庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

環境対策の制度は守旧派産業が抵抗。それを乗り越える【KM】

2010-12-31 | 国創り政治問題
東京都が温室効果ガスの排出削減に向けて、国の制度より先に「排出量取引制度」を独自に設定して始めている。
この同じ制度の埼玉県も追従して、始める計画である。
前回に説明した様に、肝心の初期配分については、過去の実績を基準とした一律の削減、(オフィスビル等は8%、工場等は6%)を、2010年~2014年の5年間の平均排出量とした。

この方式はヨーロッパで始められた「グランドファザリング」と呼ばれ、権限のある自治体や政府が、上からの命令で配分することを基本としている。
本来の「アメリカで始めた排出量取引」は、初期の配分の排出許可枠を「有償で購入」すること(オークション、入札方式)が基本である。
この有償の価格は市場原理できまり、削減に必要な技術手段への投資を誘導する制度である。

「グランドファザリング」で無償の初期配分をすることは、企業にとって排出削減の技術に投資をするインセンティブ(動機・メリット)を弱める効果になってしまう。
むしろ、排出源となっている事業所を他の規制のない地域に移転する動機を強めてしまう。

なぜ、この様な明らかなデメリットがあるにも拘わらず、採用したかを推定すると、
①企業の負担は「オークション」に比べて少ない。その結果、反対活動の抵抗が弱まる。
②政治家にとっては、抵抗の少ない制度で、政治的な実績を作り易い。

つまり、効果は少なくなっても、政治的に実績を作るには、この「グランドファザリング」方式による「排出量取引制度」を、どこよりも早く実現した、という功名心が働いている。

以前に東京都は、トラック・バスなどの【ディーゼルエンジン自動車の排出ガス規制】を、グズグズしている国の動きを突き上げる狙いで、東京都独自の排出ガス規制制度を成立させて実施をした。
これが首都圏で排気ガスの汚染物質に悩まされていた住民から大きな賛辞を受けて、東京都知事の名声を大きくあげた。
首都圏の周りの県も、遅れじとばかりに同様の排気ガス規制条例を作り、一気に首都圏の大気汚染の減少をもたらした。

この様な機運を盛り上げるつもりがある様だが、このスジの悪い「グランドファザリング排出量取引制度」は、5年を待たずして、大きな問題点が浮き彫りになるであろう。
それでも、何もやらないよりはマシとして、問題が起きてから、それを改良していけば、実効性のある制度に育つ可能性もある。

ああでもない、こうでもない、と言い合っているばかりで、何もできずに迷走している「民主党政権」では、少しも前に進まない。
その影のブレーンである「守旧派産業界、代弁官庁」の、自省の権益と天下り先確保の思惑にホンロウされない様な、しっかりした理念を持って【KM】で臨むべきであろう。

東京都は日本における環境先進自治体の美名を追求する? 

2010-12-30 | 環境問題
「排出量取引制度」は、中身のメリット、デメリットをよく理解したうえで、適正に制度設計して管理を実現できれば、「温室効果ガスの排出削減」に効果的な制度になる。
しかし、よく理解しないままの妥協の産物的な制度にしてしまうと、弊害の方が大きくなって、効果が損なわれるだけでなく、経済的にデメリットが大きい。
それは、どのような原因で起きるか、少し立ち入って説明します。

「排出量取引」と呼ばれる日本では、【取引】ばかりが目立つが、実際の大きな課題は【キャップ&トレード】という様に、【キャップ】(排出許可枠の設定)のかけ方が重要である。
本来の狙いは、この【キャップ】に相当する『排出量許可枠』を、政府、または自治体政府が、排出を容認する量に相当する分を有償で売り出して、これを排出事業者は購入することを義務付ける制度である。
これを『オークション方式』による初期配分と専門家は呼んでいる。

しかし、排出によって経費が増加する事業者が反対すること多く、政府はこれに妥協をして、この初期の排出許可枠を、過去の実績にもとついて、配分する方式を採用することが多い。
これを「グランドファザリング」(権威のある父親が家族に家計費を配分することに相当する。)
と呼んで、[EU]諸国で始めた排出量取引制度の初期には、この方式であった。

日本では、東京都がこの方式に着目して、東京都に在籍する大規模事業所の「温室効果ガスの削減義務」を「環境確保条例」の改正によって2010年~2014年の間の削減量を設定した。
その『キャップのかけ方』では、2002年~2004年の3年間の平均排出量、または2005年~2007年の平均排出量を基準として、ここから8%削減を義務付ける。

これで何が問題となるか。
この3年間のどちらかが、業績悪化で仕事量が減って排出量を減らしていた事業者は、その悪い3年間の平均を基準にすることができるので、そこから8%削減は容易である場合が想定される。
逆に、業績を好調に推移していた企業は、当時の業績よりも2010年~2014年の間に、さらに大幅に業績を伸ばす計画であるため、排出総量がどうしても増える。
削減努力をしてもなお排出量が増える分は、業績の低下している企業が楽々減らした分の余剰を、【取引】によって買取る事が必要になる。

これは要するに、発展して業績を伸ばす企業に負担をさせて、業績を落としている停滞・衰退事業者におカネを回す制度なのである。
これが嫌な事業者は、新規の業績向上分の事業を、東京都圏外に移せば、何も余計な経費を負担する必要もないので、当然の様に神奈川県か千葉県に事業所を移転、新設するであろう。
(埼玉県は、東京都と同じ制度を導入しようとしている。)

