なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高齢者の運転免許証返納

2018年06月07日 | Weblog

 78歳男性が昨日午後から歩行しにくくなって救急搬入された。救急隊の話では両下肢の脱力ということだった。認知力の問題で正確な症状が判断しにくかったのだろう。

 患者さんの記憶が確かならば、昨日の昼に車を運転して妻といっしょに買い物に出かけた。午後3時ごろに自宅に帰ってきたが、車から降りて自宅に入ろうとしていつものように歩行できなかった。妻の手を借りて自宅まで歩いた。今日になっても症状が続いているので妻が救急要請した。

 両側の上肢・下肢ともに左右差がないくらいに拳上はできるが、よくよく見ると、左上下肢は軽度に脱力があった。名前・生年月日・住所・自宅の電話番号は言えて、病院名も言えた。自分の年齢は2歳違って、現在の年月日は言えないが、それは認知力の問題のようだ。

 まず頭部CTを行ったが、途中で頭部を大きく動かしてしまい、やり直した。ラクナ梗塞が散在しているが、新規の梗塞かどうか判断できない。頭部MRIは、技師さんに動かないよう何度か声掛けをしてもらうことにして、ちゃんと撮影できた。右内包に新規の梗塞巣があった。神経内科医に連絡して入院となった。

 血液検査ではHbA1c11%で、妻の話では4~5年前から糖尿病を指摘されていたが、病院には行かなかったそうだ。こちらは内科で治療することにした。

 昨年9月と今年の3月に当院の神経内科外来を受診していた。運転免許の更新時に、運転免許センターから認知症の有無について病院で診てもらうよう依頼がきていた。MMSEは22点で、頭部MRIはアルツハイマー型認知症に相当という結果だった。

 神経内科新患担当は外部の先生だったが(地域の基幹病院を定年退職)、「認知症が疑われるが認知症とはまだ言えない」というところに丸をつけていた。その結果、運転免許は更新されたのだった。

 当方はこういう場合、運転免許センターで病院に行くよう言われたのは運転は無理という判断なので、認知症の検査をしても運転していいという結果にはならないから、むしろ自分で運転免許を返納しませんか、と勧めることにしていた。

 妻の話では、もう運転はしないように何度言っても、運転は大丈夫だと主張して辞める気はなかったという。実際に運転すると、道路脇のポールや壁に何度も車をぶつけている。今回の入院で、はたして運転はやめるだろうか。「えっ、この人が」、というような認知障害・身体機能障害の高齢者がけっこう運転を続けている。

 

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