なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

過活動性膀胱

2019年12月11日 | Weblog

 火曜日の夜に、市医師会の講演会があった。講師は泌尿器科医でテーマは「過活動性性膀胱」だった。

 

 過活動性膀胱overactive bladder(OAB):診断と治療のコツ

 過活動性膀胱の定義: 1.尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群 2.通常は頻尿と夜間頻尿を伴う(切迫性尿失禁は必須の症状ではない) 3.局所的病態を除く(膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路感染)

 頻尿の一部に尿意切迫感があり、切迫性尿失禁の一部に切迫性尿失禁があるという関係。頻尿だけでは過活動性膀胱とはいわない。

 尿意切迫感(urgency)とは、1.急に起こる 2.抑えきれないような強い尿意 3.我慢するのが困難な愁訴。正常者が尿意を長く我慢した際に感じる強い尿意(urge)とは異なる(通常の人は尿意切迫感を感じない) 切迫性尿失禁は、尿意切迫感と同時にまたは直後に不随意に起こる失禁。

 患者さんは頻尿・夜間頻尿・尿失禁を主訴に来院する。尿意切迫感を訴えることは少ない。問診する(尿意切迫感があるか訊く)、あるいはOABSS(OAB症状スコア質問票)を使用する。夜間の尿量が多い人は違う(日本人の膀胱容量は300ml)。

 過活動性膀胱があるとQOLが低下して、治療を受けるとQOLが向上する。切迫性尿失禁を伴う女性は転倒、骨折のリスクが高い。転倒は夜間に多く、転倒するのは排尿に行く時だから。

 女性よりも男性の受診率が高い。前立腺肥大と思って受診すること、泌尿器科受診のハードルが女性よりも低い(泌尿器科は性病科と思っている、恥ずかしいと思っているなど)。患者さんが治療を受けたいという思う場所(医療機関)は、かかりつけ医(68.8%)、泌尿器科医(14.3%)、婦人科(7.0%)の順で、かかりつけ医で「(排尿で)困っていませんか?」と訊くことが大事。

 年齢とともに有病率が高くなる。40歳以上では7人に1人が過活動性膀胱で、高齢者はさらに高い。

 治療には、一般医科向けガイドラインがある。まず尿検査を行って、血尿があれば精査を要する。また膿尿があれば膀胱炎として抗菌薬治療を要する。血尿・膿尿がなくて、残尿が100ml以下は治療してもよいが、残尿が100ml以上あると治療で尿閉になることがあり泌尿器科へ回す。

 超音波による簡単な残尿測定は、残尿量=0.5×a×b×cで計算。膀胱の横断像の前後径がaで、左右径がbで、矢状断像の前後径がc。

 男性で50歳以下は背景疾患(神経疾患、脊椎管狭窄症、前立腺炎)の可能性があり、専門医に紹介する。50歳以上では、残尿症状や前立腺肥大があれば専門医紹介で、なければ一般医家で治療してよい(α1遮断薬)。

 抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)は作用は強いが、副作用として口渇・便秘・尿閉がある(長期投与で認知症?)。(アステラスのベシケア5㎎1日1回など)

 高齢者ではβ3受容体アドレナリン受容体作動薬が上記の副作用が少なく、使いやすい。(アステラスのベタニス50㎎1日1回) 1.口渇・便秘のある症例、2.抗コリン薬で副作用が生じた症例、3.認知機能低下が出現している症例では、ベタニスを使用する。

 無治療の前立腺肥大症の中高年男性では、α1遮断薬から使用する。タムスロシン、シロドシンなど。

 前立腺肥大では、前立腺の大きさと症状は一致しない。前立腺が小さくとも尿道が狭いと尿が出にくい。高齢男性ではα1遮断薬をまず使ってみる。過活動性膀胱も3割方良くなる。(これは知らなかった)  

 

 講師は、以前当院消化器科に勤務していた女性医師の配偶者だ。消化器科医から、その日は行けないが、女性医師は今どうしているか、きいてきてほしいとも言われていた。7年間前に突然発症してびっくりした。大学病院で治療して、少し後遺症は残ったが、現在は元気に過ごしているそうだ。「バイトくらいしてもいいのではと言っているが、主婦業を楽しそうにやっているので」、ということだった。

 講演会はアステラスの共催(ベタニスの宣伝)。一般医家にもわかりやすいいい講演で、行って良かった。ベタニスは使ってみよう。

 

 

 

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