」に要する投資額はどのくらい必要とされていたか。
最初の基礎研究段階で、140億円(5年間)で、その成果を全国に広げる段階の5年間で1400億円とされ、10年間で約1500億円程度である。
この投資による成果は年間で1兆円産業に成長する見込みであって、少ない投資で大きな成果を上げられる、期待される「新産業育成事業」となるべき課題であった。

しかし、2000年代の初頭は、構造改革、規制緩和、金融業の立て直しに、国と行政とマスコミの関心が集中してしまい、それ以外の地道な研究や、地域産業興しなどは、余計なお世話とばかりに、切り捨てられてきた。
郵政民営化騒ぎに代表される様に、既得権構造の破壊と、おカネの流通を良くすれば、産業が活性化すると信じる「規制緩和・市場万能主義」の妄想経済学者の論理に従って、地道な課題への取組を、軽視する潮流ができてしまった。

既存の産業をいくら規制緩和によって活性化しようとしても、肝心の需要が起きないので、企業は国内への投資をほとんどしなくなり、企業の投資余力は海外市場開拓に向けている事が、今になってハッキリしてきた。
国内への投資と雇用を生み出す産業に、重点的に投資を誘導して、揺籃期の産業を自立できるところまで育成するのが政府、地方自治体の役割である。
それを勘違いして、自由市場競争主義に委ねることによって、育成すべき新産業の小さな芽を、ほとんど踏みつぶしてしまったのが、2000年~2009年の間の妄想の10年間であった。

「コンブ海中林造成による水産資源倍増十ヵ年計画」は、今からでも国策として重点的に採りあげて、その実現のスピードを上げることに全力を傾けるべきである。
同時に、この計画には海藻利用の残渣を、エネルギー化する計画は盛り込まれていないので、その研究と実証事業を上乗せする必要がある。
中国は既にその段階に進んでいる。

長年の願望を地道に追及して実現した中国。その間に日本は?

2010-08-17 | 海洋産業問題
中国における海藻栽培産業が、世界で一番進んでいると言えば、そんな筈はないと違和感を持つ人が多いだろう。
何事も共産中国の非効率な社会によって、産業はすべて遅れているのが当たり前と、日本人は傲慢にも思いこんできた。
モノつくりにおいても先進国のプライドだけで、今までのやり方を継続してきたので、最近はイロイロな分野で追いつかれて、差別化を図ることに必死である。

漁業などは中国が遅れているのは当然で、まして、日本ではまだ少ない海藻の栽培による漁業資源育成などは、進んでいるわけがないと思い込んでいる。
だが、その国にとって必要性が高いモノは、必死になってよい技術を探し求めて、どこよりも先端領域に挑戦して、成果に結び付けるモノである。

海藻類のなかで、コンブは歴史的に古くから人々に利用されてきた。
原産地は北海道沿岸であり、寒流系の多年生海藻で2年目の収穫で利用し、日本国内各地に送られて健康食品と同時に、うまみの成分(ダシを取る)が日常的に利用されてきた。
中国では2000年前からコンブを不老長寿の漢方薬として利用し、海岸線から遠く離れた地域では、ヨウ素欠乏による風土病が多い為に、ヨウ素成分を多く含むコンブが貴重品であった。
中国沿岸にはコンブは生育しないので、日本の北海道産の昆布の最大の輸出先となっていた。

中国沿岸で何とか人工栽培したいとの願望が中国人の長年の課題であった。
満州国の水産試験所に勤務していた日本の大槻洋四郎氏が、1930年に大連の沿岸でコンブの移植試験を開始して、始めて成功に結び付いた。
この最初の試みによって、中国におけるコンブの養殖産業化の研究が継続されて、1980年頃から本格的に普及し始めてきた。

日本では、コンブの生育に2年かけていたが、中国では海水温の違いに適合させるために、種々の改良を重ねて、11月に植え付けて、6月の収穫する8カ月栽培となっている。
寒流系のコンブを中国沿岸の海水温度に適合させると同時に、成長の早い種類によって、収穫量の増加を図っている。
また魚類の産卵と稚魚、幼魚の生育期は2月から5月にかけてであり、この時期はコンブの生育が最も盛んであって繁茂しているので、漁業資源の増加にも大きな効果がある。

このような人工の海藻育成と、漁業資源の育成に寄与する沿岸地域の藻場は1300kmに渡り、その海藻類の収穫増加と漁獲量の増加で、沿岸地域は大きな経済的利益を得た。
それは、自然の海に生育する資源を獲るだけの漁業ではなく、藻場から育成する漁業に早くから挑戦して技術者を育成し、産業としての健全な発展を図っていたからである。

ほぼ同じ時期に水産庁の研究者が、日本でも海藻類の人工藻場を造り魚類の成育場所を拡大して、沿岸漁業の発展を計画していた。
しかし日本全体はバブル経済に浮かれ、金融破たんに翻弄され、[IT立国]を夢想していた。