病院に来る途中で葬儀の案内をする看板をみた。名前に憶えがあり、少し前に内科の先生に相談された患者さんだった。68歳女性で、糖尿病で内科外来に通院していた。今年の夏から血糖コントロールが悪化して、7%台だったHbA1cが9%、さらに10%に上がってきていた。ただ前年にもHbA1cが9%台になったこともある。自覚症状には乏しかったそうだが、肝機能障害も出てきたため、腹部エコーを行うと、膵尾部に腫瘤があり、さらに肝臓内に多発性の腫瘤を認めた。
胸腹部造影CTで確認すると、確かに膵尾部に腫瘍があり、肝臓内には原発巣をはるかに上回る容積で、多発性の転移巣があった。両側肺にもcoin lesionが多発していた。腫瘍マーカーはCEAとCA19-9が5桁になっている。膵尾部癌の多発性肝転移・肺転移だった。
治療は化学療法になり、厳しい状況だ。年齢的には、それなりの施設に紹介した方がいいとお話しした。がんセンター紹介となって、入院した。入院後は病状の悪化で癌に対する治療はできず、患者さんと家族と相談して、緩和ケアになったそうだ。
糖尿病の悪化は膵癌を疑うという教科書的な症例だが、ここまで広がって発見されるのも、そうないかもしれない。