アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「33%の得票で74%の議席」―今こそ小選挙区制の廃止を

2017年10月24日 | 政治・選挙

     

 「自民党の圧勝」で終わった総選挙。しかし、安倍・自民党を支持する国民は決して多数派ではありません。にもかかわらず「圧勝」。そのカラクリは小選挙区制にあります。
 今回の総選挙から小選挙区制の弊害(害悪)をあらためて検証します。

 ★「33%の得票で74%の議席」=民意からの大幅な乖離

 今回自民党の比例代表選挙での得票率は33・27%。これが自民党に対する有権者の支持率とみることができます。
 これに対し、小選挙区での議席獲得は289議席中215議席、その率はなんと74・39%。比例区は176議席中66議席、37・5%ですから、ほぼ得票率に見合っています。
 小選挙区ではいかに得票率と議席獲得率が乖離しているか、有権者の意思が議席(国会の勢力図)に正しくい反映されていないか明白です。

 朝日新聞の直近の世論調査では、「安倍首相の続投」を望むが34%、望まないが51%。「自民党だけが強い勢力を持つ状況」が「よい」というのは15%、「よくない」が73%だったという世論状況からも、今回の選挙結果が「民意」から大きくかけ離れていることは明らかです。

 自民党が33%の得票率で74%の議席を得たということは、自民党以外に投票した67%の有権者の意思は26%しか小選挙区の議席に反映しなかったということ、すなわちそれだけ大量の死票が生じたということです。

 ★戦後2番目の投票率の低さ―小選挙区制導入で続落

 今回の確定投票率は、53・68%。戦後最低だった前回(2014年衆院選)の52・66%に続く戦後2番目の低さでした。
 小選挙区比例代表制が導入されて1回目の衆院選(1996年)は投票率は59・65%。その前の93年選挙は67・26%、そのまた前の90年は73・31%。民主党が政権をとった09年の69・28%を例外として、小選挙区制導入によって投票率が続落していることは否定しようがありません(写真中)。
 それが小選挙区制の特性です。

 「はじめから当選を競い合うような政党が二つくらいしかなく、出てくる候補者が毎度おなじみで、しかもその当落がほぼ予想できるということになれば、人びとの選挙への興味と関心は大幅に減退するでしょう。中小政党が排除され、自分の願いを託せる候補者いず、二大政党が競い合っていてもそのどちらも支持できないという人の場合、はじめから「投票するな」といわれているようなものだからです。当然、投票率は下がります」(五十嵐仁法政大教授『一目でわかる小選挙区比例代表並立制』労働旬報社)

 ★対米従属・大企業本位の「保守二大政党制」への道

 民進党の希望の党への合流は、「保守二大政党制」を目指したものでした。それを選挙制度から促進するのが小選挙区制です。
 そしてそれは、自民党のスポンサーである財界の悲願でした。

 「日本の財界は1980年代後半から小選挙区制の導入に向けて周到な政治工作を行いました。財界幹部が中心になって『民間政治臨調』をつくり、小選挙区制を導入すれば『政治腐敗はなくなる』『政権交代ができる』との『政治改革』キャンペーンをはって導入を推進しました。…財界の本当の目的は、小選挙区制導入による保守二大政党制へと誘導し、保守二大政党制によって憲法改悪と新自由主義的政策をアメリカ言いなりに実行することにありました」(志田なや子弁護士『ここがヘンだよ日本の選挙』学習の友社収録)

 ★そもそも憲法原則(主権在民、代表制)に反する

 そもそも小選挙区制は憲法の原則に反します。
 これまでも違憲訴訟が起こされましたが、最高裁は「立法裁量権」から違憲の主張を退けました(1976年4月)。学説もさまざまあります。そうしたものを踏まえた上で、辻村みよ子東北大教授はこ指摘します。

 「選挙を主権者人民(市民)の主権行使の場として捉えるならば、選挙による主権者の主権行使が十分に実現されるために、選挙制度自体が選挙民の意思を正確に反映するものでなければならない。…選挙制度は民意を可能な限り忠実に議会に反映させるのに相応しいものでなければならない
 「現行の衆参両院の選挙制度は、選挙区制(小選挙区制ー引用者)の点で投票価値平等を実現しえず、選挙活動上の不平等や自由の過度な制約を伴うことによって、一層民意を歪曲し選挙権の権利性を弱める結果を導くものといえる」(辻村みよ子『日本国憲法解釈の再検討』有斐閣収録)

 日本のメディアは今回の選挙の論評で、「なぜ、衆院選で自民党は多数を得たのか。死票の多い小選挙区制の特性もあるが…」(23日付朝日新聞社説)、「政権批判票の分散が、小選挙区制の下で自民を利した」(同毎日新聞社説)、「安倍首相の続投を支持しない人が多いにもかかわらず、自公両党が過半数の議席を得るのは、一選挙区で一人しか当選しない小選挙区制を軸とした現行の選挙制度が影響していることは否めない」(同東京新聞社説)など、一様に小選挙区制の弊害を指摘しています。

 にもかかわらず、「小選挙区制の廃止」を主張している論説は皆無です。きわめて奇異な現象と言わねばなりません。

 憲法原則に照らし、主権者・国民の意思をより正確に政治(国会の議席)に反映させ、対米従属・財界本位の自民党(安倍)独裁、「保守二大政党制」を許さないために、いまこそ小選挙区制を廃止すべきです。そして、全国一区比例代表制を実現すべきです。

 

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