アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

加藤登紀子さんの「非核・非戦論」と「はだしのゲン」

2023年05月13日 | 国家と戦争
  

 11日の朝日新聞デジタル「核といのちを考える」連載で、歌手の加藤登紀子さんのインタビューが載りました。ウクライナ戦争に関する部分を抜粋します(写真中は朝日新聞デジタルから)。

< 人というものは、分断されるはずのない命としてつながっているんだっていうのが、私の根底からの信念です。だから、戦争の一方の側を非難したり、一方の側の人を助けたりするために歌ったりは、私はしたくない。

 人が分断されているということが悲しい。分断させている力が、この世の中にいっぱい働いているということは事実です。それを乗り越えたいと思い、そう願いを込めて歌ってきました。

 広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)をするんだったら、「非核・非戦」というシンプルな立場を表明してほしいんです。戦争はできるだけ早く終わらさなければいけない。

 ウクライナもロシアも戦争当事者というものは、なかなか戦争をやめられないんですね。私は、日本が世界史の中で最も愚かな戦争をした国だって、恥ずかしいと思って生きてきました。日本の戦争をもっと早く終わらせるように世界が動いてほしかったって思うんです。

 ウクライナの人にとっても、早く終わらないと不幸が大きくなるだけです。世界の力が、世界の英知が、この戦争を終わらせなきゃいけない。当事者にはできないことです。

 私たちは日本人として、あの戦争を終わらせることができなかった。人々は声を上げることはできなかった。戦争というものは本当に恐ろしいものだなと思います。

 漫画「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さんが作詞した「広島 愛の川」。この曲をレコーディングした時に、「ゲン」の作品に出てくる言葉を引用した朗読も収録しました。「愛の川」のメロディーにのせ、1945年7月16日に原爆実験が成功して、8月6日に原爆が投下されるまでの過程を朗読したものです。

 そこでは、もし日本が7月26日のポツダム宣言をすぐに受諾していれば、広島に原爆が落とされなかったかもしれない。それを思うと、夜中でも起きちゃうぐらい悔しい。もし日本が3カ月早く終戦していれば、沖縄戦もなかったし、広島、長崎の原爆投下はなかったでしょう。戦後の世界はまったく違ったものになっていたはず。

 中沢さんも書いているけど、日本人は最後の一人まで戦うんだって、そんな愚かな戦争はあるものか。戦争は国を守るためにやっているんじゃなかったですか。この国の人たちは全員死んでもいい。そんな戦争ってあり得ないじゃないですか。

 戦争というものが持っている根本的な非論理性ですよね。おかしいんですよ、守るために戦うって。守るために死なせているんですから。不条理の極致ですよね、戦争は。

 日本は被爆国だっていうけれど、そういう時代に世界を引っ張り込んだのは、日本の責任でもあると、私は思います。

 日本がなぜドイツよりも3カ月、終戦を遅らせたのか。私の全人生をかけて一番悔しいことですよ。戦争を長引かせるということは、世界を変えるんです。まさに同じことを今、ウクライナとロシアの戦争で私たちは見ているのです。

 少しでも早く終わらせないと、すごく大変な「戦後」が来てしまいます。>

 痛切な訴えに心が揺さぶられます。

 加藤さんが「全人生をかけて一番悔しい」という終戦(ポツダム宣言受諾)の遅れ。その最大の責任者が、「国体」=天皇制護持にこだわった天皇裕仁であったことを忘れることはできません。

 加藤さんが最も訴えているのは、「国」を超えた命の尊さ。戦争のおろかさ。だからこそ一刻も早くウクライナ戦争を止めなければならないということ。

 中沢啓治さん(写真右)作詞の「広島 愛の川」(写真左)で、加藤さんが朗読した「語りヴァージョン」を、中沢さんはこう結んでいます。

「元(ゲン)は できることなら 世界中の国々に、キレイな虹の橋をかけて そして国境も無く 戦争のない 平和な世界がつくれたら 素晴らしいなと いつまでも いつまでも 虹をみつめていた…」

 命の尊さに「国境」はないことを、改めて胸に刻みたいと思います。
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