なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

内科学会地方会生涯教育講演会2018年6月

2018年06月17日 | Weblog

 昨日は内科学会地方会の生涯教育講演会に行ってきた。いつも午前中の地方会自体には行かないで、午後の講演会だけ聴くようにしている。5単位もらうのが目的で内容にはさほど期待していないが、今回はファンである新潟大学呼吸器感染症内科の菊池利明先生の講演が入っていた。一般医向けの講演は的を絞った明快な話をされる。今回はクリニックの先生方に向けた肺炎の経口抗菌薬治療の話だった。

 細菌性肺炎にはアモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン)が推奨されている。ただしアモキシシリン・クラブラン酸は、肺炎球菌には100%感受性があるが、インフルエンザ桿菌には30%くらいしか感受性がないので注意してくださいという。ちなみにアジスロマイシンは肺炎球菌にはほとんど効かないが、インフルエンザ桿菌にはかなり(60%)感受性がある。

 非定型肺炎(マイコプラズマ)にはマクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシン)が推奨されている。(マクロライド耐性マイコプラズマの話はされなかった)(レスピラトリー)キノロンは非定型肺炎に効くが、効果はマクロライドよりも少し遅くなる。テトラサイクリンはマクロライドよりも効果発現が速い。

 キノロンは慢性呼吸器疾患のある場合の肺炎で推奨されている。ただしキノロン使用時は抗酸菌(結核)感染を除外する必要がある。市中肺炎でキノロンを使用する時は、できれば喀痰の抗酸菌検査を行って下さいという。

 結核菌に対して、トスフロキサシンは100%感受性がないが、それ以外のレボフロキサシン(クラビット)・モキシフロキサシン(アベロックス)・ガレノキサシン(ジェニナック)・シタフロキサシン(グレースビット)は感受性がある(ガレノはやや低い)。結核にキノロンが(単剤で)使用されると13日くらいでキノロン耐性が生じてしまう。

 キノロンは結核のファーストラインとしては使用されないが、抗結核薬として(多剤併用で)使用される可能性があり、耐性が生じると治療に支障をきたす。なにより肺炎の治療にキノロンが使用されると(効いてしまうため)、結核の診断がかなり遅れてしまう。

 今月末にある抗酸菌の講演会で、菊池先生が非結核性抗酸菌(NTM)の話をされる予定だ。

 

 札幌医科大学の小船雅義先生が難治性貧血の講演をされて興味深かった。座長の張替先生(東北大学血液免疫科)の前で貧血の話をするのは気が引けるので症例を中心に話をします、と言われた。症例から考えるのは具体的にイメージが掴めてよかった。進行性の鉄欠乏性貧血で鉄剤投与に反応しない時は、胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)などの胃・小腸・大腸の毛細血管拡張症を考えるようにいう。

 鉄欠乏にビタミンB12欠乏・葉酸欠乏が合併していたり、またはビタミンB12欠乏・葉酸欠乏が(典型的な大球性でなく)単独にあったりする。血中葉酸値は体内の葉酸量と一致しているが、血中ビタミンB12値は体内のビタミンB12量とそれほど一致しないそうだ。従ってビタミンB12を投与してみて、貧血が改善するかどうかみないと分からないこともある。尿中メチルマロン酸はビタミンB12欠乏で上昇するので参考になる。

 再生不良性貧血は汎血球減少ではなく、2系統以上の血球減少があれば診断される。血小板減少が先行する貧血は再生不良性貧血の可能性がある。また骨髄異形成症候群が(高齢化で?)増加しているそうだ。

 5講演のうち2つ収獲があれば充分だと思って帰ってきた。

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