「パパゲーノ」という言葉があることを、20日のNHK特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(主演・伊藤沙莉)で初めて知った。
「パパゲーノ」とは、「死にたい気持ちを抱えながら、その人なりの理由や考え方で“死ぬ以外”の選択をしている人」のことだそうだ。名前の由来は、モーツァルトのオペラ『魔笛』に登場する自殺を思いとどまった男からきているそうだ。
20代の「パパゲーノ」ももは、同じく生きづらさの中で「楽しいこと、わくわくすること」を見つけている人、見つけようとしている人々をネットで探し、会うために仕事を辞めて旅に出る。テントを背負って、野宿する旅だ(写真)。
このドラマに「お説教」はない。「解答」もない。Eテレ「ハートネットTV」なども担当している演出の後藤怜亜さんは、「否定はせず、でも助長もしないことを両立させる作品にすることを大切にした」と言っている(NHKサイト)。なるほど。
自分は「パパゲーノ」ではないけれど、生きづらい中で「楽しいこと、わくわくすること」に出会いたいという気持ちに強く共感する。
アルバイト先でコロナ陽性者が出た。これだけ「過去最多」が続けば不思議はない。その分、シフトが増えた。自分にも感染のリスクは当然ある。3年におよぶ「ウイズ・コロナ」は精神的にきつい。自由に旅にも出られない。もちろん、みんながそうだ。
ウクライナ戦争は出口が見えない。自分にとってきついのは、「情報戦」の中で「正しい」と断言できる情報が得られないことだ。だから確信を持ったことが言えない。でも、言わねばならない。それでヒビが入る人間関係もある。
貧困と差別がなくならない社会。むしろ深まっている社会。この先日本(世界)がより良い方向へ向かうとはどうしても思えない。少なくとも自分が生きている間は。
そう長くない残りの人生で、何ができるだろうか。何かできるだろうか。そもそも凡夫の身で何かしようと考えること自体が傲慢か…。
「ももさん」の脚本を書いた加藤拓也さんは、「解決できないことは、無理に解決しなくてもいい。そのままでもいいんだよ、という優しさが全面に出ている作品になっている」と語っている(NHKサイト)。
「解決できないことは、無理に解決しなくてもいいんだよ」―確かにそれは大きな救いだ。生きづらい社会を生きる1つの指針だろう。
でも、今の自分にそれは言えない。この社会には解決しなければならないことがたくさんある。無理にでも解決したいと思う。だが解決する力も解決される展望もない。それはけっこうきつい。
だから、「楽しいこと、わくわくすること」に出会いたい。どうすれば出会えるだろう。「パパゲーノ」のみなさんと一緒に、探し続けたい。