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あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 内田正洋著_シーカヤック教書

2009年07月20日 | 旅するシーカヤック
瀬戸内カヤック横断隊の内田隊長が書かれた『シーカヤック教書』が、今朝ようやく手元に届いた。 隊長からのメールで出版されたことを知り、ネットで注文していたのである。
 
この本は、教科書として書かれたものだという。 楽しみだ。 朝から大雨となった休日、届いた本を早速開いた。

*** 以下、引用 ***

『ところが、自然に対峙するための判断力を培うのは非常に難しい。 どれほど経験を積んでいても、失敗する可能性は消え去りません。 しかしながら経験を積まなければ判断ができないことも事実です。 つまり海という存在は、常に人を学ばせてくれるところです。 そこにシーカヤックが存在する意義があります。』

『でも人が海を真似ることはできません。 人は海から学ぶのではなく、海と人が関わってきた長い歴史、それを学ぶ。 そのための道具としてシーカヤックが存在しているのではないでしょうか。 書き方を変えると、海に生きてきた人々の歴史から何かを学ぶ。 人々が培かってきた海の文化をシーカヤックを漕ぐことで学んで行く。』

*** 引用、終わり ***

このシーカヤック教書には、瀬戸内カヤック横断隊の写真も多く掲載されており、装備やテクニカルな内容に加えて、シーカヤックを漕ぐことの意味についても、多くのページが割かれている。 まさに、『瀬戸内カヤック横断隊』の意義である、『瀬戸内海洋文化の復興、創造、そして継承』そのものだ。

1992年にシーカヤックを始めた頃に参考にしていたのは、ムック本であった。 『カヌーリバーツーリング入門』、『シーカヤッキング入門』

これらは、基本的なテクニックと道具、装備について書かれた入門書的なものであったが、当時はシーカヤックの専門ショップもほとんどなく、これらのムック本を教科書として経験を積んでいったものである。
***
一方、海外に目を向けると、そこには全く別次元の世界があった。 まずは、JOHN DOWD氏が著した『SEA KAYAKING』
 
ギネスブックにも載るほどのエクスペディションを経験したJOHN DOWD氏の書いたこの本には、経験したものだけが伝えられるリアリティが感じられ、とても興味深く、まずは英語版を、そして後に日本語版を手に入れ、むさぼるように読んだものだ。 ちなみに内田隊長は、後にこの日本語版の再出版にも関わっておられる。
***
そして、私にとってなにより衝撃的だったのは、JOHN DOWD氏が創刊した『SEA KAYAKER』

基本的なテクニックや道具/装備の情報がメインの日本のムック本とは違い、旅行記、レスキューテクニック、ナビゲーション、プランニング、科学的なシーカヤック性能評価などなど、深く高度な記事で充実していたことに驚いたものだ。 ただ当然ながら、全文英語なので、読むのは一苦労であった。

特に私が大切に保管している、表紙に鳥居が描かれた1989年のVOL.5 NO.4には日本特集も組まれており、故ローリーイネステイラー氏が書いた日本のシーカヤック事情の記事や、ポールカフィン氏による日本一周の記事も掲載されている。
この『SEA KAYAKER』を読んで、あまりに大きな日米のシーカヤック文化の差に、愕然としたことを覚えている。
***
そして今回、この『シーカヤック教書』
内田さんが1990年に出版された『SEA KAYAKING IN JAPAN』で既に言及されていた、『シーカヤックを漕ぐことの意味』、『ライフスタイルとしてのシーカヤック』が、その後20年近い月日を経て、瀬戸内横断隊の経験なども含めて咀嚼/整理され、まとめられた本だと感じた。

単にスキルやテクニック、道具や装備論だけでなく、海洋文化としてのシーカヤックも含めて論じられた、だが隊長らしく決して堅苦しくない教科書。

内田隊長は、こうも綴られている。 『僕の場合、確かに20年前とは漕ぎ方が変わっていると感じます。 体力が衰え、身体のキレも悪くなっているからです。 でも気持ちの方は、もっと漕ぎたい。 もっと旅したい。 もっと海を理解したい。 もっと人を理解したい。 そんな気持ちになっています。』
 
日本ならではの海洋文化をバックボーンとした、日本ならではのシーカヤックルネッサンスが始まっており、そしてそれを復興し、創造して伝承して行くのは、まさに私たち自身なのである。 『シーカヤック教書』、ぜひ読んでみて下さい。

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