自転車での似島一周を終え、集落に戻ってきた。 さて、そろそろテントを張るか。
昼間に教えていただいた方向に歩いて行きながら、テントを張るのに良さそうな場所を探す。 住民の方の迷惑にならず、きれいで平らな場所。 『おー、ここなんか最高じゃん!』
ソロ用の小さなテントをパニアバッグから引っ張り出し、ポールを通して張る。 中にシートを敷き、マットを膨らませ、シュラフを広げると、アッと言う間に今日の寝床が完成。
どんな場所に旅しても、テントを張り終わるまではなんだか落ち着かない。 気に入った場所を見つけ、テントを張り終わると、ようやく自分の居場所が出来た感じがして、ホッと落ち着くのである。
しばらくすると、近くにある商店の前に置いてある椅子とテーブルに、漁から帰って来られた漁師さん達が三々五々集まり、宴会が始まった。 みるとそのなかに、昼間テントを張っても良いと言って下さったおねえさんが居られた。
『昼はありがとうございました。 ここに張ったんですが、良かったですか?』 『ここにしたん。 ここは潮は上がって来んかねえ?』と、周りの漁師さん達に聞いて下さる。
『なあに、潮が来てもプカプカ泳ぐ気じゃったらええじゃない』と、笑いながら漁師さん。 もう一人の方は、『今日は潮が大きゅうないけえ、大丈夫よ』
するとおねえさんは、『ちょっと北風があるが、大丈夫かねえ』 『ええ、ここならなんとか凌げると思います。 本当にありがとうございました』と私。
***
晩ご飯までは少し時間がある。 集落を散策してみるとしよう。
メインストリートを歩くと、肉屋さんが開いていた。 その近くには魚屋さんも営業中。
小さな島には魚屋さんがない所も多いのだが、ここには魚屋さんがあるんだ。 新たな発見。
似島峠にも上がってみた。
***
夕方、5時半過ぎ。 再び『みなとや食堂』の暖簾をくぐる。 店に入ると、いつもの席に。
『こんにちは。 来ました!』 『テントは張ったん?』
『はい、おかげさまで助かりました。 昼間にあの人に会えて良かったです』 『あの人は、ようここにも来るんよ。 あっさりしてええ人じゃろう』 『はい、ホンマですね。 夕方前から、近くの商店の前で、漁師さん達と楽しんでおられましたよ』
『何にする?』 『ビールとおでん。 おでんは何があります?』 『ここへ来て、好きなん選びんさい』
まずは瓶ビールをコップに注ぐ。 『トクトクトク。 シュワーッ』
『いただきます』 『ゴクリ、ゴクゴク。 プハーッ。 こりゃたまらんなあ』 おでんをつまみにビールを楽しむ。
***
店には、地元のおじさんとおばさん、そして私の3人の客。 おばちゃんと、他のお客さん達は、テレビを見ながら話している。 私も時々会話に加わりつつ、おでんを食べ、ビールを飲む。
『ここは、やっぱり夏が忙しいんですか?』 『いやあ、そうでもない。 キャンプや海水浴も、それほどじゃないよ』
『最近は、貝掘りをやらんようになったけえね』 『どうしたんですか?』 『貝があんまり育たんようになった』 『前はテレビで、エイが食べる言うとりましたね』 『そんなんもあるじゃろうね』
『民宿は人気があるようなよ。 広島から宴会に来る』 『予約しとらんとだめじゃけどね。 わしらも時々宴会をやるよ』
『餅撒きが有名じゃゆうてパンフレットに載っとりましたが』 『それが、最近はないんよ。 家を建てる人も少のうなったし、漁船を新造する人もあまり居らん』 『船を造ったときもやるんですか!』 『そうよ。 でも今の不景気じゃ、船を新しゅうつくろう言う人はおらんのじゃないか』 『そうですよねえ』
***
おでんがなくなり、ビールも空に。 『おばちゃん、何かご飯を作ってもらおう思うんじゃけど、何がええじゃろうか?』
『ほうじゃねえ、焼き飯を食べる人が多いよ』 『じゃあ、焼き飯。 ビールももう一本』