東京一極集中を避ける政策としては有効だが、実質的な「温室効果ガス」の排出削減には、効果を生まない制度になりかねない。
それでも排出削減の実績を獲りたい東京都は、いったい何を狙っているのか。(以下、次回に)

排出量取引制度の生まれも育ちも知らない政治家が公約にした。

2010-12-29 | 快適エネルギー社会問題
有害な成分のガスを排出する産業に対して、経済的手法で削減を促す方策として、アメリカで考案されたのが、排出量取引制度である。
これは、火力発電所から排出される「亜硫酸ガス」(SO2)の量を、年数をかけて削減する方策として始まった。
発電所の事業者が、その年に排出せざるを得ない[SO2]排出量を予測し、その排出許可枠を有料で購入する制度とした。

この『[SO2]排出量許可枠』を守るためには、
①硫黄(S)成分の少ない燃料を使う方策と、
②燃焼後の排出ガスから『[SO2]成分』を除去する方策が考えられる。

事業者はどの方策を選択するかは自由であるが、何も対策しない場合には、大量に
③『[SO2]排出量出許可枠』を購入する必要が生じる。

①、②、③のどの方策をするにしても、経費がかかり、発電コストを押し上げる。

当然の様に発電事業者は、この制度に反対したが、『キャップ&トレード』の方式で、[SO2]排出量の削減を始めた。
排出量を1/10に下げるには、達成目標の年に向けて、段階的に「排出許可枠」の発行量を少なくしていけばよい。

開始の基準年の[SO2]排出量に相当する排出許可枠を、年々、少なく設定することで、何もしない事業者は、高くなる「排出許可枠」を買い続ける愚は避ける様になる。

この期間において、燃料から硫黄成分を除去する技術や、排出ガスの『[SO2]成分』を分離する技術が進化して、コスト上昇の負担が少なくなる。
こうして、役所が余計なことをしなくても、年々の「排出許可枠」の管理をするだけで、後は事業者が最も経費のかからない方策を選ぶ事ができる。

いかにもアメリカ的で、自由市場競争主義の価格インセンティブをうまく活用した制度である。
これを、温室効果ガス([CO2]およびフロンなどの6ガス)の排出削減目標の達成に向けて、応用しようと言いだしたのが、時のアメリカ政府であった。

これが京都議定書における交渉のなかで、国同士の間での『共同実施[JI]』と『クリーン開発メカニズム[CDM]』という制度に変形して、盛り込まれていった。

2000年以降はアメリカは京都指定書を離脱してしまったので、この『キャップ&トレード』は、進まないモノと思われたが、ここで、イギリスやEUの先進国の中で、制度化しようとの動きが始まった。
その制度は、当初は社会実験と称して小規模で始めたが、年々拡大して、関係諸国の間での取引も出来る複雑な制度に膨れ上がってしまった。

この現状をよく知らないままに、民主党は欧州のやることは「きっと良いことだ」との幼稚な発想で、【温暖化対策の具体策】の中にマニフェストとして書いてしまった。
中身をよく知らない政治家が、その公約を掲げて総選挙で当選してきた。(以下、次回)

民主党の温暖化対策の2本の矢はホソボソ、3本目は問題だ!

2010-12-28 | 快適エネルギー社会問題
民主党は政権交代に当たっての総選挙において、雇用と経済の面で『地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てます。』と高らかに謳っていた。
1年と4カ月を要して、どこまですすんだであろうか。
「温暖化対策基本法は衆議院を通過したものの、その後の政変でつまずき、未だにタナザラシのままになっている。

中身の具体策としては、「温暖化対策税」(【環境税】)導入を検討するとしていたが、これは、どうやら次期の国会で成立する雲行きになってきた。
初期の税率を極端に低くして、ハードルを下げすぎたキライはあるが、かろうじての合格点と出来る。
その次に「再生可能エネルギー電力全量買取り制度」は、来年に1月には閣議決定に持ち込み、次期国会で審議に入る予定である。
これはやっとスタート地点に立った状況である。

しかし、もうひとつの方策として『キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。』という公約は、完全に先送りの状態にしてしまった。
この制度は、いろいろな視点から見て、弊害は予想されるのであるが、国際的に「2020年に25%削減の実施を公約」した場合には、必須の制度になる筈であった。

だが、国際会議[COP15](2009年12月)、[COP16](2010年12月)と2年続けて、
アメリカと中国の消極姿勢によって、国際的な意欲ある削減目標の設定は反故同然になっている。
この潮流に乗じて、日本における削減目標が高すぎると産業界は一斉に反発して、「国内排出量取引制度」の中止を働きかけていた。
この制度の中身をよく理解していない民主党の議員連中は、腰が砕けてしまい、今までに議論を積み重ねて来た中身のメリット、デメリットの論点整理もしないままに棚上げしてしまった。

民主党は温暖化対策を大義名分として、雇用と経済に貢献する政策を公約していた。
旧産業の体質改革をせまり、同時に「再生可能エネルギー産業」を育成する基本戦略を、じり貧状態に陥らせている。
「3本の矢」のうち、2本は細々として力がなく、もう一本は既に折れてしまった。
これでは、強大な化石燃料社会の上に築かれた旧産業の改革は、ほとんど至難の業である。

