21日終了したG7 広島サミットで、唯一注目されたのは、ウクライナ・ゼレンスキー大統領とブラジル・ルラ大統領の会談でした。ルラ氏が4月15日、グローバルサウスがウクライナ戦争の停戦を仲介するという和平案を明らかにしていたからです(4月25日のブログ参照)。
しかし、予定されていたゼレンスキー・ルラ会談は行われませんでした。なぜなのか。どちらが避けたのか。両氏の主張(いずれも公式記者会見での発言)は真っ向から対立しています。
ゼレンスキー氏は21日夜の記者会見でこう述べました。
「私は(G7 で)世界各国のリーダーと会ったが、ブラジル大統領とは会えなかった。スケジュールが理由だったのだと思う」「(会談が実現しなかったことに失望しているかと問われ)いいえ。彼の方が失望しているのではないだろうか」(22日付朝日新聞デジタル)
一方、ルラ氏は22日午前、広島市内で記者会見しこう述べました。
「会談の予定はあり、私は話したいと思って待っていたが会えなかった」(22日朝日新聞デジタル)
「うんざりしている。ゼレンスキー大統領と議論するために会談を予定していたのだから」(22日TBS「ニュース23」)
朝日新聞デジタルの同記事はこう続きます。
<会見によると、ルラ氏は21日午後3時15分からゼレンスキー氏と二国間会談をする予定があり、ホテルで待っていたが、ゼレンスキー氏は姿を見せなかったという。ルラ氏は「彼は大人だ。来られなかったのは別の理由があるのだろう」と語った。>
どちらがウソを言っているのか、限られた情報で断定は難しいですが、私はルラ氏の発言に真実みを感じます。いずれにしても確かなことは、この日の会見でもルラ氏は、G7 を批判し即時停戦の必要性を強調したことです。
<ルラ氏は22日の記者会見で、「G7 は戦争の話をする場ではない」と批判。「交渉したいという意思があれば、どこでも行く」と「仲介者」としての役割に意欲を示した上で、「ゼレンスキー氏とも、プーチン氏とも会いたい」と発言した。「合意は同じテーブルにつくことから始まる。双方とも100%譲らないというのは無理だ」とも述べ、両国に譲歩を求めた。>(22日付朝日新聞デジタル)
<ルラ大統領は、「ロシアとウクライナの戦争については、G7 ではなく国連で議論するべきだ」と述べ、先進国だけが参加できる現在の(G7 の)枠組みに疑問を呈した。「死者を出さないためにも今すぐ停戦すべきだ」と述べた。>(22日昼のANN=テレビ朝日ニュース)
<「交渉がなければこの戦争は長期化するだろう」と述べ、中国やインドなどと和平に向けて取り組む姿勢を示した。>(22日昼のNHKニュース)
こうしたルラ氏の考え・主張は、ゼレンスキー氏にとっては容認しがたいものでしょう。会談が実現していれば、ゼレンスキー氏はルラ氏のこの停戦・和平案を直接聞くことになったはずです。
今回のG7 広島サミットで改めて浮き彫りになったのは、「大反攻」のために欧米諸国に一層の兵器供与・軍事支援を求めるゼレンスキー大統領、それに呼応してさらなる軍事支援を約束した欧米・NATO諸国と日本、そして中立的立場から即時停戦へ向けて和平交渉の仲介を行おうとするブラジルはじめグローバルサウス―という構図です。その第3の立場・世論を大きくしていくことが、これ以上犠牲者を出さないために、緊急に求められているのではないでしょうか。