『あんたあ、釣りに来とるんか?』 『いいえ、違うんですよ。 先週、カヌーで来たんですが、キャンプできんかったから、今日は自転車で来てキャンプさしてもろうとるんです。 ここで一杯やりたかったんで』
『ほうね。 そういや、魚が好きなかったら、朝早うここに売りにくるで』 するとおばちゃんが、『今朝売りに来たけえ、明日はないよ』 『ほうか。 そりゃあ残念じゃったのう』
『ここに売りに来るんですか?』 『そうよ。 朝早いけどの』
『この時期は、牡蠣を焼いて食べるじゃろお。 昔はその時、いっしょに鳥を焼いて食べよった』 『鳥、ですか?』
『ほうよ、野鳥。 あれがおいしかったよ』
***
そのうちテレビでは、野球が始まった。 1回の日本の攻撃が終わったところで、心地良いほろ酔い状態に。
『ごちそうさまでした。 おいしかったです。 なんぼですか?』
支払いを終え、いろいろなお話を聞かせて下さったおじさんにも『おかげさまで、とても楽しかったです。 ありがとうございました』 そしておばちゃんには、『ありがとう。 また来ますけえ』
すると、『明日の朝ご飯は大丈夫?』 『はい、パンやうどんを買ってあります』
ふらりと立ち寄った一人の旅人の朝ご飯を心配して下さる。 必要なら、開店前に店を開けてご飯を作ってあげようかとの心遣い。 ほんとうに嬉しいことだ。 感謝感謝。来て良かった!
***
テントに戻り、シュラフに潜り込んで今日一日の出来事を思い出す。 至福の一時。
天気予報を確認した結果、急遽シーカヤックでのキャンプツーリングを取りやめて、自転車にテントをつんで訪れた似島。
様々な出合いに恵まれ、『あるくみるきく_旅するシーカヤックならぬ旅する自転車』となった、想い出深い旅に。
これまでシーカヤックで訪れた島は、瀬戸内だけで有人島/無人島含めて数年前の時点で100を越えている。 しかし今回の旅で再認識したのだが、その島を訪れたというだけではなく、訪れた島での様々な出合いを通じ、その島の歴史やそこに住む人々の生活を知り、あるくみるきくの精神で記憶にそして記録に残していく事にこそ価値があるのだと実感した。
それにしても似島は最高だ。 また一つ、お気に入りの島が増えたなあ。
*** はてさて、天気予報の結果は? ***
翌朝。 フェリーで呉に戻る途中、ケータイで風をチェック。
すると、広島湾は穏やかだが、予定していた島の付近では6m/sの強い北東風が吹いているとの事。 やはり、予定を変更していて正解だったようだ。
昼間に教えていただいた方向に歩いて行きながら、テントを張るのに良さそうな場所を探す。 住民の方の迷惑にならず、きれいで平らな場所。 『おー、ここなんか最高じゃん!』
ソロ用の小さなテントをパニアバッグから引っ張り出し、ポールを通して張る。 中にシートを敷き、マットを膨らませ、シュラフを広げると、アッと言う間に今日の寝床が完成。
どんな場所に旅しても、テントを張り終わるまではなんだか落ち着かない。 気に入った場所を見つけ、テントを張り終わると、ようやく自分の居場所が出来た感じがして、ホッと落ち着くのである。
しばらくすると、近くにある商店の前に置いてある椅子とテーブルに、漁から帰って来られた漁師さん達が三々五々集まり、宴会が始まった。 みるとそのなかに、昼間テントを張っても良いと言って下さったおねえさんが居られた。
『昼はありがとうございました。 ここに張ったんですが、良かったですか?』 『ここにしたん。 ここは潮は上がって来んかねえ?』と、周りの漁師さん達に聞いて下さる。
『なあに、潮が来てもプカプカ泳ぐ気じゃったらええじゃない』と、笑いながら漁師さん。 もう一人の方は、『今日は潮が大きゅうないけえ、大丈夫よ』
するとおねえさんは、『ちょっと北風があるが、大丈夫かねえ』 『ええ、ここならなんとか凌げると思います。 本当にありがとうございました』と私。