ただ、この3本目の矢に相当する「国内排出量取引制度」は、自由市場制度の信奉者が作りたがっている「スジの悪い制度」であり、マカリ間違えば「マネーゲーム」の悪弊に翻弄されたり、お役人の権限強化につながる「社会主義化」への硬直性が懸念される。

民主党も表面的な潮流に流されずに、『新産業の育成に実効のある制度』として、もう一度、原点から『キャップ&トレード』システムを、勉強し直す期間を採るべきである。
何が本当の問題点であるか、ジャーナリスト関係者も判っていないのだから、このまま進めても、効果がないばかりか、弊害の方がすぐに露呈してしまう。
その時では遅い。(以下、次回)

見習い運転政権の新産業創出への取組が本格化するか。

2010-12-27 | 国創り政治問題
日本の将来を担う「次世代産業」の育成について、現政権とそのブレーンの役割の官僚群は、本気になって取組を開始しているのだろうか?
これが、本年末に当たっての最重要な【KMの視点】である。

年末にあたって、マスメディアの話題には、本年の重大ニュースなどと、各種の事件が採りあげられているが、短期的な視点による話題性の大きさが取りざたされる状態で、表面的な見方しかできない、「ジャーナリストの貧困」を表している。

日本の国民の将来を左右する課題こそが重要な論点であり、その適切な選択こそが、国民生活の健全な営みと継続を左右する。
娯楽としてのニュースも必要だが、あまりにも娯楽性ばかりが重視されすぎている。
大した影響も及ぼさない事件や話題にとらわれて、本当に大事な課題が、報道もされずにいる。
一部の既得権擁護だけを図っている『旧態依然の特権階級』のあきれるばかりの行動を、公の場に晒すことこそが、本当のジャーナリストの役目ではないだろうか。

このブログでは、「次世代の新産業」の本命として、「再生可能エネルギー関連産業」をもっとも重要とみている。
この新産業を育成するのに絶好の時期を、当時の政権党・自民党は完全に逸してしまった。
その政治家をうまく利用して、官僚の天下り先の確保に重点を置いた、官僚群の『旧態依然の特権階級』の失態と責任を問い続けて行く。

同時に、政権交代を果たした、見習い運転中の新政権が、この「再生可能エネルギー関連産業」を育成していく国家戦略の本気度を、あらゆる視点から問題点を指摘していくつもりである。

12月20日のブログで書いた様に、ささやかではあるが、【環境税の創設】を打ち出した政権に対して、かろうじての合格点を付けたい。
自民党政権時代は、議論はあっても本格的に「環境税の中身の議論」は全く進まず、産業界の保守的な経営者の言い分ばかりをきいて、採りあげようともしなかった。
課税額が少ない段階からでも、とにかく10年遅れで【環境税】がスタートすることになったのは、新政権の成果であろう。

12月23日から25日にかけて、『再生可能エネルギー電力全量買取り制度』の議論の進展と、その意義を説明した。
自民党政権時代は、電力業界の画策と経済産業省の原子力族の思惑で、骨抜きにされた「自然エネルギー促進特別措置法」の愚策についても、失策の原因にまで掘り下げて書いた。
この原因を十分に理解したうえで、来年の国会での議論を注視していただきたいと思います。
その質疑応答の中で、民主党政権の「次世代産業の育成に取り組む本気度」が試されるであろう。

本日の朝日新聞朝刊3面には、「排出量取引、崖っぷち」と題して、温室効果ガスの削減政策が、民主党の公約違反になっていると報じている。この課題については、次回に。

エネルギー政策の失敗が長期のデフレ経済を招いた主原因。

2010-12-26 | 核エネルギー・原子力問題
2000年からの日本のエネルギー戦略において、「再生可能エネルギー産業」を育成し普及促進する政策は、看板だけの「自然エネルギー促進特別措置法」を成立させただけで、他には有効な政策は一切なかった。
同じ時期に、再生可能エネルギーの普及促進に向けた欧州の先進国は、各種の政策を実施して、
2010年までには、普及率が急速に高まり、なかでもドイツは10%以上の普及によって、各種の産業が興り、新規雇用の創出が実現している。

特に、森林資源を活用しながら林業の再生に役立つ「バイオマス発電」の分野と、ハイテク技術の基盤を強化する「太陽光発電」における普及促進が、大きな効果をあげている。
日本ではバイオマス発電は完全に視野の外にあり、太陽光発電は2000年までは技術も事業規模も世界一であったのに、2002年にドイツに抜かれて以来、スペイン、中国にも抜かれたしまった。
どれも、日本の政策の欠落が、せっかくの機会を逃してしまったのである。

なぜ、この様な大きな失策をしてしまったかは、大きな原因が二つある。
第一には、日本の将来のエネルギー政策を原子力に大きく依存しようとした、経済産業省のこだわりがあった。
温室効果ガスの削減に向けて、原子力発電所を大幅に増設して、火力発電所の代替にしていく計画であった。

しかし、この構想は原子力発電業界の隠ぺい体質と、身内だけの都合で作り上げた安全神話が災いして、次々に事故や不祥事が発生して、国民からは完全に信頼を失ってしまった。
それが原因して、増設の計画はほとんどが頓挫している。

