NHKは12日、東京オリ・パラについての「世論調査」結果を発表しました。それによると、「これまでと同様に開催」2%、「観客数を制限して開催」34%、「無観客で開催」25%、「中止」32%、「その他・わからない・無回答」7%―となっています(写真左)。観客の形態はともかく今年7月に予定通り「開催」すべきだという人が61%で「中止」を大きく上回っていることになります。
しかしこれはきわめて恣意的な方法で行われた、偏向「世論調査」であり、五輪開催についての市民の意識を反映したものではまったくありません。恣意的手法は2つあります。
1つは、誘導質問です。
質問は「東京オリンピック・パラリンピックについて、IOC=国際オリンピック委員会などは開催を前提に準備を進めています。どのような形で開催すべきだと思うか聞きました」(NHKサイト)というもの。「開催」を前提に、「どのような形で」と聞いているのです。これでは上記のように「開催」の回答が多くなるのは当然です。まさに誘導質問にほかなりません。
そうした誘導にもかかわらず「中止」が32%あったことは、いかに「中止」の世論が強いかを逆に証明するものといえるでしょう。
もう1つは、「さらに延期」の選択肢をなくしたことです。
NHKの今年1月までの「世論調査」には、「さらに延期すべき」という選択肢がありました。ちなみに1月の結果は、「開催すべき」16%、「中止すべき」38%、「さらに延期すべき」39%、「わからない・無回答」7%でした。この時の質問は、「ことしに延期され夏の開幕に向け準備が進められている東京オリンピック・パラリンピックについて聞いた」(同サイト)というものでした。
それが2月の調査から質問方法が前述のように変わり、選択肢から「さらに延期すべき」が消え上記のような選択肢になりました。「さらに延期すべき」と思う人を「観客を制限して行う」か「無観客で行う」に吸収したのです。
「さらに延期すべき」の選択肢が消されたのは、大会組織委の森喜朗前会長らが「再延期はありえない」と述べたことを受けたものであることは明らかです。
NHKの「世論調査」は、組織委の意を体して、「さらに延期すべき」すなわち今年7月の実施に反対の世論を抹殺するものと言わねばなりません。
同時期に発表された他の世論調査では、共同通信(13日)が、「今夏開催するべきだ」24・5%、「再延期すべきだ」32・8%、「中止するべきだ」39・2%。朝日新聞(13日)では、「今年の夏に開催する」28%、「再び延期する」34%、「中止する」35%となっています。いずれも「中止」が最も多く、「再延期」がそれに続き、合わせて7割以上が「今夏の開催」に反対しています。NHKの「調査」はこれと真逆の結果をつくりだしたのです。
NHKは4月1日の「聖火リレー」(長野、写真中)の特設サイト映像でも、「「オリンピックに反対」といった声が聞こえてきた直後に音声が約30秒間途切れ、音声が戻った時には反対などの声は聞こえなくなっていた」(12日の朝日新聞サイト)というトリックで、「五輪反対」の声を映像から消しました。
こうしたNHKの相次ぐ作為は、事実を公平・公正に報道するというメディアの鉄則を踏みにじるものであり、政権に追随する「国営放送」の醜悪さを露呈したものと言わねばなりません。