この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

亀は意外と速く泳ぐ。

2006-02-11 16:25:29 | 新作映画
三木聡監督、『亀は意外と速く泳ぐ』、DVDにて鑑賞。

完璧なまでに計算され尽くしたゆるさ。

完璧な映画っていうものにはそうそうお目に掛かれるものではないです。
大体観終わったあと、
「すっごい面白い映画だったけど、ヒロインが不っ細工なのが玉に瑕だな」とか、
「あのシーン、自分が脚本家だったら別の台詞にするんだけど」とか、
「完成度の高い映画だったけど、惜しむらくは終わり方が納得いかない」なんてふうに、
ついつい脳内ツッコミをしてしまいませんか。
そのツッコミが的を射たものかどうかはさておき。
それが『亀は意外と速く泳ぐ』にはないんです。
まさに“完璧な”映画。
ではどのように完璧なのかというと、そのベクトルはゆるさに向けられているわけなんです。
作品時間90分の間、ただひたすらゆるい空気が流れています。
ではそんなにゆるい作品であるなら退屈なんじゃないかって思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはまーったくありません。
画面の隅々にまで作り手によって計算され尽くしたゆるいギャグがさりげなくちりばめられているので、気が抜けません。
例えばラーメン屋の店内の張り紙が「冷やし中華、始めました」と思いきや、「冷やし中華、始めたい」だったり、
商店街の豆腐屋の屋号が『藤原豆腐店』だったり、
そんなの、誰も気づかないんじゃないの?といったギャグが目白押しなんです。
気が抜けないといえば不意に感動的なシーンが始まるのでそれもまた気が抜けないんです。
ラーメン屋を開店して以来“そこそこ”の味のラーメンを作ってきた店主がラーメン屋最後の日、腕によりを掛けて極上のラーメンを作ります。
「どうだよ、俺が本気になればこんな美味いラーメンが作れんだぜ」
ラーメンをすすりながら、店主は同じスパイ仲間の一人に少しだけ誇らしげに言うんですよ。
泣かせます。
あ、説明が必要でしたね、ラーメン屋の店主はスパイで、スパイは目立っちゃダメってことで味が評判になったりしないようにあえて“そこそこ”のラーメンを作り続けてきたのです。
そう、言い忘れてましたが、この作品は実はスパイ物なんです。
とはいってもストーリーはさほど重要でなし。
というか逆にストーリーを語れば語るほどこの映画はワケがわかんなくなると思うので割愛させてもらいます。
でもテーマは重要かな、それは何かというと『脱:日常』。
日々同じことの繰り返しで毎日が退屈でたまらない!という方には『亀は意外と速く泳ぐ』、お薦めです。
心が癒されること請け合いですよ!
といってもあくまで効果はゆるめですけどね。笑。
コメント (4)
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