新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り
『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿の場」
染五郎さんの求女はとっても綺麗なんだけど無難。こういう役の時、妙に大人しい感じになってしまうのはなぜかしら?風情だけで説得力を持たせなければいけない役は難しいと本人も言っていたけど…。もう少し前に出る感じが欲しい。
高麗蔵さんの橘姫はいつもより柔らかな雰囲気。キツメの顔がこういう役の時に損してるけど体の使い方を工夫していた感じ。でもやっぱ高麗蔵さんは立役のほうが好きだなあ。
主役のお三輪の福助さん、思い入れたっぷりの熱演。可愛らしい声は娘役にピッタリだし、田舎娘のちょっとどろ臭い感じもいいんだけど、前半、表情を作りすぎ。もう少し顔の表情を押さえたほうが哀れさが出ると思うのだけど…。後半、擬着の相を表すところからは情念ともに切なさもあってかなり良いと思う。 気持ちがストレートに伝わってきてやるせない。
鱶七の吉右衛門さんはさすがの存在感。がらりと空気が変わる。
『隅田川続俤』「法界坊」「浄瑠璃 双面水照月」
吉右衛門さんと富十郎さんが若干台詞が怪しいところを除けば、まだ3日目のわりに、かなりまとまってて面白い芝居になってました。
最近なんだかんだ言ってしまうことが多いけど、やっぱ吉右衛門さんは上手いなあと。人を惹き付けるすべを知っている。それこそ「芸」があるからこその法界坊かなと。勘三郎さんのように愛嬌で見せるのではなく、すっとぼけた飄々とした味わい。「いやらしさ」が表に出てこない分、殺しの場が悲劇と喜劇は隣り合わせ感がかえってあった<私的に結構意外な発見。この場はいやらしさ、グロテスクさを出したほうが面白いかな、と思っていたので。
でもって、甚三の富十郎さんがピッタリで。吉右衛門さんと富十郎さん、若干台詞が怪しいとはいえ、この二人のやりとりの時が一番、場が締まるというか空気が濃くなるのだから歌舞伎の世界の奥深さです。それにしても富十郎さんのカラッとした明るさというのは本当に貴重。ここからもっと調子を上げていってくれることをお願いします。膝はまだ辛そうですね。
おくみの芝雀さん、お顔がだいぶすっきりして娘ぶりが一段と可愛い。着替えもいっぱーい。「双面」での舞踊も頑張ってた。芝雀さんの踊りは手捌きは丁寧なんだけどちょっとちんまりと小さいんですよね。それがだいぶ大きく見せられるようになってきたかなとか。
要助の錦之助さんが4月とは見違えるほど良かったです。得意系の役とはいえ、ノビノビと演じてらして観てて気持ちいい。これですよ、これ~。4月はやはり緊張しまくりだったんでしょうねえ。
後半、おくみと要助がもっとラブラブになってくれると嬉しい。
おしづの福助さん、貫禄。とにかくカッコイイ女でした。
染五郎さんは野分姫がかなり綺麗&可愛い。前方花道横の席でドアップで観ても可憐。染五郎さんはの硬質な感じが「姫」の雰囲気にピッタリなんでしょうかね?「歌舞伎のなかの姫」にしっくりハマります。「双面」での花道の出の野分姫の幽霊は怖さと切なさと、これまたいい幽霊ぶり。
んが、おくみと同じ葱売りの格好をすると、かさのある姫の簪や着物でごまかしがきかない分、男の子の線が出てきてしまう。やはり女形の形になりきれてないのよね。体が完全に女形の形になっている芝雀さんと並ぶのでやはりね…どうしてもそこら辺が目立つ。また、その形になりきれてない体で女舞を踊るので全体的に硬さが目立つ。そのせいでかなり頑張ってはいるのだけど野分姫と法界坊の踊り分けがきっちりメリハリつくまではいってない。まあ、勘三郎さんのと較べちゃうから余計についつい姫の部分はもっと柔らかく~~~とか注文しちゃうのよね…。これからもっとメリハリをつけていって欲しい。法界坊になる部分は台詞廻しが吉右衛門さんソックリだったり、思い切りのいい踏み込みをしていてこちらのほうはなかなか。でもやっぱりもう少し法界坊の怨念を醸し出せるといいんだけどな。
ただ気迫はものすごくあって、舞台での緊迫感が終始保たれていて観ててダレることがなかったのは見事。周囲の観客もかなり見入っている感じだった。それと今回「野分姫から双面」だったので姫の哀れさが全面に出てて、それもまた面白かった。「法界坊から双面」の場合、格好が女(野分姫)であっても法界坊の俗世への執着が強調される。趣向として今回のもアリだなと思いました。
「双面」は福助さん、錦之助さん、芝雀さん、染ちゃんがそれぞれかなり気合が入ってる感じがしました。吉右衛門さん、富十郎さんがいなくてもみせたるぜな勢いというか。
