11月30日・12月1日と臨床リウマチ学会に行ってきた。そもそも以前の「慢性関節リウマチ」という呼称は、2002年に学会が「関節リウマチ」と呼称変更して、2006年に厚生労働省も「関節リウマチ」に変更していた。
関節リウマチの免疫異常に作用して活動性を抑えて、骨破壊の抑制や予後を改善させる薬剤が、疾患修飾性抗リウマチ薬disease-modifying antirheumatic drugs:DMARDs)。DMARDsは従来型DMARs(conventional synthetic DMARDs:csDMARDs)のメトトレキサート(MTX)・サラゾフルファピリジン(SASP)・ブシラミン(BUC)・イグラモチド(IGU)、と生物学的製剤biological DMARDs(bDMARs)のインフリキシマブ・エタネルセプト・アダリズマブ・ゴリムマブ・セルトリスマブペゴル。
そもそもこの辺から理解する必要があるという程度なので、基本的にリウマチ膠原病は診断できれば、あるいは疑えれば専門医に紹介としている。専門病院への通院が大変になったのでと紹介された、MTX治療を継続している高齢の関節リウマチ患者さんを診ているくらいだ。リウマチ性多発筋痛症(PMR)は数例診ている(RS3PEも)。
たぶん行くのは最初で最後の学会だが、業界の雰囲気が少しわかった気がしたので、行ってよかったと思う。
高齢関節リウマチ治療の最適化
関節リウマチ患者の年齢中央値は69歳(後期高齢者が30%)。(中年で発症した)関節リウマチ患者の高齢化と、発症年齢の高齢化による。高齢発症関節リウマチは、1)高疾患活動性が多い、2)予後不良因子を複数もつことが多い、3)関節破壊が早い、という問題がある。治療にMTX(メトトレキサート)や生物学的製剤(bDMARDs)を要するが、合併症(CKDなど)の問題で使用しがたい。
高齢者では、(中年のような職業を継続するという目標ではなく)身体的・精神的・社会的フレイルの進行抑制、社会生活参加の継続が目標になる。
治療は80%がMTX、40%が生物学的製剤を使用している。今後の課題として、1)ステロイド、・NSAIDsの漸減・中止、2)MTXの減量、3)生物学的製剤の減量・投与間隔の延長がある。
実際、ステロイドは使用は60%から30%になって、投与量も平均5mg/日から4mg/日へ減量されている。しかし罹患年数が多いと50%で使用されている。MTXは使用量が平均8mg/日以下が多くなる(加齢でeGFRが低下するため)。
加齢とともにMTX投与量は減量・中止となり、生物学的製剤の単剤での寛解維持もある。ただし高度疾患活動性の身体機能低下例はステロイド併用を要するが、感染症の頻度を増加させる。
今後のRA治療における経口DMARDの役割を考える
75歳以上ではMTX・生物学的製剤の投与は少なく、MTX投与量も6mg/日と少な目になる。生物学的製剤を使用しないMTX+csDMARDsや、csDMARDs単剤(イグラモチドIGU、サラゾスルファピリジンSASP、ブシラミンBUC)の治療も行われる。(csDMARD:conventional synsthetic DMARDs従来型DMARDs)
免疫抑制療法の軽減により、日和見感染、免疫不全関連リンパ増殖性疾患の発症が減少する。非結核性抗酸菌症(NTM)の発症時はMTX減量してcsDMARDsの投与で、NTMを改善してRA治療を良好にできる。免疫不全関連リンパ増殖性疾患はMTX2年以上・累積投与量2000mg以上の高齢者に多い(節外性病変が多い)。MTX中止後に自然消褪例が多いが、化学療法を要する例もある。