第二の原因には、温室効果ガスの削減に向けて、原子力発電が順調に進まないならば、省エネルギーを促進することに重点を移してしまったことである。
「省エネ」は確かに重要であるが、これは一時的には設備の更新時などに需要が生まれるが、その後はエネルギ―消費量の減少によって、「GDP」を引き下げる効果しか残らない。

「再生可能エネルギー」に転換する政策を強力に実施すれば(一時的な電力価格の微増があるにしても)、設備投資の活発化や技術革新への投資が生まれ、総合的に「GDP」を増加させる。

2000年初頭のデフレ経済からの脱却が言われていた時期に、本命の「再生可能エネルギー産業」育成にはお金を回さず、原子力発電依存の失敗により、省エネルギー政策一辺倒に陥った。
この三分野の失敗政策によって、日本のデフレ経済は長期化してしまい、人権費の下落を加速して格差社会を拡大させてしまった。

この時期の政権は、構造改革だ!民活だ!自由市場経済競争主義だ!と見当違いの政策を声高に叫び、効果を何も生まずにリーダーばかりが交代していた。
今の日本の低迷は、この10年の経産省の誤った産業政策と、無知な政治家の連帯責任である。
では、今の政権と経産省は、「次世代のグリーン産業」育成に本気になっているのだろうか?

2000年からの10年は日本のエネルギー政策の空白期。

2010-12-25 | 経済問題
今、日本のグリーン電力産業は重要な岐路に立たされている。
10年ほど前に成立した「自然エネルギー促進特別措置法」は、その狙いとは裏腹に、『風力発電以外の再生可能エネルギー抑制法』であったことを昨日のブログに書いた。
これだけでは解りにくいので、もう少し、その説明を具体的に付け加えておきます。

既存の電力会社は、化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃焼して発電する、火力発電が主体である。
これらは、大量に燃料を海外から輸入し、大型の発電所で効率よく発電することが、企業にとって最も収益性が良い。
しかし再生可能エネルギーなどは、どれも小規模の電力で、発電事業としては、手間がかかり効率の悪い仕事である。

1990年代を通じて大手の電力会社は、この様な手間のかかる上に収益も期待できない電力は、いわゆるゴミ電力として、できるだけ避けて来たのが実態である。

それに対して、国の方針として再生可能エネルギーを将来において促進させることを狙ったのが、この「自然エネルギー促進特別措置法」であるが、実質の買い取り義務量を最小の1%程度に抑制してしまった。

これでは安いコストで発電できる事業者の方が優遇されるだけにとどまり、それも買い手市場になるので、上乗せの金額はわずかに1~2円/kWh程度にしかならない。
買取りの義務量が少ないことと、優遇が微々たる金額では、風力発電の建設予定だけにとどまって、地熱発電、潮力発電は、まったく事業化が計画できなかった。

次世代のグリーン産業を育成するためには、それぞれの発電方式の技術進化を促す政策的な措置が必要である。
しかし、この【特措法】は、すべての発電方式を競わせる事が技術進歩になると、錯覚をした「自由市場信奉者の専門家、官僚、政治家」の未熟モノたちの浅はかな判断によって、発電方式毎の個別に優遇する制度を採用しなかった。

この措置は、たとえて言うならば、学力を向上させる政策を実施するのに、小学生も中学生も、高校生と同じクラスに入れて、そこで、同一の学習をさせることに等しい。
これでは、高校生だけが何とか学習できるが、他の生徒は全くのおいてけぼりになるだけである。

地熱発電に対しての買い取り義務量と優遇価格を、10年計画で検討して、技術進歩を促すのに適切な優遇価格を提示すれば、全国の事業者に対して適地を開拓するやる気を引き出し、それが、大きな技術進歩の要因となる。
同じ事を、潮力発電、バイオマス発電でも、個別の優遇政策を適切に提示することこそが、『次世代のグリーン電力産業』を育成することに繋がる。

この様な事態は初めから予測されていたのに、経済産業省と其の追従者は、目を向けないできた。

経済産業省の愚策「再生可能エネルギー発電抑制法」の軌跡。

2010-12-24 | 快適エネルギー社会問題
日本経済が自動車産業の成長による収益増加と雇用創出によって、高度経済成長を遂げたことは周知のことである。
今後も日本の自動車産業が世界の先端で収益を上げる産業でいられるかは、ここ10年くらいの適切な政策支援が不可欠であると、12月21日のブログに書いた。

自動車産業に匹敵するくらいの重要な【次世代のグリーン産業】として、『再生可能エネルギー発電産業」が、いま正念場を迎えている。
この分野で世界の先端を進めるかどうかで、日本経済の将来が大きく影響をうける。

実は、この産業が世界の最先端に躍り出るチャンスが、1998年の「京都議定書の締結」の時点にあった。
気候変動対策の重要な国際条約としての「京都議定書」は、温室効果ガスの削減目標を、先進主要国が義務として負う、画期的な条約である。
しかし、アメリカが離脱したことによって、「京都議定書」の不公平な面が強調されて、日本にとっては悪平等条約の様に宣伝されてしまった。

