なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

無事でしたか

2018年06月08日 | Weblog

 外科病棟に見覚えのある名前があった(84歳女性)。内科外来に通院していた患者さんだった。13年前にこの病院に赴任してきた時に、大学病院からの出張医師担当の外来を引き継いだが、その時から診ていた患者さんだった。(常勤で赴任したので、その代りに大学病院からの外来応援枠2つがなくなった)

 高血圧症・原発性胆汁性肝硬変(当時)・シェーグレン症候群と診断されていた。処方は降圧薬1剤とウルソで、それほど病状の変化もなく、2か月に1回顔を見て処方を継続するくらいだった。

 いつからか、外来受診に連れてきてくれる娘さん(顔が母親そっくり)も診察室にいっしょに入るようになっていた。3年前に娘さんから、とにかく食事摂取量が少くなり、ほとんど食べないと相談された。そう言われてみると、もともと痩せた人だがさらに痩せていた。血液検査では貧血や低蛋白血症もなく問題なしだった。画像検査は、CTでは異常なかったが、消化管の内視鏡検査は拒否された。

 顔つきや話ぶりも以前とは違って険しい感じがした。娘さんの希望で外来で点滴を断続的に行ったが、入院は拒否した。自宅で何度も食べる様に言うが、全然食べないという。嘔気も腹痛も下痢もなかった。とにかく食べたくないという。内服薬も一切飲まなくなった。80歳過ぎの摂食障害(拒食症)?になるが、消化管の精査をしないと精神的なものとは断言できない。

 娘さんの希望で、精神科に紹介状を書いた。何度か外来を受診したが、患者さんは精神科通院は嫌がっていた。そのうちに動けなくなって救急搬入された。入院しても抑えるつけて点滴するくらいしか思いつかなかった。その前に娘さんと相談した時に、処置としては高カロリー輸液か経管栄養しかないが、抑制しないと難しいだろうという結論になっていた。外来だと娘さんが付き添っていれば点滴1本はできた。

 精神科病院に電話で相談すると、入院で診てくれるという返事だった。娘さんの泣きながらの説得で患者さんが了解されたので、精神科病院に救急搬送した。そのころは家庭内での母子の言い合いが続いて、娘さん自身が精神的にかなり参っていた(パニックですと言っていた)。それ以後は診ていなかった。

 精神科病院を退院して、現在は近医のクリニックから降圧薬とウルソが処方されている。今回は、クリニックから小球性貧血で消化器科外来に紹介された。検査の結果、横行結腸癌と診断されて今月初めに外科手術を受けていた(転移はない)。もう全粥食を食べている。

 この癌は拒食の原因にはならないが、当時大腸内視鏡検査が行われれば早期癌として診断されたのだろうか。3年前に診ていただいた精神科医は確か40歳前後だったはずだが、その後若くして癌で亡くなっている。

 

 

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