なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

新型コロナウイルス感染症の支援事業

2020年10月11日 | Weblog

 今月中に新型コロナウイルス感染症従事者慰労金が来ることになったそうだ。病院として新型コロナウイルス感染症を診ているので、職員全員に出る(国の事業)。

 実際にコロナの患者さんを診ているのは内科病棟で、内科病棟所属の看護師さんに対して、「(他病棟の職員と)更衣室がいっしょでいいのか」などの差別的な言動が問題になっていた。そういう経緯があるので、内科病棟の看護師さんは、「実際に診ていない職員にも出るのはおかしい」と言っていた。

 県の事業としては、「新型コロナウイルス感染症患者に直接接する治療等を行った医師、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士等」に1日当たりの手当てが日数分出る。こちらは実際に診た職員だけに出るが、看護師さんたちの心労を思うと金額的には少額だ。

 病院の危険手当は1日200円で、あまりにひどいというので、その後1時間分の超過勤務手当分になった(1000円単位の少額)。

 

 内科病棟の看護師さんでコロナ担当になった看護師さんは、家族から「担当している間は家に帰ってこないように」と言われたりしている。(院内の使用していない病室を宿泊用にしている)

 コロナの患者さんを担当した後に発熱した看護師さんがいて、検査は陰性だったが、慎重を期して約2週間休んでもらうことになった。(患者さんとの接触前から少し症状があったので、他のウイルスだと思う)

 看護師さん同士はマスクをして仕事をしているので、コロナの患者さんがいても濃厚接触にはならない。それでも昼食時などはマスクを外すので、できるだけ少人数でお互いに距離をとって食事をして、その間は会話をしないように気を付けている。

 発熱した看護師さんが院内で泣き出したりしたが、いっしょに昼食をとった3名の看護師さんたちも相当に動揺していたそうだ(看護師長さんの話)。

 当方は濃厚接触者や疑い例のPCR検査、コロナ確定例の入院治療をほぼひとりで行っている。内科の患者さんは各病棟に散らばっているので、病院中を動き回っている。内科病棟以外では、どう思われているのだろうか(コロナの人?)。

 

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非活動性キャリア

2020年10月10日 | Weblog

 現在49歳の男性はHBVキャリアーのフォローとして通院していた。

 HBs抗原陽性・HBe抗原陰性・HBe抗体陽性で、HBV-DNAが2.8~3.1LogIU/mlで推移していた。ゲノタイプCで、日本では90%以上がCなので、標準的な?HBV感染になる。

 輸血した既往はなく、母子感染でもない。年齢的にはワクチン回し打ち(昔は同じ注射器で数人にワクチン接種していた)の時代の人なので、原因はそれではないかと推定される。弁護士事務所に、ワクチンによるHBV感染の被害者として登録している。

 ALTが36~50IU/lでALT>31IU/lになってしまうが、この方は画像上は脂肪肝があり、生検をしないと正確には鑑別できないが、肝機能障害のパターンとしてもB型肝炎というよりは脂肪肝だった。

 

 以前は別の先生が診ていたが、退職に伴ってしばらく当方の外来でフォローいた。その後、内科新患担当で大学病院消化器内科の肝臓グループの先生が来ているので、そちらに回していた。今週来院していたので、どうしているかとカルテを確認した。

 やはり肝機能検査・HBV-DNA検査が継続されて、画像は6か月に1回腹部エコー、1年に1回腹部造影CTでのフォローになっていた。脂肪肝はあいかわらずで、飲酒もしているので注意されていた。肝細胞癌の発生はない。

 

 出生時(産道出血による母子感染)から幼少期にかけてB型肝炎ウイルス(HBV)に感染すると、免疫が未熟なためウイルスを排除できず持続感染になる(免疫寛容)。

 HBs抗原・HBV-DNAは高値だが、肝細胞障害は起きていないのでALT正常範囲にある。症状はないので、無症候性キャリアと呼ばれる。

 このうち9割は症状がないまま、HBe抗原陰性(HBe抗体陽性)・HBV-DNA低値・ALT正常範囲の非活動性キャリアに移行する。

 残りの1割がB型慢性肝炎を起こす。そのうちHBe抗原陽性の状態(HBe抗原陽性慢性肝炎)では、HBV-DNA高値・ALT高値で活動性が高い。HBe抗原が陰性化してHBe抗体陽性になると、HBV-DNAが低下してALTも低下する(HBe抗原陰性慢性肝炎)。