平等性も重要だが、高い目標に沿って果敢に技術開発と事業化に取り組むことは、先進国にとっては、大切な役割である。
同時に、自国の産業構造の転換にも役立ち、国益に沿う潮流にのる絶好のチャンスでもあった。
しかし、日本の旧産業界は、一様に「再生可能エネルギー」は未熟な産業であって、先行投資をするのは割に合わない、として優遇する政策に後ろ向きの姿勢に終始した。

2000年代の初頭に成立した「自然エネルギー促進特別措置法」は、再生可能エネルギー発電を既存の電力会社に買い取りを義務付ける、当時としては世界の先端を進んだ政策である。
しかし、この法律制定の最終段階において、既得権を持った電力業界関係の猛烈な抵抗があって、法律の本来の狙いをナイガシロにする「骨抜き」が実施されてしまった。

それは、再生可能エネルギー毎の電力の買い取り価格を決める方式に、「市場原理による買取り価格」の変動価格を採用してしまったことである。
同時に、その買取り義務量を電力業界の抵抗に沿って、義務量を最小のレベルにしてしまった。

具体的には、全電力量の1%程度の再生可能エネルギー電力(自然エネルギーとも呼ぶ)を、各電力会社が買取れば良いとして、それ以上の義務付けがないことになってしまった。
結果として、当時の技術水準で、一番、発電コストが安い風力発電のみが、わずかな優遇価格(通常よりも1~2円/kWh上乗せ)で買取られる限定的な効果しか生まれなかった。

発電コストが割高な、地熱発電、潮力発電、バイオマス発電などは、どこの地域においても、まったく採算が取れない程度の買い取り価格になるため、新規の建設計画はとまったに等しい。
【自然エネルギー促進法】と言いながら、実質は『風力発電以外の再生可能エネルギー抑制法』
を10年近くに渡って維持した経済産業省は、日本の次世代産業の育成を抑えて来たのである。

再生可能エネルギー電力全量買取り制度の開始が経済活性化に。

2010-12-23 | 快適エネルギー社会問題
日本の再生可能エネルギー産業を育てる政策として、『再生可能エネルギー電力全量買取り制度』の検討が経済産業省の委員会で進んでいる。
この制度は、まだ揺籃期にある「再生可能エネルギー発電事業と技術」を将来において、化石燃料発電の事業に匹敵する水準に引き上げるための政策である。

例えば、風力発電は適地に建設すれば、発電電力の販売(送電線網を所有している電力会社の買い取ってもらう)によって、その建設資金と運営費を回収して、事業として成り立つ様に展開している。
しかし、日本は国土が狭い上に、送電線につなげる地域は限られているので、適地以外の場所に建設すれば、送電線までつなぐための追加の費用が余分にかかる。
その余分な経費を回収するためには、発電した電力を高めに買い取ってもらう必要がある。

今回、経済産業省の委員会から、「買取り価格と期間」の基本案が示されて、国民からの意見を聞いたうえで、来年の1月中にまとめ、国会に法案を提出する予定となっている。
この基本案では、太陽光発電以外は、買取り価格を20円/kWhとし、期間は15年間としている。
現在の買い取り価格は、10円/kWh近辺であるから、約2倍の買い取り価格とすることになる。
これによって今までは採算が合わないとして見送られてきた地域にも、風力発電が検討されるであろう。

このブログでも書いてきたが、風力発電を海上に建設すれば、騒音被害もなく建設適地は増えるし、日本周辺の海上風力に恵まれた地域を開拓することで、関連産業の活性化と、建設地域の経済振興にも貢献する。

風力発電だけでなく、地熱発電(日本は適地が多いが建設費が高くつく)も、今までは、採算が無理とされてきた地域でも、建設が可能になるであろう。

同じ様に、日本での海流、潮力による発電技術も、これからの技術進化によって、採算の取れる技術と地域の選定が進むようになる。
海洋国である地の利を生かした潮力発電は、日本においてこそ、世界の最先端の技術レベルを実現出来る、大きな可能性を秘めた産業分野である。

そして、このブログで何度も書いてきた「バイオマスエネルギー発電」においても、この制度が大きな促進力になる筈である。

この制度による国民の負担をどうなるか、気になるところであるが、経産省の試算によると、標準的な家庭における電気代が「月に175円、上乗せ」される。
この程度の負担ならば、省エネ家電を使えば、すぐに節約可能な範囲である。
広く国民から集めた資金が、「再生可能エネルギー産業」=【次世代のグリーン産業の本命】を、一気に経済活動の中枢に押し上げる事が期待できる。
今まで、どうして実施しなかったのか?

