今回ご紹介するのは「幻想郵便局」(著:堀川アサコ)です。
-----内容-----
就職浪人中のアズサは「なりたいものになればいい」と親から言われてきたけれど、「なりたいもの」がわからない。
特技欄に”探し物”と書いて提出していた履歴書のおかげでアルバイトが決定。
職場は山の上の不思議な郵便局。
そこで次々と不思議な人々に出会う。
この郵便局には、あなたの失くした物が届いてる。
生きることの意味をユーモラスに教えてくれる癒し小説。
-----感想-----
「ブクログ文庫本ランキング、読書メーター読みたい本ランキングダブル1位」と書かれた帯、さらに装丁がとても綺麗だったことから読んでみたくなり、手に取った一冊です。
山の上にある「登天(とうてん)郵便局」を舞台にした、とても不思議な物語。
安倍アズサはある日そこで働くことになったのは良いものの、出てくるのは不思議な人ばかり。
そして同時にとても心温まる雰囲気です。
かと思うとミステリーの要素もあり、なかなか読み応えのある物語です。
「あの辺りに、死んだ人が行く郵便局があると、聞いたことが…」
「登天郵便局は、とどのつまりは地獄の一丁目」
これらの言葉からも、登天郵便局が普通の郵便局ではないことが分かります。
郵便局とは似て非なるものであって、少なくとも現世の生活に必要な場所ではないとのことです。
冥界と現世の境界に建っていて、この世とあの世をつなぐような役目を持っています。
山のてっぺんという不便な場所にあるのもそのためのようです。
そんな不思議な場所で出会う、何とも不思議な人々。
そして不思議な人々が織り成す、面白く心温まる、時にミステリアスな物語。
登天郵便局には死んだ人が来るのはもちろんですが、たまに生きた人が来ることもあります。
登天郵便局を「本当に心から必要」と思った場合には、生きている人でもたどり着くことが出来るようです。
作品に登場してきた人物との唐突な別れもありました。
元々死んでいる人が成仏していった場合もありますし、生きている人とのまさかの別れもありました。
それらは爽やかなようで、やはりちょっと寂しくもあって、「成仏」を通して人の命について考えさせられました。
そして物語の最初から最後まで絡んでくる、「怨霊」の島岡真理子さん。
真理子さんは平成七年に起きた殺人事件で殺された「怨霊」のため成仏することが出来ず、登天郵便局に来ても毎回追い返されてしまいます。
その真理子さんがなぜかアズサのことを気に入ってしまい、つきまとわれることになるのですが…
真理子さんが殺された殺人事件は未解決のままで、迷宮入りしてしまっています。
アズサのほうも真理子さん殺人事件に興味を持ち、当時のことを色々と調べたりします。
登天郵便局での面白おかしく心温まる物語と同時に進む、真理子さん殺害の真相の追及。
やがてクライマックスでまさかの人物によるものと分かるのですが、本当に不思議な物語だったなと思います。
片や登天郵便局という現実離れした場所で心温まる物語が繰り広げられたり、片や殺人事件の真相追及という物凄く現実な要素が絡んできたり。
何とも不思議で面白い、素晴らしく読み応えのある作品だったと思います
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