日曜日の日直は消化器科医だった。31歳女性が心窩部痛で救急外来を受診していた。朝から痛かったが、職場(衣料品店)に出勤した。痛みが続いたので早退して、午後に持続痛になってから受診した。
腹部は平坦・軟で心窩部に圧痛を認めた。腹膜刺激症状はなかった。虫垂炎も考慮して右下腹部を丁寧に診察したが、圧痛はなかった。血液検査では、白血球15600・CRP0.1と急性期のパターンだった。腹部CT(単純)を行ったが、特に異常はなかった(と思った)。
アセリオ注でも痛みが軽減はするが、続いているので入院にした。9月にも同様の症状で救急外来を受診していて、その時も同じ医師が診察していたが、アセリオ注で症状が軽快して、その後は治まっていた。
翌月曜になって、痛みを感じる部位が右下腹部痛に変わった。その日腹部エコー検査を入れていて、超音波検査担当の検査技師さんから、虫垂炎ではという指摘があった。
朝から外来~検査と忙しく飛びまわっていた消化器科医が改めて診察すると、右下腹部に圧痛を認めた。前日の腹部CTを見直すと、通常のCTスライスではほとんど短軸像なのでわかりにくいが、冠状断ではちゃんと腫脹した虫垂を指摘できた。虫垂は盲腸からいったん内側に出て、下向きから外側にくるっと回って上行結腸内側に沿って上行していた。
夕方に外科コンサルトして、診察の結果は「緊急性はないでしょう」ということで、今日手術予定となった(準緊急くらいといっていた)。
放射線科の読影レポートでも、臨床情報が心窩部痛精査になっていたせいか、虫垂炎は指摘されていなかった。経過も画像所見も後からみれば典型的だが、ちょっとわかりにくい経過だった。