次世代の再生可能エネルギー産業を世界のトップレベルに。 

2010-12-22 | 快適エネルギー社会問題
エネルギ―の自給率が極端に低い国の中に、日本がトップレベル(約4%)でいることを、多くの国民が知っている筈である。
高度経済成長時代には、原油の輸入依存を中東地域に頼りすぎて、中東諸国の原油輸出規制のあおりを受けて、石油ショックを2度に渡って経験をした。
その経験も時間が過ぎると、エネルギー依存率の高い国の経済が脆弱であることを忘れてしまう。

現在、温暖化対策の主要な手段として、再生可能エネルギー(太陽光、風力、潮力、バイオマスなど)が注目されている。
これらは、中東などの海外に偏在するエネルギーではなく、世界中に広く分布しているエネルギーであり、日本の近辺で十分な国内消費分のエネルギーを自給できる可能性がある。

また、これらのエネルギー化関連の技術は開発途上にあり、その分野で先行することで「次世代のグリーン産業」として、期待が大きい分野である。
それにも拘わらず、日本の政府が取り組んできた【再生可能エネルギー産業】の育成政策は、大きな失敗をしてしまった。

自民党政権が、化石燃料依存の旧時代産業界に配慮しすぎた政策を採ったために、せっかく芽生えた「太陽光発電産業」や「風力発電産業」の成長の芽をつんでしまった。
海洋国である日本の環境を活かせる「潮力エネルギ―」や「海藻類栽培のバイオエネルギー」などには、基礎技術の段階にすら研究資金を渋っていて、まったく進展がない。

民主党政権になって、温室効果ガスの削減目標を「2020年までに25%削減」と威勢の良いスローガンを打ち上げた影響で、少しは「再生可能エネルギーの促進」の機運が上がってきた。
しかし前回に書いた様に、その促進政策の為の財源は、2011年度の後半から始まる、ささやかな規模の【環境税】の創設だけに留まる。

2000年代のエネルギー政策において、重要な判断ミスをした経済産業省と資源エネルギー庁は、さすがに「日本の再生可能エネルギー技術・産業」の立ち遅れを無視するわけにもいかず、やっと促進する意識に転換した様である。

本日の朝刊(朝日新聞は8面)に、『「再生可能エネルギーの全量買取制度」に、さまざまなご意見をいただきました。』と題して、全面広告を載せている。
この全量買取り制度は、このブログでも何度も書いてきている(2010年、7月27日、30日)ので繰り返さないが、関連技術の開発促進と、導入者に対する支援措置(いわゆる下駄を履かせる制度)として、もっとも有効な実行可能な制度である。

だが、目先の党内抗争と緊張の高まった外交問題に振り回されて、民主党政権の動きは全く、だらしがないし、野党も同様である。
やはり、日本は官僚がしっかりして、主導しなければ動かない国なのか?
政治主導するには、政治家のレベルが低すぎると言わざるをえない。

次世代のグリーン産業・自動車産業が世界で優位に立つ為に。

2010-12-21 | 交通問題・自動車
次世代の主力産業となる「グリーン産業」の育成には、国としての覚悟と集中した投資が不可欠である。
日本の政府は、高度経済成長時代の成功体験に染まって、他の先進国のアメリカや欧州諸国のやり方を真似しながら、日本の状況に合うように取り入れてきた。
これが日本は先端技術には力を入れずに、技術の真似をうまくやって先進国に追いついたのである。

今でも、その考え方が各方面に浸透していて、「グリーン産業」は他の環境先進国が上手くいっているところを上手に採りいれることで、やっていけると思い込んでいる。
しかし、これからの時代では、いったん先頭グループから脱落すると、あらゆる面で不利になり、周辺の事業分野でも追従する立場におかれてしまう。
日本の守旧派産業の経営者は、その頃にはいないので、自分の古い考え方が間違っていたことに、気付く場面には遭遇しないだろう。

前回に書いた様に、日本の「グリーン産業」の育成に役立つ財源として、長年の懸案であった「環境税」が小規模ながらもスタートすることになった。
これは、地球温暖化対策に充てることになっているが、その中でも、将来の中核を担う産業は、やはり自動車産業であろう。

現在、中国は自動車市場では急速に伸びていて、中国政府は従来の自動車は民間に任せても、2011年~2020年の「省エネ・新エネ車産業発展計画」を策定している。
それによると、財政資金1兆2千億円を投入して新エネルギー車の開発や販売を支援する。
なかでも電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHV)を500万台まで普及させて、その為には電気自動車の充電スタンドを2020年までに一万ヵ所に増やす。

日本はハイブリッド車などの技術では、世界の先端を進んでいるが、電気自動車やPHVでは、世界の自動車企業は、ほとんど同時スタートの状況にある。
ここで、日本での普及促進も含めて、先行するための研究開発と、普及のためのインフラ設備に重点的に投資をしなければ、世界の進展状況から脱落するであろう。
2020年以降の本格的な普及時期になる前に、日本の自動車産業が世界の先端でいられるかどうかは、ここ10年くらいの施策の是非にかかっている。

研究開発投資は、自動車企業の存続を賭けて民間の責任で負うべきで、政府は適切な支援をすることである。

しかし、充電スタンドなどのインフラ整備は、政府・自治体の仕事として、積極的に先行投資をすべきであろう。
そのための財源が、「環境税の初年度350億円」では、いかにもささやかである。
自動車ばかりに財源を回すわけにいかず、この1割が配分されても、スズメの涙程度にとどまる。
「環境技術立国」を目指すならば、もっと大幅に財源を増やして将来の必勝を期すべきである。

環境税の新規導入は及び腰ながらも、やっと合格点か。 

2010-12-20 | 快適エネルギー社会問題
気候変動対策に必要な「温室効果ガスの排出削減」に役立つ政策の財源として、石油や石炭になどに課税する【環境税】の導入が、議論百出の中でようやく「政府としての税制改正大綱」に盛り込まれた。
民主党の政権交代にマニフェストの中での、具体的な政策決定としては、温暖化対策関連では始めての成果と言える。