MTX・生物学的製剤により寛解が達成できて、寛解を長期維持できれば、生物学的製剤の中止・MTXの減量中止を考慮する。その際にcsDMARDsを使用すると、MTX・生物学的製剤の減量をはかることができる。
csDMARDとしてはイグラモチドを使用するという内容だったが、これは販売している会社のスポンサードレクチャーだから。臨床リウマチ学会はこのスポンサードレクチャーがやたらと多いのが特徴。
膠原病診療における自己抗体検査の活用法
膠原病の自己抗体測定は、1)診断の補助、2)病型分類、3)疾患活動性や治療効果の評価、に使用する。
・全身性硬化症(SSc) 抗Scl-70抗体:びまん性皮膚硬化、間質性肺炎。抗セントロメア抗体:限局性皮膚硬化、CREST症候群。抗RNAポリメラーゼ抗体Ⅲ抗体:びまん性皮膚硬化(急速に皮膚硬化が進行)、強皮症腎クリーゼ(20%)。強皮症腎クリーゼ(Scleroderma renal crisis:SRC)は悪性高血圧と急速進行性腎機能障害を呈する。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)で改善。pareneoplastic SSc(診断時、10~20%に悪性腫瘍)。
・多発性筋炎 抗ARS抗体:間質性肺炎(NPIPパターン)。抗MDA5抗体:無筋症性皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis:ADM)で、急速進行性間質性肺炎をきたす。抗TIF-γ抗体:悪性腫瘍を併発(40歳以上で72%、60歳以上で85%)。抗Mi-2抗体:ステロイドの反応性は良好だが、再発しやすい。(抗Mi-2抗体と抗TIF-γ抗体は交差反応を起こす) 抗SRP抗体:免疫介在性壊死性ミオパチー。
RA治療におけるリスクマネージメント(肺感染症)
RAに潜む感染症発症リスク 1.リウマチ患者の免疫異常(Tリンパ球の病原体認識低下) 2.疾患活動性の高いリウマチ患者では重症感染症リスクが高い(CRP0.05を保つ)、3.リウマチ関連肺疾患による感染症(10%に合併する間質性肺炎では、肺炎が発症しやすく、肺癌の発生しやすい。気腫合併間質性肺炎は上葉に気腫性病変、下葉に線維化病変があり、肺癌リスクが50%と高い。)、4.リウマチ治療の免疫抑制薬による特殊な感染症(結核特に播種性結核、非結核性抗酸菌症、Pneumocystis jiroveciを含む真菌症、細胞内寄生菌。bDMARDsによる感染症は治療開始から6か月~1年での発症が多い。bMARDs間で感染症発症リスクに差はない。)
感染症発症リスクのチェック 胸部X線・胸部CT(HRCT)、白血球分画(好中球・リンパ球)・ステロイド長期服用歴、HBc抗体、IGRA。結核は肺外結核の頻度が高い。
膠原病を見逃さない皮疹の意味とコツ
全身性硬化症 1.レイノー現象、手の潮紅、2.手のむくみ感(手指が厚ぼったく触れる、PIPのシワが厚い)、3.爪上皮出血点、4.指尖部虫食い状瘢痕、5.毛細血管拡張。
皮膚筋炎 1.爪上皮出血点・爪囲紅斑、2.ゴットロン潮紅、3.メカニクスハンズ(指の横の角化)、4.ヘリオトロープ疹・顔面紅斑、5.掻痒の強い掻把性皮膚炎。
SLE 1.蝶形紅斑・耳介紅斑、2.手掌や手指の滲出性紅斑、3.粘膜潰瘍(硬口蓋の海洋が特徴的)、4.非瘢痕性脱毛、5.繁盛丘疹上位ループス。
シェーグレン症候群 16%に皮膚症状。1.再発性遠心性環状紅斑(特異的、急性)、2.指節性紅斑(非特異的、急性)、3.蕁麻疹様血管炎・皮膚血管炎(非特異的、急性) 皮疹を有するシェーグレン症候群は全身性臓器障害を伴う。
文章にするとわかりにくいが、多数のスライドで膠原病の皮疹が見られてよかった。リウマチ膠原病の皮疹のアトラスが出ていので購入してみよう。