***
晩ご飯までは少し時間がある。 集落を散策してみるとしよう。
メインストリートを歩くと、肉屋さんが開いていた。 その近くには魚屋さんも営業中。
小さな島には魚屋さんがない所も多いのだが、ここには魚屋さんがあるんだ。 新たな発見。
似島峠にも上がってみた。
***
夕方、5時半過ぎ。 再び『みなとや食堂』の暖簾をくぐる。 店に入ると、いつもの席に。
『こんにちは。 来ました!』 『テントは張ったん?』
『はい、おかげさまで助かりました。 昼間にあの人に会えて良かったです』 『あの人は、ようここにも来るんよ。 あっさりしてええ人じゃろう』 『はい、ホンマですね。 夕方前から、近くの商店の前で、漁師さん達と楽しんでおられましたよ』
『何にする?』 『ビールとおでん。 おでんは何があります?』 『ここへ来て、好きなん選びんさい』
まずは瓶ビールをコップに注ぐ。 『トクトクトク。 シュワーッ』
『いただきます』 『ゴクリ、ゴクゴク。 プハーッ。 こりゃたまらんなあ』 おでんをつまみにビールを楽しむ。
***
店には、地元のおじさんとおばさん、そして私の3人の客。 おばちゃんと、他のお客さん達は、テレビを見ながら話している。 私も時々会話に加わりつつ、おでんを食べ、ビールを飲む。
『ここは、やっぱり夏が忙しいんですか?』 『いやあ、そうでもない。 キャンプや海水浴も、それほどじゃないよ』
『最近は、貝掘りをやらんようになったけえね』 『どうしたんですか?』 『貝があんまり育たんようになった』 『前はテレビで、エイが食べる言うとりましたね』 『そんなんもあるじゃろうね』
『民宿は人気があるようなよ。 広島から宴会に来る』 『予約しとらんとだめじゃけどね。 わしらも時々宴会をやるよ』
『餅撒きが有名じゃゆうてパンフレットに載っとりましたが』 『それが、最近はないんよ。 家を建てる人も少のうなったし、漁船を新造する人もあまり居らん』 『船を造ったときもやるんですか!』 『そうよ。 でも今の不景気じゃ、船を新しゅうつくろう言う人はおらんのじゃないか』 『そうですよねえ』
***
おでんがなくなり、ビールも空に。 『おばちゃん、何かご飯を作ってもらおう思うんじゃけど、何がええじゃろうか?』
『ほうじゃねえ、焼き飯を食べる人が多いよ』 『じゃあ、焼き飯。 ビールももう一本』
『あんたあ、釣りに来とるんか?』 『いいえ、違うんですよ。 先週、カヌーで来たんですが、キャンプできんかったから、今日は自転車で来てキャンプさしてもろうとるんです。 ここで一杯やりたかったんで』
『ほうね。 そういや、魚が好きなかったら、朝早うここに売りにくるで』 するとおばちゃんが、『今朝売りに来たけえ、明日はないよ』 『ほうか。 そりゃあ残念じゃったのう』
『ここに売りに来るんですか?』 『そうよ。 朝早いけどの』
『この時期は、牡蠣を焼いて食べるじゃろお。 昔はその時、いっしょに鳥を焼いて食べよった』 『鳥、ですか?』
『ほうよ、野鳥。 あれがおいしかったよ』
***
そのうちテレビでは、野球が始まった。 1回の日本の攻撃が終わったところで、心地良いほろ酔い状態に。
『ごちそうさまでした。 おいしかったです。 なんぼですか?』
支払いを終え、いろいろなお話を聞かせて下さったおじさんにも『おかげさまで、とても楽しかったです。 ありがとうございました』 そしておばちゃんには、『ありがとう。 また来ますけえ』
すると、『明日の朝ご飯は大丈夫?』 『はい、パンやうどんを買ってあります』
ふらりと立ち寄った一人の旅人の朝ご飯を心配して下さる。 必要なら、開店前に店を開けてご飯を作ってあげようかとの心遣い。 ほんとうに嬉しいことだ。 感謝感謝。来て良かった!