 

 「治療適応のないHBe抗原セロコンバージョン後の非活動性キャリア」の定義は、1)HBe抗原が持続陰性、2)ALT値が持続正常(30U/l以下)、3)HBV-DNAが2000IU/mL(3.3LogIU/mL)未満

 この患者さんは非活動性キャリア相当だが、ALT>31以上なので、厳密には合致しない。脂肪肝によるALT軽度高値とは思うが、正確には言い切れない。「もう少し痩せて、脂肪肝としての肝機能を正常化させてもらえると、診る方としてはありがたいんですが」、と言ってきたが、現状維持で推移しているようだ。

 これまでHBe抗原セロコンバージョン後(HBe抗原陰性・HBe抗体陽性)の患者さんにも、「あなたは無症候性キャリア」と言ってきたが、正確には「非活動性キャリア」でした。

 現在は母子感染が防止できているので、HBVの新規患者さんを診ることはほぼなくなった。性行為による水平感染としてHIV重複感染の患者さんでみられる。ヨーロッパ型のゲノタイプAのHBV感染で、従来のゲノタイプCやBと違って、キャリア化(B型慢性肝炎)しやすい。

 

 

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脳梗塞の再発

2020年10月09日 | Weblog

 水曜日に84歳男性が食事を飲み込めなくなったと、耳鼻咽喉科の外来を受診した。耳鼻咽喉科的には咽喉頭に問題がなく、内科外来に回された。

 

 この患者さんは、8月に右後頭葉の脳梗塞で地域の基幹病院の脳神経内科に入院した。認知症による不穏で、急性期のうちから当院に転院依頼が来て、精神科医の処方した大量の抗精神病薬をもって転院してきた。

 転院後も夜間不穏で、ナースステーションの脇にベットを持ってきて診ていた。抗精神病薬を調整(追加・減量)して、転院後よりは診やすくなった。

 両側の後頭葉の脳梗塞を来しているので、視力低下が著しい。また認知症の程度もひどいので、奥さんの在宅介護は大変だと思われた。精神科病院への転院を勧めたが、経済的な理由があって、自宅退院になった。

 

 脳梗塞再発が疑われた。内科に回ってくると、のどが渇いたと言って両手でペットボトルを持って飲んでいた。問診が成り立たないので、すぐに画像検査をすることにした。頭部MRIで、右中大脳動脈(MCA)領域に新規の脳梗塞を認めた。MRAで右MCAの描出されない。左MCAも狭窄して心もとない。

 もともとの慢性腎不全が脱水症で悪化している。入院治療を勧めたが、妻は経済的な理由で入院できないという。妻は認知症ではないが、思う込みが強く話が通じないところがある(お金の問題も大きいのは確か)。ここまま帰ると亡くなる可能性もある、と伝えたが、もう年だし、それでもいいという。

 前回入院時に来ていた隣県の娘さんに連絡して、入院について相談するように勧めた。看護師さんから連絡がきて、娘さんの許可がとれたので、入院でお願いしますという。

 数日抗精神病薬は内服していないが、もそもそと身体を動かすが、内服なしで経過をみれそうだった。慢性腎不全なので使用できる薬も相当に限定されるが、1週間点滴治療で経過をいることにした。経過をみるうちに左中大脳動脈領域にも脳梗塞が起きるかもしれない。

 当院向きの患者さんではある。

 

 

 

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低ナトリウム血症

2020年10月08日 | Weblog

 今年の3月に患者さんの希望で近医に紹介した87歳女性が、低ナトリウム血症・低カリウム血症で先々週の週末に内科に入院していた。

 家族の話では、3日前から受け答えがふだんより鈍く、食事摂取量が低下していた。血清ナトリウム109mEq/L、血清カリウム2.2mEq/Lという極端な低下だった。開業医の先生から利尿薬(フロセミド)が処方されていた。

