7月23日に民主活動家を死刑にしたミャンマー国軍(写真左。写真中は死刑に抗議する人々)。30日には日本人ジャーナリストが拘束されました。そのミャンマー国軍の幹部を、自衛隊が組織的に訓練している、という驚くべき事実が、日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」最新号(7月25日付)に掲載されました。
記事を投稿したのは、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの笠井哲平氏(アジア局プログラムオフィサー)。記事の要旨は次の通りです。
< 日本政府は2015年以降、外国籍の軍人の教育や訓練を認める自衛隊法第100条の2の規定に基づき、ミャンマー国軍の軍人を受け入れてきた。
訓練は防衛大臣の承認の上、防衛省管轄の防衛大学校や自衛隊施設で実施されている。
防衛省はクーデター(2021年2月1日)後も2名の士官候補生と2名の士官を受け入れ、22年には、再度2名の士官候補生と2名の士官を受け入れた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは21年12月、防衛省に「軍事訓練の停止」を要求。防衛省は訓練を受けた国軍の軍人が帰国後何をしているか把握していないと説明した。しかし、22年4月26日の衆院安保委員会で、防衛省は「今どういうポストについているか、一定程度把握している」と述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチと人権団体ジャスティス・フォー・ミャンマーの調査で、16年8月から17年3月に日本で訓練を受けたラン・モウ国軍空軍中佐がマグウェイ空軍基地に所属していることが分かった。現地メディアは同中佐が無差別空爆に直接関与したと名指しで批判している。
日本政府がミャンマー国軍の軍事訓練を続ける限り、「人権外交」は建前にすぎない。ただちに軍事支援を停止するべきだ。>
ヒューマン・ライツ・ウォッチのWEBサイト(5月23日)によれば、ジャスティス・フォー・ミャンマーも、「ミャンマー国軍が残虐な犯罪を犯していることを知りながら、日本が国軍の幹部候補生の訓練を続けることは許しがたい」と厳しく批判しています。
日本の国会は昨年6月、「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難」する決議を可決しました。防衛省・自衛隊による国軍幹部の訓練(軍事支援)は、この決議にも反します。国会(国会議員)はこの事実を把握しているのでしょうか。
軍事評論家の小西誠氏(元自衛官)は、「近年、いわゆる制服組の「現場」の権限の肥大化が顕著」だと指摘しています(6月9日付琉球新、6月10日のブログ参照)。国会決議にも反するミャンマー国軍支援は、制服組の「権限肥大化」の1例といえるでしょう。
また青井未帆・学習院大教授(憲法学)は、「防衛法制」と国会の関係について、「安全保障部門の常時監視や特定秘密へのアクセスなど、国会が統制する制度は十分整備されていない。これは重大な欠陥である」と警鐘を鳴らしています(7月30日付中国新聞=共同)。
そもそも自衛隊の「文民統制」とは名ばかりですが、現場=制服組の危険な暴走がますます加速しています。
自衛隊は憲法違反の軍隊です。それは戦争(交戦)と市民弾圧の2つの側面を持ちますが、ミャンマー国軍支援は、自衛隊が日本の市民を弾圧するだけでなく、軍事訓練・支援によって他国の軍隊の民衆弾圧・虐殺にも手を貸す存在であることを浮き彫りにしています。
自衛隊の知られざる新たな加害性です。