***
テントに戻り、シュラフに潜り込んで今日一日の出来事を思い出す。 至福の一時。
天気予報を確認した結果、急遽シーカヤックでのキャンプツーリングを取りやめて、自転車にテントをつんで訪れた似島。
様々な出合いに恵まれ、『あるくみるきく_旅するシーカヤックならぬ旅する自転車』となった、想い出深い旅に。
これまでシーカヤックで訪れた島は、瀬戸内だけで有人島/無人島含めて数年前の時点で100を越えている。 しかし今回の旅で再認識したのだが、その島を訪れたというだけではなく、訪れた島での様々な出合いを通じ、その島の歴史やそこに住む人々の生活を知り、あるくみるきくの精神で記憶にそして記録に残していく事にこそ価値があるのだと実感した。
それにしても似島は最高だ。 また一つ、お気に入りの島が増えたなあ。
*** はてさて、天気予報の結果は? ***
翌朝。 フェリーで呉に戻る途中、ケータイで風をチェック。
すると、広島湾は穏やかだが、予定していた島の付近では6m/sの強い北東風が吹いているとの事。 やはり、予定を変更していて正解だったようだ。
週末が近付いてくると天気予報をこまめにチェックし、ビールを飲みつつどこにキャンプツーリングに行くか具体的なイメージを固めていくのは、平日の夜の楽しみである。 そして、行き先を決める時の重要な要素の一つである天気予報は最近かなり精度が高く、特にシーカヤッカーが気にする『風の予報』は頼りにしている。
さて、この週末はどこにキャンプツーリングに行こうかな? 金曜日の夕方の天気予報を確認し、行き先を決めた。
金曜日のうちにシーカヤックをカートップし、キャンプ道具一式もパッキングして準備完了!
***
2009年3月7日(土) 朝起きると、まずは天気予報を確認。 すると、予定していた島の付近は、今日は穏やかだが日曜日は強い北東風が朝から吹く予報。 その海域が大荒れになる西風じゃないのが救いだが、それにしてもこれだけ吹くと、のんびりまったりツーリングにはなりそうもないなあ。
ひとまずコーヒーを飲んで、週末の予定を頭の中で組み立て直す。 。。。 。。。 。。。
『ようし、この週末は久し振りに自転車でキャンプツーリングに行ってみよう』 『目指すは、先週キャンプできなかった似島だ!』
***
まだ暗い早朝、凍えるような寒さの中、カートップしていたシーカヤックを降ろし、ORTLIEBの防水パニアバッグを引っ張り出す。 自転車のパニアバッグだと、シーカヤックほどの荷物運搬能力はないため、自転車旅用のミニマムパッキングに急遽変更。
テントはソロ用のシングルウオールテントに。 シュラフはダウンのコンパクトなやつにして、シルクのシーツで保温性を確保。 食事は『みなとや食堂』を基本とし、シェラカップ&イワタニジュニアバーナー、そして非常用のカロリーメイト。
iPodと本は、旅のお供として欠かせない。 最小限の着替えやヘッドランプなども含めて、リア用の二つのパニアバッグにピッタリと収まった。
***
今回は自転車旅とはいえ、基本は似の島一周を漕ぐくらいで、似島までは瀬戸内らしいフェリーを使った旅にするつもり。
と言う訳で、ネットでフェリーの時刻をチェックしプリントアウト。 後は、みなとや食堂が営業するか否かだけである。
電話を掛け、『もしもし、今日は開いていますか?』 『ええ、やってますよ』 『夜は何時まで?』 『だいたい、7時くらいまでかねえ』 これで準備はすべて完了!
『じゃあ、行って来るけん。 明日は昼前には帰るよ』と妻に告げ、家を出発した。 久し振りとなる自転車でのキャンプツーリング。 楽しみだなあ。
***
まずは、呉港へ。 家から半時間ほどで到着。
もう10年近く前に購入した古いSPECIALIZEDのMTB。 タイヤは街乗り仕様のセミスリック。 ペダルには、今時見ないクリップを装着。 そしてリアには、ORTLIEBの防水パニアバッグ。 ライトはミニマグライト。『うーん、旅気分』
***
呉港からフェリーに乗り込み、出航。
宇品港までは45分ほどの船旅である。 途中、左手には『安芸の小富士』と称される似島が見える。
***
宇品港に入港した時、ちょうど似島行きのフェリーが出発するのが見えた。 そう、この松山~呉~広島フェリーの到着時刻と、似島行きのフェリーの出発時刻が同じなのである。
次のフェリーまで1時間半。 宇品の街をゆっくりと自転車で巡り、港前の公園でしばし休憩。
***
12時30分のフェリーに乗り込み、似島へ。 20分ほどの船旅である。
フェリーを降りると、まずは『みなとや食堂』へ。
『こんにちは』と店に入り、先週と同じ席に座る。 『中華そば一つ下さい』
***
おいしい中華そばを食べていると、先に来ておられたお客さんも帰っていかれ、地元のおねえさんと店のおばちゃん、そして私の3人になった。
『あのう、この近くでキャンプできるところはありませんか?』と聞いてみた。 すると、地元のおねえさんが『そうよねえ。 △△は連絡すりゃあキャンプできるけど、今は季節外れじゃけえ整備しとるかどうかわからんね』
『実は先週、カヌーで漕いで来たんですが、キャンプできる場所が分からずに帰ったんですよ。 その時に、ここで中華そばとおでんを食べたら美味かったから、今日はこの島でキャンプして、夜はここでおでんを食べながらビールを飲もう思うて来たんです。 ○○へ行けば、テント持ち込みでキャンプできるとは聞いとるんですけど』
『ほうね。 じゃあ朝電話してきたんはあんたじゃったんね』と店のおばちゃん。 『はい。 そうなんですよ。 せっかく来ても、店が閉まっとったら何しに来たんか分からんですけんね』
するとおねえさんは、『○○行きゃあキャンプはできるじゃろうけど、遠くて不便じゃろ。 うちのは漁師じゃけえ、その漁港の近くでテント張ってもええじゃろう言うて、一言いうとったげるよねえ。 別に悪い事すりゃあすまあ』 『もちろんです。 自転車で似島を一周して、夜はここで一杯飲みたいだけなんです』
『じゃあ、あそこら辺でテント張りんさい。 いうとったげる』 『ありがとうございます』
漁師の奥さんらしい、さっぱりとした気っ風の良いおねえさんと、店のおばちゃんと、しばし会話で盛り上がる。 私は、カヌーにテントを積んで、瀬戸内の島を旅して回っている事を説明し、おねえさんからは、似島の漁の事を伺った。
『冬はナマコ。 じゃけど、ナマコはそろそろ終わり』 『減っとるかって? そりゃあナマコの漁もだんだん減っとる』
『ナマコが終わったら、次はエビじゃね。 このわた? うちらは作って売ったりはしよらん。 袋詰めのなまこだけ。 このわたは、家で作って食べるだけよ。 珍味珍味』