 当院通院時に利尿薬の投与はなかった。確かに両下腿から足にかけて軽度の浮腫はあるが、日中ずっと椅子に座っていて両足を下げているためで心不全ではない(と思う)。この年齢にしてはかなり身長もあり、体格のいい方だった(連れてくる娘さんも同じ体形をしている)。

 別の内科の先生が外来に出ている時で、そのまま主治医として治療を開始していた。まず利尿薬を中止して、点滴を行っていたが、乳酸リンゲル液500ml+塩化カリウム製剤20mEqと3号輸液500mlで、高張食塩水ではないのは、主に利尿薬の影響と判断したからだろう(いちおう会話可能)。

 血清ナトリウムは120(3日目)、126(6日目)、138(12日目)と順調に改善していた。血清カリウムは一時3.7まで改善したが、その後また2.7と低下していた。入院4日目からは食事摂取できるようになって完食している。

 利尿薬(ループ、サイアザイド)で低ナトリウム血症はよく見るが、血清ナトリウムで120台が多く、ここまで低下したのは初めて見た。

 心気症傾向というか、心気症(今どきだと身体症状症)そのものといった患者さんで、むくみを気にしての利尿薬処方希望だったかと思われる。

 

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薬局の針刺し事故

2020年10月07日 | Weblog

 昨日の午後に、病院の近くの調剤薬局で針刺し事故があったと、事務から感染管理ナース(ICN)に連絡が入った。

 患者さんは糖尿病・バセドウ病で当院内科に通院している67歳女性だった。内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が入院時から診ている。糖尿病はバセドウ病により増悪したと思われたが、抗GAD抗体が要請で血中Cペプチドも低下(インスリン依存状態相当)と判明したという経緯がある。

 インスリン強化療法をしていて、使用済みの針は病院で回収しているが、この患者さんは針を処方している薬局に持っていっているらしい。空きペットボトルに入れていた針を手指に刺していた。

 院内だと、患者さんの感染症保有の有無を確認して、刺してしまったそうだ。やはりインスリンの針は専用の容器(壁を針が突き抜けることはない)に入れるのが好ましいが、お金がかかるのでペットボトル使用が多い。

 針を刺した薬局の職員(57歳女性)が病院に来た。B型肝炎のワクチン接種歴はないという。さて患者さんはと見ると、入院した時に感染症の検査がされていなかった。ただその日に外来受診しているので血清は残っている。患者さんの同意があれば、検査の追加は可能だ。

 患者さんに連絡して同意をとろうとしたが、なかなか電話がつながらなかった。針を刺した女性の結果(当然、HBs抗体陰性)が出たころに連絡がついて、残りの血清で検査を開始した。

 患者さんのHBs抗原・HCV抗体は陰性だった(HIV検査は外注)。HBグロブリンは不要だった。これを機会に、HBワクチン接種を勧めて、1回目のHBワクチン接種を開始した。あとは1か月後(2回目)、6か月後(3回目)のHBワクチン接種予定。(患者さんの追加検査は、薬局側の支払いになる)

 HIVは検査は行うものの、暴露後予防投与は行っていない。近隣の病院でも行っていないそうだが、全国的にはどうなっているのだろうか。

 

 

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交通事故~気脳症

2020年10月06日 | Weblog

 昨日の昼に、内科の別の先生と話していた。日曜日に病棟から呼ばれて病院に来ていたそうだ。昼ちょっと前に帰宅する時、病院から出て国道に入るところで、交通事故が起きていて、周り道をしたという。

 直進して来たオートバイが右折してきた車に衝突して、オートバイに乗っていた57歳男性が跳ね飛ばされた。救急隊到着時、心肺停止の状態で、心肺蘇生が開始されて、ドクターヘリが要請された。(心肺停止はドクターヘリでは運べないはずだが)

 ドクターヘリで来た先生も心肺蘇生を継続したが反応はなく、搬送不能と判断されて、当院に救急搬入が要請された。外科日当直の先生(大学病院外科から)が引き受けて、心肺蘇生を継続した。