『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿の場」
染五郎さんの求女はとっても綺麗なんだけど無難。こういう役の時、妙に大人しい感じになってしまうのはなぜかしら?風情だけで説得力を持たせなければいけない役は難しいと本人も言っていたけど…。もう少し前に出る感じが欲しい。
高麗蔵さんの橘姫はいつもより柔らかな雰囲気。キツメの顔がこういう役の時に損してるけど体の使い方を工夫していた感じ。でもやっぱ高麗蔵さんは立役のほうが好きだなあ。
主役のお三輪の福助さん、思い入れたっぷりの熱演。可愛らしい声は娘役にピッタリだし、田舎娘のちょっとどろ臭い感じもいいんだけど、前半、表情を作りすぎ。もう少し顔の表情を押さえたほうが哀れさが出ると思うのだけど…。後半、擬着の相を表すところからは情念ともに切なさもあってかなり良いと思う。 気持ちがストレートに伝わってきてやるせない。
鱶七の吉右衛門さんはさすがの存在感。がらりと空気が変わる。
『隅田川続俤』「法界坊」「浄瑠璃 双面水照月」
吉右衛門さんと富十郎さんが若干台詞が怪しいところを除けば、まだ3日目のわりに、かなりまとまってて面白い芝居になってました。
最近なんだかんだ言ってしまうことが多いけど、やっぱ吉右衛門さんは上手いなあと。人を惹き付けるすべを知っている。それこそ「芸」があるからこその法界坊かなと。勘三郎さんのように愛嬌で見せるのではなく、すっとぼけた飄々とした味わい。「いやらしさ」が表に出てこない分、殺しの場が悲劇と喜劇は隣り合わせ感がかえってあった<私的に結構意外な発見。この場はいやらしさ、グロテスクさを出したほうが面白いかな、と思っていたので。
でもって、甚三の富十郎さんがピッタリで。吉右衛門さんと富十郎さん、若干台詞が怪しいとはいえ、この二人のやりとりの時が一番、場が締まるというか空気が濃くなるのだから歌舞伎の世界の奥深さです。それにしても富十郎さんのカラッとした明るさというのは本当に貴重。ここからもっと調子を上げていってくれることをお願いします。膝はまだ辛そうですね。
おくみの芝雀さん、お顔がだいぶすっきりして娘ぶりが一段と可愛い。着替えもいっぱーい。「双面」での舞踊も頑張ってた。芝雀さんの踊りは手捌きは丁寧なんだけどちょっとちんまりと小さいんですよね。それがだいぶ大きく見せられるようになってきたかなとか。
要助の錦之助さんが4月とは見違えるほど良かったです。得意系の役とはいえ、ノビノビと演じてらして観てて気持ちいい。これですよ、これ~。4月はやはり緊張しまくりだったんでしょうねえ。
後半、おくみと要助がもっとラブラブになってくれると嬉しい。
おしづの福助さん、貫禄。とにかくカッコイイ女でした。
染五郎さんは野分姫がかなり綺麗&可愛い。前方花道横の席でドアップで観ても可憐。染五郎さんはの硬質な感じが「姫」の雰囲気にピッタリなんでしょうかね?「歌舞伎のなかの姫」にしっくりハマります。「双面」での花道の出の野分姫の幽霊は怖さと切なさと、これまたいい幽霊ぶり。
んが、おくみと同じ葱売りの格好をすると、かさのある姫の簪や着物でごまかしがきかない分、男の子の線が出てきてしまう。やはり女形の形になりきれてないのよね。体が完全に女形の形になっている芝雀さんと並ぶのでやはりね…どうしてもそこら辺が目立つ。また、その形になりきれてない体で女舞を踊るので全体的に硬さが目立つ。そのせいでかなり頑張ってはいるのだけど野分姫と法界坊の踊り分けがきっちりメリハリつくまではいってない。まあ、勘三郎さんのと較べちゃうから余計についつい姫の部分はもっと柔らかく~~~とか注文しちゃうのよね…。これからもっとメリハリをつけていって欲しい。法界坊になる部分は台詞廻しが吉右衛門さんソックリだったり、思い切りのいい踏み込みをしていてこちらのほうはなかなか。でもやっぱりもう少し法界坊の怨念を醸し出せるといいんだけどな。
ただ気迫はものすごくあって、舞台での緊迫感が終始保たれていて観ててダレることがなかったのは見事。周囲の観客もかなり見入っている感じだった。それと今回「野分姫から双面」だったので姫の哀れさが全面に出てて、それもまた面白かった。「法界坊から双面」の場合、格好が女(野分姫)であっても法界坊の俗世への執着が強調される。趣向として今回のもアリだなと思いました。
「双面」は福助さん、錦之助さん、芝雀さん、染ちゃんがそれぞれかなり気合が入ってる感じがしました。吉右衛門さん、富十郎さんがいなくてもみせたるぜな勢いというか。