岸田政権は12日、「土地規制法」(住民監視法=2021年6月16日成立、22年9月20日施行)の対象地域として、石垣、宮古、与那国など沖縄県内39カ所を指定しました。8月ごろ正式決定します。「政府は今後、沖縄本島の米軍、自衛隊施設なども追加指定していく方針」(13日付琉球新報)です。(写真左・中は指定された陸自石垣駐屯地周辺と与那国駐屯地)
指定された地域の住民からは、「法の恣意的運用への懸念や、規制によって住民が声を上げづらくなるとの恐れから「戦前回帰だ」と批判する声」(同琉球新報)が挙がっています。
指定された地域はいずれも自衛隊の拡張・ミサイル基地化が進んでいる所。
「こうした施設が最初に指定されたのは、自治体レベルでの反対が起こりにくいとみられたことに加え、そこで住民運動を抑え込む必要が特に大きいと考えたのだろう」(仲松正人弁護士・土地規制法対策沖縄弁護団、13日付沖縄タイムス)
「土地規制法」の本質を再確認しておきましょう。
「この法律は、治安立法であることをその本質的な特徴としている。今日の治安立法に共通するものは、「安全保障」の絶対視を前提に、反体制的とみなした民衆の運動をその思想において抑え込むこと、法の文言を不明確なものにしておくことで人々の自発的活動を萎縮させ、封じ込めること、そして権力の、政府の中でも特に首相への集中である。…土地規制法は、まさにこうした治安立法の特徴のすべてを具えた悪法である」(小林武・沖縄大客員教授=憲法、2021年9月30日付琉球新報)
銘記しなければならないのは、治安立法と戦争は一体不可分であり、治安立法の強化は戦争前夜だということです。
1920年代~40年代を振りかえってみましょう。
1928・6 治安維持法改悪(死刑・無期刑追加)
31・9 関東軍による柳条湖の鉄道爆破(満州事変)
37・7 盧溝橋事件(日中戦争開始)
38・4 国家総動員法公布
41・1 新聞紙制限令公布
3 国家総動員法改悪(政府権限大幅拡張)
同 治安維持法再改悪(予防拘禁追加)
12 御前会議で開戦決定
今回の土地規制法の沖縄指定は、昨年12月の「軍拡(安保)3文書」の実践です。日本はいよいよ戦時国家づくりに具体的に踏み出しました。
「政府は…2024年秋ごろまでに複数回に分け、全国で計約600カ所を指定する方針だ」(13日付沖縄タイムス)
1年半で全国いたるところに「土地規制法」の網をかけ、住民を監視し、反政府的言動を徹底的に抑え込もうというわけです。今回の沖縄指定はその突破口です。
沖縄では琉球新報、沖縄タイムスをはじめメディアが大きく報道し、「土地規制法対策沖縄弁護団」も結成されています。
ところが、「本土」メディアのこの問題についての報道は壊滅的です。したがって「本土」市民には基本的情報も与えられていません。まるで他人事です。
きわめて危険な状況です。「土地規制法」=住民監視法は日本を戦争国家にする最悪の治安立法であることを共通認識にし、同法の撤廃、沖縄の自衛隊増強・ミサイル基地化を許さない世論広げていくことが死活的に重要です。