なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

無症候性細菌尿

2019年11月15日 | Weblog

 内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に相談された。91歳女性が尿路感染症(急性腎盂腎炎)で入院していた。抗菌薬(セフトリアキソン)を開始して、翌日から解熱して炎症反応も軽快していた。

 治療に何の問題もなさそうだが、尿培養からEnterococcus faeciumが検出されていた。臨床的にはセフトリアキソンで軽快しているが、検出菌に感受性がないので、替えた方がいいでしょうかということだった。

 腸球菌にセフェム系は効かない(内因性耐性)ので、尿路には抗菌薬が高濃度で入るので、感受性がないと判定されても実際は効くということもないはずだ。

 尿カテーテルの留置はないが、尿路感染症で何度も入院している。尿のグラム染色ではグラム陽性球菌だけで、培養でEnterococcus faeciumだけが検出されている。たとえば大腸菌と腸球菌が検出されて、起炎菌は大腸菌で、腸球菌は定着菌が混じっただけという解釈もできない。補液による尿量増加と免疫力で軽快したというのも考えにくい。

 「高齢者では、2~4人に1人は治療の必要のない無症候性細菌尿をもっているものです。よって高齢者の尿路感染症は除外診断とかんがえましょう。」と岸田直樹先生の本にある。

 入院時の胸部X線・胸腹部CTを見返すと、両側肺の背側に浸潤影と胸水貯留がある。これまでの画像を見返すと、7月に尿路感染症として入院した時には、左肺炎があり、セフトリアキソン投与で順調に軽快している。この時の尿培養からはKlebsiella pneumoniaeが検出されて、セフトリアキソンは感受性があった。

 

 これは無症候性細菌尿があり、肺炎による高熱で入院して、尿路感染症と思って投与したセフトリアキソンで肺炎が軽快したということだろう。今回は前回なかった右肺の所見もあり、やはり肺炎(誤嚥性肺炎だろう)による高熱だったようだ。

 フォローの尿検査を追加すると(無症候性)細菌尿はまったく変わっていなかった。セフトリアキソンを1週間投与して、さっと中止したいところだ(細菌尿が症候性にならないように)。

 

 

コメント (1)
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