なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

アルコール性肝硬変、肝性脳症

2019年12月18日 | Weblog

 先週、山間の町の診療所から54歳男性が紹介されてきた。ふらつきがあって動けなくなり、食事摂取も低下しているという。アルコール性肝硬変・肝性脳症がある。

 もともとアルコール多飲があったが、昨年末から失業したのをきっかけにさらに飲酒量が増加していた。アルコール性肝硬変・肝性脳症に感染症を併発して、瀕死の状態で地域の基幹病院消化器内科に救急搬入された。

 治療により何とか回復したが、(アルコール性)運動失調・下肢のしびれもあり、うまく歩行できなかった。2月にリハビリ目的で当院に転院した。1か月ちょっとの入院で歩行できるようになって自宅退院した。

 母親と二人暮らしで、当院や基幹病院への通院ができないので(車で送ってくれる人がいない)、地元の町の診療所で治療継続としていた。下肢の浮腫があり、診療所で利尿薬を追加されたのをきっかけに(もともとのスピロノラクトンにループ利尿薬を追加)、肝性脳症が悪化して、1か月後に再入院した。

 腹水貯留はないので、下肢の浮腫は許容して、ループ利尿薬を休止した。肝性脳症が軽快~増悪を繰り返したが、1か月後に退院した。その後は紹介もなかったので、患者さんのことはほとんど忘れていた。

 そして今回の入院だが、約8か月入院に至らずに過ごしたので(退院時はすぐの再入院もやむなしと判断していた)、よくもった方だろう。今回も利尿薬が再処方されていた(利尿薬追加h控える様には伝えていた)。ラシックス40mg・ダイアート30mgの2種類が入っていた。

 悪化の原因が利尿薬の追加と判断された。腹水はないころから、まずラシックスを中止して、ダイアートも中止したばかりだった。昨夜から病室内をふらふらと歩きまわり、意識消失に陥った。バイタルは安定していたが、朝に診た時は目を開けなかった。点滴とアミノ酸製剤を開始した。

 昼前には意識が戻って(アミノ酸製剤が500ml中200mlくらい入ったところ)、昼食を半分食べた。夕方にはベット上にすわっていた。軽度の腎障害があるので、それに注意してアミノ酸製剤の点滴を継続するとにした。

 炎症反応は陰性で、肝機能障害はほとんど目立たない。血清総ビリルビンは5mg/dl程度、血清アンモニアは150程度で、この患者さんとしては普段の値だった。アンモニアの値だけで肝性脳症の判断はできないので(他の指標は測定できない)、肝性脳症の悪化ではいいのだろう。

 入院する時は母親と姉妹が来ていて、とにかく病院で預かって下さいと頼まれた。内服薬は、リーバクト・モニラック(ジェネリック)・リフキシマが入っていて、これで限界だろう。自分で酒を買いに行けないので、飲酒はしていない。

 通常アルコール性だと、禁酒による軽快が期待されるが、閾値を越えたところまで悪化すると、改善はしないようだ。

 

 

コメント (1)
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