なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

原因は腹部でした

2019年11月12日 | Weblog

 昨日の午後5時ごろに隣町の病院から、肺炎疑いの86歳男性を紹介したい連絡が入った。酸素吸入はいらない程度だという。

 午後6時過ぎに家族の車で来院した。2~3日前から動けなくなり、息子さんが抱えて車から降ろした。これは救急搬送の方が良かった。

 1週間前から発熱があり、そちらの病院を受診していた。診療情報提供書にインフルエンザ迅速試験陰性と記載があるが、現在流行はしていない。発熱が続いて、食欲不振・体動困難となってその日再受診していた。白血球増加・CRP高値の記載はあるが、胸部X腺の所見はない(撮らなかった?)。

 来院して診察すると、意識は清明で会話は普通にできる。血圧110程度で高血圧症の既往があり、脱水症で少し低下しているかもしれないが、ショックではない。発熱以外の症状を訊くと、ないと言う。胸部聴診で所見はとれなかった。発熱38℃だが、酸素飽和度は正常域だった。

 当院で胸部X線・胸腹部CTで確認すると、確かに両側肺に淡い浸潤影はあり、胸水も軽度に貯留している。心不全ではないので、肺炎随伴性胸水だろうか。そこまでは想定内だったが、右下腹部に炎症像がある。

 上行結腸の内側から正中に向かって腫大した虫垂と思われる構造があり、壁は一部途切れている。周囲の脂肪織に炎症が波及しているようだ。虫垂炎なのか。白血球数14700・CRP39.0とかなりの高値だった。

 改めて腹痛について訊くと、やはり痛くないという。再度腹部を診察したが、右下腹部を圧迫しても痛くないと言ったり少し痛いと言ったりする。なんだか腹膜炎の人らしくなかった。高齢者だから?。午後7時過ぎで外科医はもういなかった。

 家族に、肺炎もあるが腹膜炎を疑うので、明日外科医と相談すると伝えて、とりあえず内科入院とした。脱水による腎機能障害が軽度にあり、造影CTは翌日に点滴による腎機能は軽快をみて再検とした。肺炎にセフトリアキソンを使用する予定だったが、腹膜炎を考慮してスルバシリン(ABPC/SBT)に変更した。

 今日は解熱して昨日より表情がよくなっていた。充分に長く話ができる状態で、再度病歴をとり直した。そういえば先週3~4日腹痛があったと言う。本人の解釈は「かりんとうを食べたせいだと思った」とのこと。家族(奥さん)に確認するとやはり、そういえば先週に腹が痛いと言っていたようなという。

 外科病棟に行って昨日の当番だった外科医に相談した。CTの画像を見て、造影CTを追加したところで診に行きますという。補液で腎機能が改善していたので、造影CTを予定した。

 その後外科医が病室に来て、放射線科医にも診てもらって虫垂炎の穿孔と確認できたので、造影CTは不要と言われた。外科医の診察では、腹部圧迫がぐっと強くて、明らかに圧痛ありと判断された(内科のへなちょこ診察とは違う)。肺炎はあるが軽度なので、今日の午後に手術する方針となった。

 今日は白血球数12300・CRP27.7と軽減していたが、これは脱水が改善したためだろう(Hb15.8から13.9へ)。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする