ブログ 「ごまめの歯軋り」

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平成経済 衰退の本質

2021年04月15日 | 書評
京都下京区 「東寺 御影堂」

金子勝 著 「平成経済 衰退の本質」 

岩波新書(2019年4月)

第1章 資本主義は変質した  (その2)

① バブルを繰り返す時代へ (その2)
1990年代初期の不動産バブル崩壊の時は、公的資金が注入され整理信託公社を受け皿にして、経営責任を問いつつも不良債権を買い取ってS&L(貯蓄銀行)を中心に合併救済策が講じられた。しかしアメリカにおいても大手金融機関が次々破綻したリーマンショックでは本格的な不良債権処理は行われなかった。ゼロ金利政策は柔軟性のない政策で、FRBは量的金融緩和政策をとった。FRBはTALF制度に基づいて、金融市場から公債だけでなく不動産担保証券MBSを買い取った。2008年のFRBの総資産は約95兆円だったが10年には242兆円となり、14年には473兆円となって横ばいとなった。日銀は安倍政権の下でバブル崩壊に直面しているわけではないのに、ETF(株式投信)を積極的に買い入れる政策を拡大した。日銀がETFを買えば証券会社はそれに見合った株を買うので、株価全体を引き上げる効果がある。中央銀行が株を買って「官製相場」を作るという異例の政策に踏み込んだ。リーマンショック後状況は一変し、中央銀行が積極的に金融市場に介入しバブルを作り出す役割に突き進んだ。金融自由化を軸としたグローバリゼーションは、情報通信技術の発達によって加速された。情報通信業は昔から軍事産業として国家戦略と不可分に結びついていた。アメリカ国防省はアングロ・サクソン国家五ヶ国と連携して情報監視システムを支えている。一方民間でもグーグル、アマゾン、ファイスブック、アップルGAFA企業が個人情報を集積し情報独占を狙っている。いまやフィンテックという情報技術と金融の融合は中央銀行でさえ捉えきれない金融取引を行っている。仮想通貨ピットコインがその例である。さらに情報工学を使った先物取引が流行しトレンドを分析し分散投資し収益を上げるトレンドフォロー型運用も台頭してきた。変動だけを追いかける高頻度トレーディングHFQが日米の株式市場を支配してきた。いまや東京証券取引所の取引の主役は2018年には68%が外国人投資家であった。日銀や年金の株式市介入を利用して利益を上げている。

(つづく)