大学のとき、念願の真空管プリアンプを作る。”集大成プリアンプ”の中の故上杉氏設計マッキントッシュC22イミテーション版。1970頃の発表で特段変わった回路・トランジスタを使ってなくオーソドックスな物と思った。一生この回路と添い遂げる、みたいな気持だった。手動のドリル、金鋸。A&Bの抵抗、ブラックゲートのコンデンサ、6Nの配線材、タイトのラグ・真空管ソケット。MJ誌を読んでいて、パーツはそこそこ知っていた。メーカーで使えないような高級パーツを使えば市販品に勝てるだろうと。なんともはや。ジャングル配線・・・配線なんて繋ぐことしか知らない。それでも何とか完成。・・・音が出ない。三栄無線に12AX7の足の配置を聞く。私:「1番がプレートで、2番がグリッド、3番がカソードですよね?」店員:「ええ、4番5番がヒーターで・・・」私「・・・はい、(へっ、ヒーターってナンダ?)」ヒーターを知る。帰ってMJ誌でもう一度ヒーターを探す。合わせて集大成~の電源部の写真をよーく見る。見づらかったがなんか線が出てる?結線後、音が出る。思わずガッツポーズ。ハムも有り、AMラジオのような音だったが・・・。この時の感動は忘れない。
これが私と真空管アンプとの始まりだった。プリアンプ1号。真空管アンプは圧倒的にパワーの方が人気が有ったが、なぜかプリに拘った。
この1号はオンキョーのA7より音が悪く早速ばらした。2号。同じ回路で組み直す。若干だがジャングル配線を整理した。これでもA7より悪いか、同じくらい。最短距離の配線が良いだろうと、コンデンサ、抵抗のリードは短く切った。
当時の製作記事の写真を参考に、リード線を活用すべく製作をし直す3号。この時シャシはともだちの家で穴を明けてもらった。出来上がったのはリード線のもじゃもじゃしたくもの巣の様な物で、音はあんまり変わんなかった。
4号になって多少納得のいくものが出来た。実際はまだまだお見せできるものではないが。此処でようやく手持ちのTRアンプより「良い音」になった感じがした。それでもまだまだ自己満足で、音色以外はTRアンプに分が有った。
画像中央の薄い緑色。意を決して2mm銅板でシャシを作る5号。電源部を別にしてたが一体型にする。音の鮮度が上がり「もうTRはいいか」というとこまで来た。後はハム。5台組み直したがこれは出るときと出ないときが有った。アースに関するもの、主にHPからだが、を読んだがイマイチぱっとしない。最短距離で繋いでたが、何を思ったか、入力から順番に繋いでいったらハムが無くなった。へぇ~~。10年程かかった。以降はスピーカーネットワークで取り外したフィルムコンデンサを交換した。
出力にこんなでっかいコンデンサを付けたら音が良くないだろうて、いろいろやってみたがこれは時定数とやらで外せない。ここにきて、もう考え付くことは全てやって、限界を感じた。この時SME3012Rのきつい音の問題がこのプリかと思い、このアンプは諦めることにした。カップリングに制振材塗布ブチル巻オイルコン、カソードにタンタル、ソケットはテフロンに真鍮カバー、セレクターにはセイデンの高級品、電解はブラックゲートとスプラグATOM、ジャックはWBT、トランスに怪しいシート巻き付け、整流ダイオードは3シリーズから3パラフィルムコン抱かせ。そのほか多数。
気に入った回路で改良してけば、良い物・気に入ったものが出来ると信じてきた。なんてことか。次に作ったラインアンプで、アンプは部品ではなく回路、というのを知る。