なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

急性膵炎

2020年10月28日 | Weblog

 昨日の火曜日に、内科新患を診ていた若い先生から、腹痛で受診した48歳男性を相談された。

 

 一昨日の日曜日の夜(午後11時ごろ)から腹痛が続いていた。部位は臍部の右下から右下腹部だった。月曜日に内科新患(大学病院からのバイトの先生担当)を受診した。

 内臓脂肪の多い腹部で所見が取りにくい。圧痛はあるが、腹膜刺激症状はないと判断された。腹部X線では異常がなく(腹部単純での判断は無理)、白血球14700・CRP1.1と炎症の初期像を呈していた。

 肝機能障害があるが、血清アミラーゼは正常域だった。虫垂炎・腸炎・胆嚢炎が疑われるという記載があった。痛みは落ち着いているということで、抗菌薬内服で経過観察とされた。

 

 その後も腹痛が続き、翌日の火曜日に受診したという経緯だった。遠慮がちな患者さんで夜間に再受診することもなく、我慢していたようだ。

 血液検査では、白血球15700・CRP26.7と炎症反応が上昇したいた。若い先生が腹部単純CTを撮影して、膵頭部が腫脹しているように見えると放射線技師さんから指摘されていた。膵頭部周囲の脂肪織に炎症像があり、右下腹部の上行結腸まで及んでいた。

 肝臓は著明な脂肪肝を呈していたが、胆道系に異常は認めなかった。血清アミラーゼは正常域だった。何故上がらないのだろうか。

 アルコール摂取を訊くと、ビールを少し飲むが、ここ1週間は飲んでいないという。肝機能障害は過栄養性の脂肪肝で説明がつく。糖尿病(HbA1c7.8%)もあり、健診で脂肪肝とともに指摘されていたようだが、現在休職中で治療は受けていない。

 造影CTを追加した。膵頭部は腫脹して、十二指腸の水平脚の壁肥厚と拡張を認めて、その後腹膜側にも炎症像がある。

 腹痛は月曜日の方が強く感じたという。立派な腹部で所見が取りにくく、腹膜刺激症状と言い難いが、歩くと腹部に響くので腹膜刺激症状ありなのだろう。

 入院して保存的治療で経過をみて治まるのかもしれないが、原因がわからないのと、年齢が比較的若いので、専門医のそろった病院で診てもらう方がよいと判断された(消化器科医にも相談したが、紹介した方がいい言われた)。

 

 別の若い先生の中心静脈カテーテル挿入の立ち合いなどもあり、外来担当の先生に地域の基幹病院消化器内科に連絡するよう伝えた。

 その後、連絡がきて、ベット満床で受け入れできないと言われましたという。別の病院に当たるよう3か所の病院を教えた。その先生(内科専攻医)のホスト病院である医療センターにも連絡したが、現在膵疾患をみる体制が弱く、大学病院にお願いしていると言われたそうだ。結局大学病院で診てもらえることになりましたと、報告がきた。

 大学病院は大袈裟かなあとも思った。消化器科医のここから悪化して来るはずという意見もあるので、急性期はお願いした方がいいのだろう。もし保存的治療で軽快してくれば、その後は当院ですぐに引き取ります。

 

コメント
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