 その事故に会われた方は首都圏から来て、戻るところだった。外科医が電話で家族に連絡して、心肺蘇生術約1時間でも反応がないことを説明した。夕方家族が来院して、事故と治療経過まで説明された。非常勤の先生には、ずいぶん時間をかけて仕事をしてもらったことになる。

 死亡確認後にAutopsy imagingがされていた。頭蓋骨・顔面骨・頸椎・肋骨・骨盤・下肢骨に多発骨折を認めた。脳内に気体を認めて、気脳症を呈していた。外傷性くも膜下出血があったのかもしれないが、判読しがたい。脳皮質・白質の境界が不明瞭で脳挫傷を来していると判断された。

 気脳症の画像を久しぶりに見た。当院は脳外科・整形外科の常勤医がいないので、通常外傷は軽症のみしか搬入されない。骨折を認めれば、即搬送になる。

 

 昨日、新型コロナウイルス感染症で入院していた患者さん2名が退院した(保健所管轄が別の地域の患者さんたち)。県内では数名ずつ新規患者が発生している。当地域では2名ずつ3か所で発生したが、その後の発生はない。

 内科病棟をどう使うか会議があったが、結局内科病棟は新型コロナウイルス感染症の診断確定例と疑い例のみの入院となった。病院改変で看護師数が減少しているので、残った内科病棟の看護師さんたちは、コロナなしの時は他病棟に勤務する。

 昨日は保健所依頼のPCR検査を8例行ったが(会食での濃厚接触者)、いずれも陰性だった。

 

 

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発症2週間目の脳梗塞

2020年10月05日 | Weblog

 土曜日に2週間前から構語障害がある88歳男性が娘に連れられて救急外来を受診した。

 妻との二人暮らしで、妻が呂律が回らない夫の症状に気づいて医療機関受診を勧めたが、同意しなかった。金曜日に娘が母親(患者さんの妻)の病院受診のため訪問した。

 その日はかかりつけの内科クリニックに連絡したが、(脳血管障害が疑われるので)大きな病院で診てもらうようにと言われた。母親が受診する病院がちょっと遠方なので、父親を受診させる余裕がなく、翌日の土曜日になった。

 患者さんは普通に歩いていて、明らかな四肢の麻痺はなかった。構語障害は1週間前の方がひどかったが、軽減しているという。すでに脳血管障害としての急性期は過ぎている。意識清明で、年齢を考慮すると構語障害といわれればそうだが、こんなものと思ってしまうかもしれない。

 頭部MRIで確認すると、右頭頂葉に一番大きな(といってもラクナ梗塞相当)梗塞巣を認めたが、左右の大脳半球と左右の小脳半球に小梗塞が散在している。

 聴診では心音は整かと思ったが、心電図を確認すると心房細動だった。f波がほとんど平坦になっていて年季の入った心房細動なのだろう。

 心腔内の血栓が細かくばらばらになって、脳塞栓を来したと考えられた。内臓の方にも飛び散ったのかもしれないが、症状はないので、造影CTで全身を検査するのは不要でいいか。(内科クリニックの処方に抗凝固薬はなかった)

 

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C型肝炎

2020年10月04日 | Weblog

 11月の市医師会講演会の座長を頼まれた。テーマは「C型肝炎・肝がん」で本来座長は当院の消化器科医になるが、現在も体調をみながらの診療をしているので、当方に回ってきたのだった。

 しばらく肝炎の勉強をしていないので、わかりやすいところで、jmed「肝炎 どう診る? どう治す?」(日本医事新報社)を購入して予習することにした。

 

 C型肝炎すべての症例が抗ウイルス療法の治療対象になる。慢性肝炎・代償性肝硬変、さらには2019年から非代償性肝硬変も対象になった。

 IFNフリー治療(=第2世代のDAA治療)の著効率が、慢性肝炎・代償性肝硬変では95%以上になり(100%近い)、非代償性肝硬変でも92%(Child-Pugh分類grade Bで95%、grade Cで80%)ある。(grade CでもChild-Pugh分類10~12点の症例のみで、13~15点の症例は含まれず)

 直接作用型抗ウイルス薬(DAA:direct-acting antivaral)は、プロテアーゼ阻害薬・NS5A阻害薬・ポリメラーゼ阻害薬の3群があり、NS5A阻害薬に、プロテアーゼ阻害薬あるいはポリメラーゼ阻害薬との併用治療になる。1剤だけではわずか数日でHCVに作用部位に変異が起こり耐性ウイルスになる。

 

 1. 慢性肝炎代償性肝硬変(Child-Pugh分類grade A)

 ゲノタイプ1型に対するIFNフリー治療は、ハーボニー(ソホスブビル/レジパスビル配合錠)グラジナ+エレルサ(グラゾプレビル/エルバスビル併用)マヴィレット(グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠)を推奨。(慢性肝炎に対するマヴィレットのみ8週間投与で、他は12週間投与)

 ゲノタイプ2型に対するIFNフリー治療は、ソバルディ(ソホスブビル)+レベトール(リバビリン)マヴィレット(グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠)ハーボニー(ソホスブビル/レジパスビル配合錠)を推奨。

 IFNフリー治療失敗症例に対しては、薬剤耐性変異を測定の上、マヴィレット12週間投与あるいはエプクルーサ+リバビリン24週間投与が推奨されている。

 注:ハーボニー、ソバルディ+リバビリン、エプクルーサ(+リバビリン)は、ソホスブビルを含んでいるため、重度腎障害eGFR<30ml/分/1.73m2または透析患者に対しては投与禁忌。

 2. 非代償性肝硬変(Child-Pugh分類grade B/C)

  非代償性肝硬変に対しては、エプクルーサ(ソホスブビル/ベルパタスビル)12週間投与が唯一の抗ウイルス治療。

 C型肝炎ウイルス消失≠肝疾患治癒 C型肝炎ウイルスが消失しても、肝がんの発癌リスクがあり、画像検査を中心として注意深いフォローアップが必要。

 

 

 非代償性肝硬変も治療できるようになっていたのは知らなかった。肝がんについても予習が必要だが、「肝癌診療マニュアル」(医学書院)を1か月で読むのは大変そうだ。

 

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大球性貧血

2020年10月03日 | Weblog

 水曜日に内科クリニックから、貧血で81歳男性が内科新患に紹介されてきた。内科の若い先生が担当していたが、Hb5.9g/dlでどうしましょうかと相談された。

 MCV132と大球性貧血だった。ここまで高いとビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が疑われる。胃切除の既往はなかった。悪性貧血だろうか。白血球2700と低下していたが、血小板は22.9万と正常域だった。白血球分画で芽球はない。

 診療情報提供書には鉄欠乏貧血とあったが、血清鉄やフェリチンを測定していたわけではない。MCVは気にしていなかったようだ。直腸指診では普通便でタール便はない。胸腹部CT(単純)も撮影していたが、明らかな異常は指摘できなかった。

 患者さんは一人暮らしで頼れる親族はいないようだ。ふらつきを感じることもあるというが、それほど困っていない。病院には自分で車を運転してきていた。認知障害はない。

 地域医療連携室に連絡して、これまでの検査結果を取り寄せてもらうと、昨年8月はHb11.4(MCV115)、そこから1年経過して今年の8月はHb7.5(MCV126)、9月28日がHb5.7(MCV132)だった。

 血清鉄・フェリチンは軽度高値だった。ビタミンB12 を静注して、金曜日に再検して悪化していなければ輸血なしで経過をみるものある。

 ところが、金曜日はHb4.8(MCV132)と低下してしまい、結局輸血を開始した。外注検査が案外早く結果が帰ってきて、血清ビタミンB12は267pg/ml(180-914)、血清葉酸5.0ng/dl(4.0以上)と正常域にはあった。

 血清ビタミンB12は正常域内でも低い方だと、ビタミンB12欠乏性貧血は否定できないらしいので、投与は継続して経過をみることにした。

 ビタミンB12欠乏性でなければ骨髄疾患になるので、血液内科のある病院に紹介するしかない。輸血して貧血が改善したところで外来受診になる。紹介するとなると、上下消化管内視鏡検査はしておいた方がいいか(上部消化管内視鏡+便潜血2日間でもいいかもしれないが)。

