安倍首相の認識は単純な算術のレベルすら、理解が出来ていない様だ。
貿易収支が大幅に悪化した責任には一切触れないで、ただ、原発が停止したままだから、輸入の燃料費用が増大して、3.6兆円も海外におカネが出て行ってしまう、と説明する。
その3.6兆円のうち、どれだけが円安による増加であるか、算術計算すらしないで、全部を原発停止の為に赤字になったかのような認識だ。
これほど、国民を愚弄している話はない。
日本の電力の供給量の割合がどうなっているのか、をもう一度、おさらいをして実情をキチンと把握するのが基本である。
多い順にあげると、天然ガス42%、石炭27%、石油19%、であり、輸入に頼る燃料による火力発電は88%に達している。
これらの燃料費が、2012年12月の安倍内閣発足後は、円安に誘導した影響で、すべての燃料費が10~15%の価格上昇になってしまったのである。
原発の停止により、「旧式の石油火力発電」を再整備して、稼働している燃料費の増加分はあるにしても、原発事故前に石油火力は9%の割合であったから、10%の増加分は、原発停止の増加の影響と見るべきだろう。
これらの算術計算をするだけで、原発を再稼働出来ない場合の燃料費の増加分は、3.6兆円に達するわけがない。
つまり、天然ガス価格の値上がり分や、石炭価格の値上がり分もすべて、原発停止のせいにしている。
無分別にも円安に誘導してしまった政策ミスを、すべて「電力会社の不始末による全原発の停止状態」の責任を転嫁しているのだ。
さらに、野田政権時代の2012年においては、貿易収支の赤字が出た時期でも、わずかに留まっていた。
それが、月間で11兆円もの大幅な赤字を更新したのは、一体、誰のせいなのか。
民主党野田政権時代は、円高に苦しめられたと言いながら、全原発が停止していても、電力不足の停電もなく、日本中の国民生活と産業は動いていた。
安倍政権に交代後は、一部の金融成金と輸出依存企業の業績好転はあったが、結局は、輸出依存の産業構造ではないから、輸出金額の増加はなくなっている。
この経済構造の変化に気がつかない「アベノミクス」の暴走が、輸入金額の膨大な増加を招き、大幅な貿易赤字で国富を海外に流出させているのである。