この財源を有効に使うために各省庁でも綱引きがあったが、来年度は「経済産業省と環境省が共管するエネルギー対策特別会計に全額を繰り入れ、地球温暖化対策に充てることで決着した。」
と報じられている。
「環境税は、現在、石油や石炭などを輸入する際、企業に課税している石油石炭税に、二酸化炭素の排出量に応じて税率を上乗せする形で導入される。
消費者が購入する際の価格にそのまま転嫁された場合、経済産業省の試算では、ガソリン価格が1リットル当たりおよそ0.8円、電気代が1世帯当たり月に30円余り、値上げされる。」

この程度の値上がり分を消費者が負担することは、原油価格の変動でしょっちゅう変動する物価の中では、吸収することは可能であろう。
これによって、経済の好転に少しでも寄与する方が、国民の期待に沿う筈である。

しかしながら、これ程度の値上がりにも、猛烈反発する業界がいる。
言わずと知れた、「化石燃料多消費型産業」である。
この値上がり分を企業努力で吸収できるような経営することが、本来の責任であるのに、これでは国際競争力で不利になるから、容認できないと今でも言い続けている。
この言い分に民主党は配慮しすぎる姿勢で、完全実施に要する期間を3年半も懸けることに妥協してしまった。
その結果、来年度の税収は350億円、3年半後でも2400億円の税収に留まる。
これでは、地域社会での温暖化対策などには財源を回す余裕はでない。

民主党はまたもや、守旧派産業界の言い分を優先して、地域社会の再生に必要な財源の創出には、腰が引けてしまった。
菅内閣の弱腰姿勢が、垣間見える様で、落第点の税制と呼ばざるを得ない。
それでも、何もしなかった自民党政権の「落第政策の温暖化対策」時代、2000年~2009年の無為無策に比べれば、初年度の政権としては下駄を履かせて、合格点としたい。

それは、マニフェストでは、ガソリン・軽油の暫定税率を廃止すると公約していたが、環境税の税率を低く抑えた為に、財源の確保が難しくなって苦肉の策として
『当分の間維持するとしたガソリン税と軽油 引取税の旧暫定税率の取り扱いを論議。2.5兆円に上る税収維持のため、11 年度も現在の税率を維持することを決めた。』
これは、当然の公約変更として、認めるべきであろう。
グリーン産業育成のためにも。(以下、次回)

消費者も経営者も増税の負担を理解しグリーン産業を育成する。

2010-12-19 | 快適エネルギー社会問題
日本の温室効果ガスの排出削減には、【削減費用】を納得できる金額以内に抑える事が必要である。
この余分に負担する【削減費用】を、想定する使用年数以内での経費の削減で元をとれることが、導入する場合の判断につながる。

日本の保守的な経営者は、短め目の使用年数しか想定しない習慣がついていて、新規の投資には慎重すぎるから、政府の補助金で下駄をはかせて、後押しをして上げなければ導入は進まない。
これは、経営者でなくても個人の消費者でも、同じ傾向である。

近年に実施された【エコカー補助金】と「省エネ性能の優れた家電」への買い替え促進策【エコポイント制度】は、まさに、消費者に対する「下駄を履かせる」制度であった。
現在使用している、燃費の悪い自動車を買い替えさせる面で「エコカー補助金」は効果をあげた。
家電の買い替えには、「エコポイント制度」もある程度の効果をあげている。

問題はこの補助制度の財源の恒常的な制度がないために、期間限定にせざるを得ないことにある。
民主党は、自民党政権が実施した制度を、そのまま引き継いだのは良いとしても、財源の確保には完全に失敗した。
それで、期間限定で自動車の「エコカー補助金」は打ち切りになり、駆け込み需要があった後の落ち込みはひどい状態である。
需要の先食いをしただけだと、悪口を言われるお粗末さである。

本来は、「本当のエコカー」に対しては、恒常的な補助制度を作ることが、本格的に普及する技術進歩を促して、購買意欲をひきだすことで市場拡大が見込まれる。
需要の先食い的な一時の人気取り的な政策では、本当のグリーン産業の育成には繋がらない。

そこで、財源をある程度の規模で、恒常的に確保する政策が重要になっている。
税制調査会において、どうやら、「環境税」と呼ばれる、新規増税が方針として決定した。

2011年10月以降から導入して、税率を段階的に引き上げる方針で、初年度は800億円の小規模で初めて、3年半後の2015年には2400億円の税収規模になる。
これでも、産業界は負担が増えるとして、不平を並べ立てている。
石油や石炭にかかる税金を、炭酸ガスの排出量の多い燃料の割合に応じて、課税を強化する制度であるが、「税収規模」をもっと拡大するためには、税率を早急に引き上げる必要がある。

ともあれ、増税は不人気政策であるの、当初は小規模の始めて効果を実証しながら国民の理解を得て、使途を明確にしながら増税を容認してもらうことが不可欠である。

それには、この税収の使い方を、企業の【温室効果ガスの削減設備】の導入促進に有効に使う様にすべきである。
これによる経済効果と雇用創出効果を、国民に分かる様にキチンと説明をすべきである。

