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湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

二年間の休暇

2010-08-09 20:37:10 | 湘南ライナーで読む


『二年間の休暇』を読んだ。

今の僕の毎日に重ね合わせる意味でね…
って、そうじゃない(笑)。

邦題は『十五少年漂流記』である。
訳者(石川湧)の「あとがき」によると、1888年にフランスで出たものを「日本で1896年に、森田思軒という人がイギリス訳から訳し、15少年漂流記と改題したため、その後、わが国ではその訳名が通用するようになりました」とある。

著者がつけたタイトルじゃなかったんだ!
驚いた。ま、たしかに『二年間の休暇』じゃ、まったく違う物語を思い浮かべちゃうもんね。子供だって飛びつかない(笑)。

それにしても、素晴らしいネーミングだ。

『十五少年漂流記』

この7文字だけで内容が想像できる。
15人の子供たちだけでのドキドキワクワクするような冒険の日々まで一気にイメージが広がっていく。
このネーミングを124年も前(明治29年)にやっていたとは!

そんなことに感心してしまったこの物語、やっぱりタイトルから想像できる内容そのままで面白かった。
ただ、最後のほうは悪人たちをピストルでバンバン撃ち殺しちゃうシーンなども出てきてビックリ。子供のころにダイジェスト的なものを読んでいるはずだけど、これは覚えていないし、想像をはるかに超えていた(笑)。

さて、著者のジュール・ヴェルヌといえば、あの鹿島建設のテレビCMが思い浮かぶ。
「人が想像できるものは、必ず人が実現できる」
すてきな言葉も残しています。

写真は『十五少女漂流記』。いや、ボディーボードでは漂流できないか(笑)。


今回読んだのは角川文庫(400円+税)。昭和33年初版で、これが88版!各出版社から出ているようだが、現代ではやや読みづらい表現もあった。それもまた、いい味かな。

家族放浪記

2010-08-02 18:10:31 | 湘南ライナーで読む


以前週刊ブックレビューで紹介されていた『家族トランプ』(明野照葉著 実業の日本社刊
1500円+税)を書店で見つけて購入。舞台が三ノ輪だったことも、ひかれた理由のひとつだ。
書評では大好評だったので期待したが、思ったより普通の話でちょっと拍子抜け(笑)。いやいや、その普通が、実は今の世の中では普通ではなくなっているからこそ素敵な物語なのかもしれないが。

途中から舞台となる『磯家』という居酒屋がいい。朝10時からやっているので大衆食堂ともいえるお店。もちろん、家族経営。まるで酒場放浪記で訪ねるような一軒だ。
そんなお店の背景をリアルに覗き見たような面白さがある。昔はこうして家族というものができあがってきた。そういうことがよくわかる一冊ではある。

海街ろまん

2010-07-28 21:10:26 | 湘南ライナーで読む


先日『いまも、君を想う』を読んでいたら、2度ほど『海街Diary』(吉田秋生作画 小学館 505円+税×3)という漫画の話が登場した。
川本三郎さんが「愛読している」という。
たしか本棚で見たぞ!と思い出し探すと、3巻とも揃っていた。ウチでは妻が「愛読」していた(笑)。

実は少女漫画はどちらかというと苦手。でも、せっかくあるのだからと頑張って読んでみた。
読みはじめたら、最初の章でいきなり泣いてしまった。不覚にも(笑)。
鎌倉に住む四人姉妹を中心とした、家族や友情、恋、仕事などをからめた“ありがち”なストーリーなのだが、いやいや、なかなかどーして、リズムがよくてグイグイ引き込まれ、引き込まれたかと思うと、時が止まって、突然ワ~ッ!!と。
一気に読んでしまったよ(笑)。

引き込まれてしまうスピードを加速させるのが、鎌倉という舞台だ。見たことがある風景やお店がたくさん出てくる。テレビドラマか映画のワンシーンのように想像できるのだ。


と思っていたら、『すずちゃんの鎌倉さんぽ』(小学館 838円+税)という本も出てきた。ストーリーと共に鎌倉を紹介する気の利いた“体感ガイドブック”である。
しかもこの本によると、舞台や登場人物が交錯する『ラヴァーズ・キス』という漫画もあるらしい。さっそく「愛読せよ」と妻をそそのかさないと(笑)。