『この食堂で、よう宴会するんよ。 台所代わりに使わしてもろうて、チヌが採れたらチヌを持ち込んで料理して食べる。 広島から来た人が偶然一緒になったりしたら、そりゃラッキーよね。 料理を一緒に食べさしちゃる。 もちろんその分のお金はもろうたりせんし。 あんたも、そういう時に一緒じゃったらええね。 顔を覚えとくわ』
***
『ごちそうさまでした。 じゃあ、テント張らしてもらいます』 『今から自転車で一周して来るんじゃろ。 帰ってきたら張っときんさい』 『はい、ありがとうございます。 おばちゃん、また夜にきますけん』
自転車に乗り、時計回りで似島一周に出発。
海のすぐ傍の狭い道を漕ぎ進むサイクリングは爽快である。 広島湾の奥なのだが、海は澄んできれいだ。
瀬戸内らしい景色が堪能できる、快適なサイクリングコース。 牡蠣棚も見える。 牡蠣屋さんの前には養殖に使うプラスチックパイプがきれいに整理された状態で大量に置かれていた。
自然の家には、シーカヤックが。 自転車で来て、ここで借りて乗るのもいいかも。
島の南側はアップダウンもあり、結構良い運動に。 約10kmの爽快なサイクリングを終え、フェリー乗り場のある集落に戻ってきた。
さあて、テントを張るとするか。
さて、この週末はどこにキャンプツーリングに行こうかな? 金曜日の夕方の天気予報を確認し、行き先を決めた。
金曜日のうちにシーカヤックをカートップし、キャンプ道具一式もパッキングして準備完了!
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2009年3月7日(土) 朝起きると、まずは天気予報を確認。 すると、予定していた島の付近は、今日は穏やかだが日曜日は強い北東風が朝から吹く予報。 その海域が大荒れになる西風じゃないのが救いだが、それにしてもこれだけ吹くと、のんびりまったりツーリングにはなりそうもないなあ。
ひとまずコーヒーを飲んで、週末の予定を頭の中で組み立て直す。 。。。 。。。 。。。
『ようし、この週末は久し振りに自転車でキャンプツーリングに行ってみよう』 『目指すは、先週キャンプできなかった似島だ!』
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まだ暗い早朝、凍えるような寒さの中、カートップしていたシーカヤックを降ろし、ORTLIEBの防水パニアバッグを引っ張り出す。 自転車のパニアバッグだと、シーカヤックほどの荷物運搬能力はないため、自転車旅用のミニマムパッキングに急遽変更。
テントはソロ用のシングルウオールテントに。 シュラフはダウンのコンパクトなやつにして、シルクのシーツで保温性を確保。 食事は『みなとや食堂』を基本とし、シェラカップ&イワタニジュニアバーナー、そして非常用のカロリーメイト。
iPodと本は、旅のお供として欠かせない。 最小限の着替えやヘッドランプなども含めて、リア用の二つのパニアバッグにピッタリと収まった。
***
今回は自転車旅とはいえ、基本は似の島一周を漕ぐくらいで、似島までは瀬戸内らしいフェリーを使った旅にするつもり。
と言う訳で、ネットでフェリーの時刻をチェックしプリントアウト。 後は、みなとや食堂が営業するか否かだけである。
電話を掛け、『もしもし、今日は開いていますか?』 『ええ、やってますよ』 『夜は何時まで?』 『だいたい、7時くらいまでかねえ』 これで準備はすべて完了!
