なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

製薬メーカーのプレゼンテーション

2020年10月18日 | Weblog

 火曜日に仕事が終わってから、製薬メーカーの支社に行った。自社製品のプレゼンテーションの評価をしてほしいということだった。

 前回は当院の循環器科の先生にお願いしています、と言われたので、これも経験かと思って引き受けた。その先生は気さくで明るい性格で、いかにも頼みやすい方だった。当方は、気さくで明るい性格ではないが、怒ったりはしないので、頼みやすい(御しやすい?)と思われたのだろうか。

 製薬メーカーは「興和」で、製品は糖尿病のSGLT2阻害薬のデベルザ(トホグリフロジン)と脂質異常症治療薬の選択的PPARαモジュレーターのパルモディア(ぺマフィブラート)だった。それぞれを若手のMR2名が病院の説明会でプレゼンテーションする、という設定で行われる。

 

 女性社員がデベルザのプレゼンテーションを行った。真面目なプレゼンテーションで問題はないが、メリハリがあまりないので、伝わりにくい気がする。

 初めて知ったが、製薬メーカーのスライドは会社で制作して監査を受けていて、手作りのスライドを混ぜたりはできないそうだ。また他の製薬メーカーや他社製品をけなしたりはできない。

 折れ線グラフや棒グラフのきれいなスライドだが、印象には残りにくい。客観的なデータを示さざるを得ないが、要するにこうですというスライドが入れられない。

 昼休みなどに病院の説明会に出て、そんなに一生懸命聴く医者もそういないだろう。ある程度面白みが必要になる。要するにこういうことです、と口頭で言うように勧めた。

 SGLT2阻害薬はスーグラ・フォシーガ・ルセフィ・デベルザ・カナグル・ジャディアンスと6種類出ている。教科書的には「SGLT2阻害薬の心血管予防効果・心不全予防効果・腎症伸展予防効果はクラスエフェクトであると考えられている」(そこが知りたい!糖尿病診療マニュアル)とされている。

 ジャディアンス・カナグル・フォシーガは欧米の大規模臨床試験を行っていて、明らかなエビデンスが証明されている。デベルザは日本国内だけの販売なので、大規模臨床試験はない。

 デベルザの「売り」は、半減期が5.4時間と一番短いことで、夜間の低血糖・夜間の尿糖排泄(=頻尿)が少ない。そこを強調して、「高齢者にやさしいSGLT2阻害薬」として宣伝するのがいいんじゃないですか、と伝えた。もっとも、比較していた半減期が長いスーグラも、思ったほど夜間の尿糖排泄は多くないのだった。

 

 1時間の予定が、デベルザで1時間近くなってしまった(依頼された時はデベルザの話だけと聞いていた)。若い男性社員がさっとパルモディアのプレゼンターションをした。

 こちらの製品は、高中性脂肪血症に対して唯一といっていいような新薬なので、宣伝はしやすいはずだ。この薬があることを伝えれば、たぶん使ってもらえる。

 当方は新患を診ていないので、健診で指摘された高中性脂肪血症の治療を開始することはあまりない。これまでのフィブラート系薬剤を使用していた患者さんで、中性脂肪の下がりが悪い時に、パルモディアに変更している。変更後はより改善している。

 

 1時間半弱で、お弁当を持たされて帰ってきた。医師にプレゼンテーションの感想を聞いて、改善点を探すというのは、いいやり方だと思う。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする