アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

朝鮮半島緊迫の元凶は米韓合同軍事演習

2017年10月17日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

       

 アメリカは16日、朝鮮半島周辺で米韓合同軍事演習を強行しました(20日まで)。原子力空母ロナルド・レーガン(写真左)、原子力潜水艦ミシガン、韓国海軍イージス艦、「死の白鳥」の異名をとるB1B戦略爆撃機、F15戦闘機、「斬首作戦」の特殊部隊などが参加します。

 演習開始にあたってティラーソン米国務長官は「最初の爆弾が落ちるまで、外交努力は続ける」(日本時間16日)とあらためて武力行使を示唆しました。
 合同演習は、「米韓の結束を誇示し、北朝鮮をけん制する狙い」で、北朝鮮は、「『われわれに対する公然の威嚇』(16日付労働新聞)と反発」(17日付共同配信)しています。

 この経過から明らかなことは、「挑発」しているのは北朝鮮ではなくアメリカだということです。米韓合同軍事演習に対抗して仮に北朝鮮が「ミサイル」を発射したとしても、それは「挑発」ではなく、アメリカの「挑発」に対する「反発」です。

 「核実験やミサイル発射を『挑発』というが、あれは締め付けに対する『反発』だ。…制裁を強化すれば、ますます水爆に執着する。…好き嫌いを先に立てず、徹底的に話し合うしか道はない」(金時鐘氏・詩人、9月16日付朝日新聞)

 日本のメディアは相変わらず「北朝鮮が挑発…」と繰り返していますが、どちらが「挑発」しているかを見ない思考停止報道だと言わねばなりません。

 総選挙のさ中、もし北朝鮮が「ミサイル発射」していたら、安倍首相やメディアを先頭に大騒ぎするでしょう。ところが米韓合同軍事演習ではそうはならない。これは明らかに不公平・不公正です。
 むしろ、米韓合同軍事演習こそ朝鮮半島情勢を緊迫化させている元凶であることを銘記する必要があります。

 そもそもアメリカが最初に米韓合同軍事演習を開始したのは1975年(乙支フリーダムガーデン=指揮所演習)。大規模な野外演習(フォールイーグル)を始めたのが1985年。この年に北朝鮮は「挑発」どころかNPT(核拡散防止条約)に加入しています。

 重要なのは、米韓合同軍事演習が朝鮮戦争の「休戦協定」(1953年7月27日調印)に明白に違反していることです。

 「ジョージ・W・ブッシュ政権の対北朝鮮政策を検討したジョン・フェッファーは、米軍が韓国軍を巻き込んで実施する米韓合同軍事演習が、軍事演習の範疇で捉えきれないものであって、事実上”演習”という名の戦争である、とした。1953年7月27日に調印された朝鮮軍事休戦協定は、その意味で事実上全く機能していないことになる」(纐纈厚山口大名誉教授、9月16日文京区での講演=朝鮮新報より)

 「北朝鮮問題の根源は、1953年7月に結ばれた休戦協定を、米韓が破ってきたことにある。休戦協定では3カ月後に朝鮮半島から他国の軍隊は全て引き揚げると約束して署名したのに、アメリカと韓国は同時に(2カ月後に)米韓相互防衛条約(米韓軍事同盟)を締結して、「米軍は韓国に(無期限に)駐留する」という、完全に相反する条約にも署名した。…日本人には見たくない事実だろうが、これは客観的事実なので、直視するしかない。着地点の模索は、この「客観的事実を正視する勇気を持つこと」からしか始まらないだろう」(遠藤誉東京福祉大学国際交流センター長、「ニューズウィーク日本版」7月10日)

 「北朝鮮問題」でいま日本人に求められているのは、まさに「客観的事実を正視する勇気」、そしてメディアに流されず思考停止に陥らず、正義はどこにあるのかを自分の頭で考えることではないでしょうか。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする