なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

末梢静脈からの血流感染症

2020年10月23日 | Weblog

 今月半ばに64歳男性が食欲不振・ふらつきで受診して、再入院していた。

 

 5月に入院した時は、勤め先の社長が解雇を告げるために家を訪問して、動けなくなっているのを発見したという経緯だった。コロナの影響で自宅待機となっていたが、1か月家でほとんど食べず、水ばかり飲んでいたそうだ。内科の若い先生が担当した。

 もともと下痢しやすいが(過敏性腸症候群下痢型か)、水ばかり飲んでいたので、下痢が続いた。血清カリウムが1.8mEq/Lと著しい低カリウム血症(腎前性腎不全も)もあった。大酒家だが、酒も買えないので肝機能はほぼ正常だった。

 入院後は点滴とカリウム補正を行って、順調に改善した。要は食事が提供されれば、普通に食べられるのだった。生活保護に申請・認定をして1か月ちょっといて退院した。

 

 今回は血清カリウム3.1で低カリウム血症は軽度だった。生活保護でお金があり、日本酒を飲んでいたため、アルコール性肝障害を認めた。点滴で経過をみて、すぐに食事摂取できるようになった。

 今週始めに突然40℃の発熱があり、悪寒(戦慄も?)もあった。今回も同じ若い先生が担当していて、血液培養2セットなど培養を提出した。

 抗菌薬について相談された。肺炎はなく、尿路感染症・胆道感染症も否定的だった。関節炎・皮膚軟部組織感染症らしさもない。肝臓画像上は脂肪肝で肝硬変とはいえず、腹水もない。心雑音もない。発熱以外のバイタルは安定していた。

 病室に患者さんを診に行ったが、アセリオ点滴静注で解熱していて、普通に会話もできる。末梢静脈からの点滴で刺入部に痛みや発赤はない。

 重症感がないので、院内感染としてはカルバペネムやゾシン(PIPC/TAZ)を入れる感じではなかった。セフトリアキソンで治療を開始して、培養待ちとした。

 抗菌薬開始後に解熱して、経過は良好だった。病棟の看護師さんが、右前腕の肘関節近くから入っている点滴の刺入部が腫脹しているのに気付いた。差し替えとして、そこのサーフロー針を抜去したが、刺入部周囲が発赤して硬くなっていた。痛くなかったのかと訊いても、そういえば痛いようなとのんびりした返事が返ってきた。

 血液培養2セットから表皮ブドウ球菌が検出された。通常、表皮ブドウ球菌などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌はほとんど(90%)がメチシリン耐性(MRCNS)で、バンコマイシンを使用することになるが、今回の菌は耐性ではなかった。ペニシリンはR(耐性)だが、セフェム系は普通にS(感受性あり)。

 結果的には、末梢カテーテル(穿刺針だが)関連血流感染症だった。末梢の点滴でも刺入部からの感染に注意と言われているが、大抵は漏れてしまうので、抜去・差し替えになり、あまり問題にならないだけなのだろう。

 今日も病室に診に行った。抜去した部位はまだ発赤が残っていたが、元気だった。 

 

 水曜日から、感染症学会・化学療法学会の(東日本)合同学会をwebで視聴している。時々音声が途切れたりはするが、問題なく見れる。

 医局で見ているので、若い先生から相談されたり、病室から呼ばれたりして途切れ途切れにはなる。会議は学会web参加中ということで免除してもらった(ちょうどCOVID-19のセッションだった)。

 

コメント
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