なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

インド人

2018年06月14日 | Weblog

 朝病院に来ると、昨日の当直だった内科の若い先生に相談された。午前1時過ぎに23歳男性が前日からの高熱と嘔吐で受診したという。患者さんはインド人だった。

 隣の市にある工場に技術研修のために一昨日来たばかりだった。その工場自体が大手自動車会社の下請け会社だが、さらにインドに工場を建設しているそうだ。部品の輸送費がかかっても、現地の工場生産の方が人件費の関係で経済的なのだろう。

 腹痛や下痢はない。最初は腹部症状に乏しくても、腸チフスも考えるべきかと思った。熱の原因はわかりませんと言われたが、胸部X線で左胸水があるので、普通に考えれば胸膜炎の発熱になる。

 胸部CTを見ると、上葉まで胸膜肥厚があり、その点では慢性の経過が疑われた。ちょうど大学病院から呼吸器外来に来てもらっている先生(感染症科所属)が来たので、経緯をお話して画像を見てもらった。まず結核性胸膜炎でしょうという。胸水だけではなかなか結核と診断できないので胸膜生検が必要になるかもしれないとも言われた。外来が終わったら、今日は胸腔穿刺まで行って、来週大学病院で胸膜生検をするかというところまで、話がまとまった。

 言葉は何語なのかわからないが、英語もある程度わかるらしい。実際は、いっしょに来ていた日本語のわかるインド人が間に入っての問診・診察になった。そのうちに工場の方(日本人)が書類を持ってきた。インドのドクターが記載しているが、診断書というよりカルテ記録の一部と処方のみだった。結核性胸水貯留(tuberculous pleural effusion)とあるから、結核性胸膜炎だ。肺外結核で非感染性と記載があり、抗結核薬4剤が処方されていた。

 解熱薬や点滴で少し体調が良くなった患者さん本人に訊くと(通訳を介して)、病院で胸水があり結核といわれていた。抗結核薬を処方されて今月から内服を開始していた。

 外来が終わった感染症科の先生に、結核の治療をしていたことをお話して、病室にも来てもらった。おそらく発熱・嘔気嘔吐は抗結核薬の副作用だろうということだった。当面は点滴や解熱薬で経過をみていいそうだ。内服して間がないので、数日休むのは問題ない(まだ耐性菌になる可能性がない)、それから副作用を考慮して種類や量を調整して、短期間に規定の種類・量にもっていくことにしましょう、となった。

 しかし患者さんは帰国して自国で治療を受けたいと希望された。会社側でもそうしたいという。今度は航空機に搭乗していいかということになった。保健所に連絡すると、喀痰塗抹が陰性で、抗結核薬を2週間内服していれば、マスク(サージカルで可)をさせて搭乗可能とされている、と返事が来た。塗抹は陰性だった。

 インドでは結核発病者は284万人で世界最多だ。多剤耐性結核菌もあり、可能であれば感受性試験を要する。検査した病院ではどの程度の検査しているか不明だ。画像だけでエンピリックに治療を開始した可能性もある。治療を開始したばかりの状態で、日本に行くことを許可したらしいが、大丈夫なのか(common disease扱い?)。

 

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