ちなみに、その四女すずちゃんが入っている『湘南オクトパス』というジュニアユースチームのライバルは、『平塚FC』という設定である。


う~ん、名古屋戦は善戦ですか、惜敗ですか…
もう次戦は日曜です。

ずっと、君を想う

2010-07-26 23:20:31 | 湘南ライナーで読む


『いまも、君を想う』(新潮社刊 1200円+税)
街歩き系、昭和系の著書を愛読している川本三郎氏の最新刊である。2年前に亡くなった奥様とその結婚生活、そして今を綴ったエッセイ集だ。

妻を亡くすということの悲しさ、せつなさ、戸惑い、難しさが、川本さん独特の文体でジワリと滲みてくる。亡くなった後の普通の生活の中でふと回想されるシーンに胸が熱くなる。ちょっとしたエピソードに泣かされる。
たとえば、奥様が買い物をしていた豆腐店のおかみさん、リフォームにやってきた若い大工さんとのやりとりなどは、静かなだけに余計に深く心に響いた。
でもそれは、お二人の結婚生活がいかに素晴らしいものだったかを物語っていることにほかならないのだが。

川本さんは「よく眠るほう」らしい。そして「最近、眠る新しい楽しさが加わった」と書いている。
それは「夢で時折、家内に会えること」だという。こんな素敵なフレーズも出てくる、おやじ泣かせの一冊である。



ちなみにウチは僕の方が10も年上だから妻が先に逝く心配ないと思っていたら、「七歳年下の家内がこんなにも早く逝ってしまうとは」と書かれていて、不安になってきた。見た目は、そうとう元気だけど(笑)。

特別なふつうの喫茶店

2010-07-20 17:49:45 | 湘南ライナーで読む


仕事の合間のおさぼり喫茶

私鉄沿線ぶらり途中下車

下町散歩のコーヒーブレイク

学生街の喫茶店

旅先で立ち寄った素敵なお店

休日は愛読書を持って


章ごとのタイトルだけを追っても魅力的。
即買いしてしまったのは『東京ふつうの喫茶店』(泉麻人著 平凡社刊 1500円)である(読んだのはけっこう前)。週刊ものの連載で“週一”の喫茶店通いをまとめたとある。
とにかく昭和や街に詳しい氏らしく、懐かしさ、そしてコーヒーの香りともに味わうことができる心地いい本だ。
最初は恐る恐るのぞき込むようなアプローチが、“素人”の僕たち同様で楽しい。その後しっかり取材を試みても、あまり深く入り込みすぎていない距離感もいい。
チェーン店ではないふつうの喫茶店が、いつまでもそこにあってほしい。ふつうの喫茶店がもっと増えてほしい。そう願わずにはいられない。

残念ながら、掲載されているお店で行ったことがあるのはこちらだけでした。
「山手線から見える気になる物件●アートコーヒー浜松町店」は僕も気になっていたので、スッキリでした。

そういえば、もう10年以上前、原宿あたりのカフェのテラスで取材されていた泉麻人さんを見かけたことがあったな。照れくさそうにハニカむ表情が、なんだか他人とは思えなかったんだよね(笑)

東大へGO!