日本の経営者はリスクを採らないから下駄を履かせるしかない。

2010-12-18 | 経済問題
産業界の保守的な経営者は、新規の投資には慎重である。
自分の判断によって、投資した資金の回収は、失敗すれば責任を問われる。
だから、必ず成功する案件にしか、投資OKの指示をしない傾向が強い。

温室効果ガスの削減における対策も、地球環境の為などと口では言いながらも、実質はエネルギー経費の削減になるかどうかで判断する。
其れが、3年で回収できるならば、GOの指示を出す。
しかし、初期の投資が大きくて、【投資回収年数】が10年かかると想定される案件については、ほとんどの経営者は、NGの判断をする。

12月13日~17日にかけて説明した温室効果ガスの【削減費用】(円/tCO2)を算出する使用年数を、経済産業省の計算では3年~9年(産業部門)を想定している。
しかし、実際の設備の使用年数を調査して想定すると、12年~15年は使用する。
つまり、10年で投資回収できる設備を導入すれば、11年目以降は利益が増える計算になる。

だが、この使用年数、投資回収年数を長く想定することには、保守的な経営者は頑強に抵抗して、否定の態度をとり、導入すれば儲けが出る設備に投資することを拒否する。
これは、いったい、どういう理由であるのか、推測してみよう。

日本の経営者はアメリカほどの短期業績を問われないが、それでも、5年程度の間に業績にプラスの兆候が出なければ、実績の出せない経営者とされてしまう。
だから、3年以内で投資回収出来て、その後は利益が出る設備には導入に積極的になる。
それほど、短期間で投資回収しなくても良い設備でも、9年以内が限度である。
だから、経済産業省の想定した、3年~9年を妥当と考えているのである。

前回に計算の事例としたハイブリッド車の場合、初期の割高分の回収年数は5年であり、6年以上使用すれば、利益が出る計算であり、実際に使える年数は10年間に達するだろう。
つまり、ハイブリッド車を導入することは、利益が増えることになる。
それなのに、5年以下の使用年数しか想定しないならば、ハイブリッド車は導入しないと言う判断が正解になってしまう。

この様な事態が、産業界の保守的な経営者の間では、温室効果ガスの削減に有効な設備の導入判断において、常時行われているので、日本の削減が目標どうりに進まない。

これを打開するためには、導入促進の優遇政策を採ってでも、投資回収年数を短縮して、その年数での【削減費用】を政府が資金補助してやる事が必要になる。

前にも書いた様に、日本の経営者は、リスクを少なくすることに終始、頭を使っているので、政府が投資回収のリスク負担をしてあげなければならない。
落第気味の経営者でも、合格させるために「下駄を履かせる」必要がある。
この【下駄に相当する補助金】の財源をどうするかが、今後の宿題である。(以下、次回)

目先のことしか見えない守旧派産業の経営者はデフレの元凶。

2010-12-17 | 経済問題
温室効果ガスの削減には、新しい技術を採用した商品を導入する必要がある。
例えば、自動車の場合には通常のエンジン車に比較して、ハイブリッド車が、燃費が良いことが知られている。
燃費の向上は使用期間中における経費削減になることは言うまでもない。
しかし、新技術である場合には、価格が従来の技術の商品よりも高くなる。
この高くなる初期購入費用は、使用期間の間に削減できる燃料費を積算することで、初期の価格高の分を回収できる。

これを【投資回収年数】と呼び、自動車の場合には、短めの想定(経済産業省の計算に使用)では、5年間としている。
しかし、これは如何にも実態とはかけ離れている。
国立環境研では、使用年数を8年に想定して、計算を見直している。

ここで、ハイブリッド車を導入したユーザーの場合に、負担が増える金額はどの程度になるのか、
試算をしてみよう。
ハイブリッド車の価格を200万円とし、同クラスの従来のエンジン車は160万円としておく。
この場合は、ユーザーは40万円を余分に負担することになるが、使用している間は燃料経費削減ができる。
仮に1年間で24万円の燃料費(月当たり2万円)が従来エンジン車でかかるとして、ハイブリッド車に変えると30%燃費が向上するとして見る。
1年間で7.2万円が節約できるので、6年以上使用すれば、初期の余分に負担した金額は取り戻すことができる。
つまり、消費者の負担が増えるのは、最初の5年間までで、6年目以降は経費の削減のメリットをモロに受け取る事ができる。

経団連をはじめとする旧産業界の経営者は、この最初の期間に負担が増えることを声高に主張して、トータルとしての経費削減になるメリットには、目を向けない様にしている。
温室効果ガスの削減には、初期の投資負担が従来よりも増えることは事実であるが、それは使用期間中のエネルギー経費の削減によって、ほとんど元が取れるので、負担が増えて困ると言うのは、どう見てもおかしい。

また、負担が増えるという初期の期間には、投資額が多めに必要な分だけ、おカネが支払われる。
これは、現在のデフレ経済下においては、需要増加の効果を表して、間違いなく経済活動の好転に結び付く。
上記のハイブリッド車の場合には、最初の5年間に余分のおカネを消費者が使っているのだから、これが経済成長にとって悪い筈がない。

さらに、新技術の商品が売れることによって、企業は開発を促進させる為の研究投資を増やす効果も出てくる。
この様な派汲効果は、計りしれない分野にまで広がる可能性がある。
それでも負担はイヤか。