『じゃあ、行って来るけん。 明日は昼前には帰るよ』と妻に告げ、家を出発した。 久し振りとなる自転車でのキャンプツーリング。 楽しみだなあ。
***
まずは、呉港へ。 家から半時間ほどで到着。
もう10年近く前に購入した古いSPECIALIZEDのMTB。 タイヤは街乗り仕様のセミスリック。 ペダルには、今時見ないクリップを装着。 そしてリアには、ORTLIEBの防水パニアバッグ。 ライトはミニマグライト。『うーん、旅気分』
***
呉港からフェリーに乗り込み、出航。
宇品港までは45分ほどの船旅である。 途中、左手には『安芸の小富士』と称される似島が見える。
***
宇品港に入港した時、ちょうど似島行きのフェリーが出発するのが見えた。 そう、この松山~呉~広島フェリーの到着時刻と、似島行きのフェリーの出発時刻が同じなのである。
次のフェリーまで1時間半。 宇品の街をゆっくりと自転車で巡り、港前の公園でしばし休憩。
***
12時30分のフェリーに乗り込み、似島へ。 20分ほどの船旅である。
フェリーを降りると、まずは『みなとや食堂』へ。
『こんにちは』と店に入り、先週と同じ席に座る。 『中華そば一つ下さい』
***
おいしい中華そばを食べていると、先に来ておられたお客さんも帰っていかれ、地元のおねえさんと店のおばちゃん、そして私の3人になった。
『あのう、この近くでキャンプできるところはありませんか?』と聞いてみた。 すると、地元のおねえさんが『そうよねえ。 △△は連絡すりゃあキャンプできるけど、今は季節外れじゃけえ整備しとるかどうかわからんね』
『実は先週、カヌーで漕いで来たんですが、キャンプできる場所が分からずに帰ったんですよ。 その時に、ここで中華そばとおでんを食べたら美味かったから、今日はこの島でキャンプして、夜はここでおでんを食べながらビールを飲もう思うて来たんです。 ○○へ行けば、テント持ち込みでキャンプできるとは聞いとるんですけど』
『ほうね。 じゃあ朝電話してきたんはあんたじゃったんね』と店のおばちゃん。 『はい。 そうなんですよ。 せっかく来ても、店が閉まっとったら何しに来たんか分からんですけんね』
するとおねえさんは、『○○行きゃあキャンプはできるじゃろうけど、遠くて不便じゃろ。 うちのは漁師じゃけえ、その漁港の近くでテント張ってもええじゃろう言うて、一言いうとったげるよねえ。 別に悪い事すりゃあすまあ』 『もちろんです。 自転車で似島を一周して、夜はここで一杯飲みたいだけなんです』
『じゃあ、あそこら辺でテント張りんさい。 いうとったげる』 『ありがとうございます』
漁師の奥さんらしい、さっぱりとした気っ風の良いおねえさんと、店のおばちゃんと、しばし会話で盛り上がる。 私は、カヌーにテントを積んで、瀬戸内の島を旅して回っている事を説明し、おねえさんからは、似島の漁の事を伺った。
『冬はナマコ。 じゃけど、ナマコはそろそろ終わり』 『減っとるかって? そりゃあナマコの漁もだんだん減っとる』
『ナマコが終わったら、次はエビじゃね。 このわた? うちらは作って売ったりはしよらん。 袋詰めのなまこだけ。 このわたは、家で作って食べるだけよ。 珍味珍味』
『この食堂で、よう宴会するんよ。 台所代わりに使わしてもろうて、チヌが採れたらチヌを持ち込んで料理して食べる。 広島から来た人が偶然一緒になったりしたら、そりゃラッキーよね。 料理を一緒に食べさしちゃる。 もちろんその分のお金はもろうたりせんし。 あんたも、そういう時に一緒じゃったらええね。 顔を覚えとくわ』
***
『ごちそうさまでした。 じゃあ、テント張らしてもらいます』 『今から自転車で一周して来るんじゃろ。 帰ってきたら張っときんさい』 『はい、ありがとうございます。 おばちゃん、また夜にきますけん』
自転車に乗り、時計回りで似島一周に出発。
海のすぐ傍の狭い道を漕ぎ進むサイクリングは爽快である。 広島湾の奥なのだが、海は澄んできれいだ。
瀬戸内らしい景色が堪能できる、快適なサイクリングコース。 牡蠣棚も見える。 牡蠣屋さんの前には養殖に使うプラスチックパイプがきれいに整理された状態で大量に置かれていた。
自然の家には、シーカヤックが。 自転車で来て、ここで借りて乗るのもいいかも。
島の南側はアップダウンもあり、結構良い運動に。 約10kmの爽快なサイクリングを終え、フェリー乗り場のある集落に戻ってきた。
さあて、テントを張るとするか。