2010-07-11 16:53:16 | 湘南ライナーで読む


「東京大学を遊ぶ」
こんなタイトルが『サライ』8月号(小学館 650円+税)の表紙を飾っていた。

東大というとちょっと近寄りがたい存在のようだが、実際にはいつも誰にでも門戸が開かれている。僕のような者がぶらぶらしたり、学食で飯を食っていても、とがめられることなどないのだ。思えば会社勤めのころは、本当によく遊ばせてもらった(笑)。
そのころを懐かしく振り返ったり、知らなかった情報に感心したり、楽しく読むことができた。といっても本屋さんでだけど(笑)。
なんだか一日ゆっくりと遊んでみたくなってきたぞ。こんなに好奇心をかきたてられる大学なんて、なかなかないものね。ただし、学生さんたちに迷惑にならないよう、ほどほどに。

<過去の東大に関わるエントリー>
駒場キャンパス
パワー丼(メトロ銀杏食堂)
ポークチャオ(メトロ銀杏食堂)
文学
構内
三四郎池
東京大学総合研究博物館小石川分館
しょうが焼き丼(第二食堂)
ランチプレート(UTカフェ)
カツカレー(メトロ銀杏食堂)
オムレツライスのハヤシソース(松本楼)
ピラフセット(中央食堂)
構内
赤門
東京大学大学院理学系研究科付属三崎臨海実験所
平塚沖波浪等観測塔
東京大学情報学環・福武ホール


<過去に訪ねた周辺のお店などはこちら>
大島や
こゝろ
ピグ
すみれ堂本舗
食堂もり川
ボンナ
カヤシマベーカリー
万定フルーツパーラー
ルオー
落第横丁
本郷館
山猫軒

平パンの三島を読む

2010-07-01 07:08:32 | 湘南ライナーで読む


今では当たり前のように使われる「スーパースター」という言葉。実は、日本で最初にこう呼ばれたのは、三島由紀夫だったのを知っていますか?

そして、それが初めて活字となったのは『平凡パンチ』誌上だったという。
『平凡パンチの三島由紀夫』(椎根和著 新潮文庫 514円+税)は、平パンの番記者として緊密に接した著者が新たに語る三島由紀夫像だ。
取材相手としてはもちろん、剣道の弟子になり、結婚式ではスピーチもしてもらうという関係。その出会いから、1970年に市ヶ谷の自衛隊総監室で三島が自決するまでの2年半ほどの交流と、三島に影響を及ぼしていた人物や哲学との関わりまでが描かれている。他の人が書いた三島由紀夫像を読んでいないのでよくわからないが、きっと初めて語られるエピソードも多く、かなり印象が違ってくるのではないだろうか。
僕には子供心にもやはりあの自決のイメージが強く、ただなんとなく怖い存在でしかない。
しかし、それ以前は現代ならキムタク級という“アイドル”でもあったらしいのだ。そんな当時の様子がわかるのと、「ボーナス袋が立った」という出版業界の隆盛が時代の躍動と共に伝わってきて面白く読むことができた。
僕にとって、平パンといえばすぐにあのロゴとイラストの表紙が思い浮かぶ。学生のころは『プレイボーイ』と共にちょっとエッチな週刊誌的なイメージでよくお世話になったものだ(笑)。しかしもっと前は、時代を引っ張る、かなりとんがった雑誌だったことが改めてよく理解できた。

それにしても三島由紀夫も『もーれつア太郎』が好きだったとは驚き。僕は赤塚不二夫作品の中で『もーれつア太郎』が大好きなので、ちょっと嬉しいなぁ。

湘南スタイル校正

2010-06-27 17:37:28 | 湘南ライナーで読む


昨日発売の『湘南スタイル8月号』(出版 980円)に、「おしゃれ度急成長の湘南新スポット 平塚なぎさエリア」という小特集あり。
そのリード文から、実は明らかに平塚に興味が薄い度が読みとれる(笑)。

「七夕まつりや湘南ヴェルマーレの本拠地として有名な平塚…」

ベルマーレは、VではなくBではじまるので「ヴェルマーレ」ではありません。これ、絶対にかつて一世を風靡した「ヴェルディ」の印象からきてるよね。

もうひとつ言えば、確かに「本拠地」こそ平塚競技場ですが、すでにホームタウンは湘南エリア7市3町になっているのもご存じないようで(笑)。

まぁ、たいした問題ではないけどね。もともとこの本では平塚あたりの話題が取り上げられる頻度も少なく(話題がないといえばそれまでだけど)、マリンスポーツ以外のスポーツも登場しないから仕方ないんだけど。
マリンではなくビーチスポーツが盛んな平塚の砂浜も、たまにはのぞいてもらえると嬉しいなぁ。確かにリゾート度は低いけど、実は湘南のどこよりもすばらしい関係を築いているビーチパークだってあるのだ。「海のある生活マガジン」を標榜するのなら、こういう新しいあり方を紹介するのもいいと思うけどなぁ、創刊号からの愛読者の一人としては…

特集とは別にこちらのお店も掲載されていました。
東理夫さんの連載終了が残念。本棚にこんな本がありました。

大衆食堂マニュアル

2010-06-20 16:40:44 | 湘南ライナーで読む


豚しょうが焼き、キャベツ、目玉焼き、そして赤いウインナー。
そのお皿に真っ赤な大きい文字がかかり、何とも魅力的な表紙が僕を呼んでいた(笑)。

『みんなの大衆めし』(小学館1000円+税)である。
あの『おつまみ横丁』シリーズや時々『タモリ倶楽部』にも出演している瀬尾幸子さんが料理し、大衆食堂の大家遠藤哲夫氏が書き下ろしたレシピ本である。

ただし、大衆食堂の壁にかかっていそうなメニューを集めただけではない。大衆食堂にまつわる豆知識やらレポートやらも掲載されていて楽しい。終盤には総菜を求めて横浜橋商店街にも足を延ばしている。
いやあ、おいしそうな料理のオンパレードでお腹がすいてきた。なにか一つ作ってみようか…。でも、やっぱりあの古びた店内で、その雰囲気と一緒に味わう大衆めしのほうがいいなぁ。

舞台裏も天国と地獄

2010-06-03 17:54:41 | 湘南ライナーで読む


黒澤明監督『天国と地獄』については、DVDを観たときに書いたことがある。
昭和38年の作品だが、いま観ても物凄い緊張感とともにグイグイ引き込まれてしまう。その映画の製作過程やエピソードなどに詳しい本を読んだ。
『黒澤明と「天国と地獄」ドキュメント・憤怒のサスペンス』(都築政昭著 朝日ソノラマ刊 1700円+税)である。
膨大な資料と写真、役者や関係者へのインタビューから構成されていて、こちらも映画同様グイグイ引き込まれてしまう。
監督自身もかなり入れ込んだ作品だったらしく、たくさんのエピソードが生まれ、読み手としては楽しい。もっとも演じ手や作り手にしてみたら、たいへんなことばかりだったということなのだが(笑)。
さらに、「あの家が邪魔だからどけろ」と言ったとか、川の汚れ具合が足りないといって怒って帰ってしまったとか…これまでにもよく語られている黒沢監督のびっくりするようなエピソードの真偽やその背景なども解説されていて興味深い。

『天国と地獄』は、珍しくほぼ時系列に沿って製作された映画だという。本のほうもそのストーリー展開と共に進んでいくので次第に一体感が生まれてくる。いつの間にか現場の片隅で、固唾を飲んで見つめているような気にさえなってくるのだ。
たとえば、ハイライトともいえる酒匂川での身代金受け渡しの場面。映画を観てドキドキハラハラし、この本に書かれている舞台裏の様子でまたドキドキハラハラ。気がついたら、自分もこだま号に乗り合わせてしまっている。「カーット!」の声と共に、「は~」と肩の力が抜けていく感じ(笑)。
『天国と地獄』という映画の面白さ、すばらしさ。そしてその映画づくりの面白さ、すばらしさまでを教えてくれる素敵な本だった。

それにしても図書館で借りたこの本、折り目がついていたり、シミがあったり、バラバラになりそうになっていたりで、さすがに古いんだろうなと思っていのだが、2002年初版。映画の公開から40年近く経ってから書かれた割と最近のものだった。監督は亡くなられているものの、多くの関係者のみなさんがご存命だったことが何より。だからこそ生の声で語られ、臨場感があふれているのだろう。

改めてDVDを観るのが楽しみである。