 

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器質化肺炎でいいのか

2020年10月02日 | Weblog

 現在88歳の女性は4年前から繰り返し肺炎で入退院を繰り返していた。計11回の入院になる。

 

 最初に入院した時は、右中葉の肺炎として普通にセフトリアキソンを投与して、解熱軽快して、炎症反応も陰性化した。

 その後も繰り返して肺炎で入院するようになり、右中葉と左舌区の陰影が出没した。いずれもセフトリアキソンを投与すると、解熱して炎症反応が軽快・陰性化したので、治療としては何も困らなかった。何度か入院するうちに、喀痰培養を提出するとMRSAが検出されるようになったが、臨床的には定着菌と判断される。

 繰り返す原因としては、年齢的に誤嚥性の要素があるのだろうと判断された。ただし入院中は明らかな誤嚥はなく、入院当日から普通に食事摂取していた。

 右肺炎で入院して、解熱軽快しているのに、確認の胸部X線で左肺炎が出現したことがあり、奇異な印象をもった。べったりとした浸潤影が常に残っていて、体積として増加したり少し減少したりを繰り返した。

 呼吸器科の先生(大学病院からバイト)に相談した。器質化肺炎ではないでしょうか、訊いてみた。

 気管支拡張症もあり、非結核性抗酸菌症が持続感染していて、通常の細菌性肺炎併発の部分が抗菌薬(セフトリアキソン)で軽快治癒するのではないかと言われた。そうかもしれないと思われたが、抗酸菌塗抹検査も繰り返しても陰性だった。

 

 今回は8月に肺炎として入院して、いつもの?セフトリアキソンで軽快した。退院日を決めようとしていたが、転倒して背部痛が出現した。胸腰椎MRIで第12胸椎の圧迫骨折を生じていた。

 年齢もあり、へたをするとそのまま寝たきりになるかと思われたが、アセトアミノフェン+NSAID(セレコックス)で1週間後から疼痛が軽減して、動けるようになった。

 後はリハビリをしてと思っていたが、9月に入ってから痰が増加したという訴えがあった。ほとんど発熱がなかったが、白血球9900・CRP14.2と炎症反応の上昇を認めた。

 いつもの?セフトリアキソンを再開したが、発熱はないもののCRP20.1と、初めてセフトリアキソンに反応しなかった。院内肺炎の形なので、抗菌薬をもっとbroadにすることも考えた(ゾシンかカルバペネムになる)。

 しかし、細菌性肺炎の悪化という印象がまったくなかった。以前から器質化肺炎を疑っていて、ステロイドの治療をしてみたいと考えていたので、今回はステロイドに対する反応をみることにした。

 痩せた小柄な老女なので、プレドニン20mg/日で開始した。4日後の検査で白血球6100・CRP1.7t著明な改善を認めた。この反応も細菌性らしくない。

 初期量で14日継続した後は、CRP0.2となった。胸部CTで見ると、浸潤影も軽快してきていた。(セフトリアキソンは7日投与で中止している)

 

 その後、プレドニンを15mg/日に漸減した。もう少し入院で診たかったが、これまでのケアハウス(食事付きアパート)からもっと介護のできる施設(グループホーム)に移ることが決まっていたので、外来で継続することにした。

 本来は呼吸器内科のある病院に紹介して、気管支鏡検査で診断確定してもらいたいところだが、患者さんはまったく行く気がない。慎重に当院内科外来で経過をみることにした。

 この患者さんは、膵嚢胞性疾患・特発性(自己免疫性)血小板減少性紫斑病がある。さらに3年前にリウマチ性多発筋痛症になり、プレドニンを投与していた。プレドニンを投与していた期間は肺炎で入院していないことも、免疫性がらみのステロイドの効く肺炎ではないかと疑うきっかけになった。

 軽度の糖尿病があり、ステロイド投与で血糖上昇が危惧される。またステロイドで骨粗鬆症・骨折のリスクが高まってしまう。今後も油断できないのだった。勉強になる患者さんだが、診るのは大変。

 

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