アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「台湾有事」で自衛隊が参戦―麻生暴言とその背景

2024年01月10日 | 自衛隊・日米安保
   

 台湾の蔡英文総統は8日、能登半島地震への支援を表明したSNSで、「日本有事は台湾有事」だと述べ、台湾と日本との“一体性”を強調しました(9日昼のTBSニュース)。

 同じ8日、自民党の麻生太郎副総裁は地元・福岡県内の「国政報告会」で次のように述べました。

<時代は大きく変わりつつある。今、台湾海峡を挟んで緊張が高まっている。…何かが台湾で起き、ことが戦争ということになった場合、我々は台湾にいる日本人を救出せねばならない。当然、海上自衛隊、そういう組織が救出する。そのときに台湾は中国と戦ってくれているのですか。それとも降参しているのですか。…今までとは状況が違います。我々は、台湾海峡で戦う。潜水艦で、軍艦を使って、というようなことになる。台湾の有事は間違い無く、日本の存立危機事態にもなります。>(8日付朝日新聞デジタル「発言録」、写真左。写真はすべて朝日新聞デジタルから。写真中は昨年8月の訪台)

 共同通信は、麻生氏は「(戦うことになる)しかるべき準備をしておかなければならない」とも述べたと報じています(9日付京都新聞)。

 かつて安倍晋三氏は「台湾有事は日本有事」だと公言して批判を浴びましたが、麻生氏の発言は安倍発言の意味は「台湾有事」=「日本の参戦」だということを明確に述べたものです。

 背筋が寒くなるような重大発言です。これは一衆院議員の暴言ではなく、自民党の副総裁、いまや岸田文雄首相の最大のバックボーンとみられている人物の公式発言です。

 この重大発言を問題視して見出しにとって報じたメディアは、私が見た限り皆無でした。メディアの機能不全も深刻です。

 麻生氏の暴言はたんに麻生氏の妄想ではありません。

 台湾は昨年発表した「国防白書」で、「中国が台湾に侵攻した場合の戦略を大きく変更」(9日付朝日新聞デジタル)しました。日本台湾交流協会台北事務所(大使館に相当)で軍事担当を務めた尾形誠元空将捕は「ウクライナの戦訓を学んだ結果だ」と語っています(同朝日新聞デジタル。自衛隊OBが事実上の大使館員になっていることも問題です)

 尾形氏はこう説明しています。

<(台湾の国防白書は新たに)「地域統合防衛機構との連携」を加えました。に日米同盟や米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」などとの連携強化を念頭に置いています。台湾が米国以外の国々との連携を唱えたのは初めてです。

 日本の現行法制が定める自衛隊を使った邦人救出は台湾有事では役に立ちません。台湾有事では、自衛隊は南西諸島の防衛を念頭に、兵員や武器の輸送に全力を挙げる必要があるからです。自衛隊の能力が使えないことを前提に、民間の航空機や船舶を使う体制づくりが必要です。>(同朝日新聞デジタル)

 「台湾有事」には自衛隊は戦闘で手一杯、「邦人救出」は「民間の航空機や船舶を使う」必要がある、というわけです。軍拡(安保)「3文書」が明記し沖縄で進行している「空港・港湾の軍民両用化」の意図が明確に述べられています。

 日米軍事同盟(安保条約)の深化によって、「国民」には知らされないまま、「台湾有事は日本有事」の名の下に日本(自衛隊と民間航空機・船舶)参戦の「準備」が着々と進行しています。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 災害と軍隊・米軍「トモダチ... | トップ | ウクライナ政府に軍事支援を... »