アリの一言 

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日本メディアが報じない韓国国会の「汚染水投棄中止要求決議」

2024年10月01日 | 原発・放射能と政治・社会

 

 岸田文雄首相は9月20日、「中国と認識を共有し、基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復させることになった」と述べました。メディアはこれを中国が「水産物輸入再開合意」と報じました。

 そして、「海洋放出以降、「核汚染水」と危険視する中国の主張に同調する国際世論は広がっていなかった。…この問題では孤立を深めていた」(9月21日付京都新聞=共同配信)と、汚染水の危険性を危惧しているのが中国だけであるかのように報じました。

 まったく事実を歪曲した偏向報道と言わねばなりません。

韓国国会、福島第一原発の汚染水放出中止と韓国政府の対応要求を決議

 ハンギョレ新聞(9月27日付日本語電子版)はこうした見出しで、以下のように報じました(抜粋、太字は私)。

<(韓国)国会は26日の本会議で、「福島第一原発汚染水海洋投棄1年、国民と水産業界の保護のための日本政府の汚染水海洋投棄の中止、および韓国政府の対応を求める決議案」を、200人の在席議員中、賛成145人、反対53人、棄権2人で可決した。

 決議案は、海洋放射能検査水産物市場への放射能検査装置の拡充、水産業界に対する制度的な保護装置を韓国政府に求める内容が含まれている。また、来月のロンドン条約およびロンドン議定書の締約国会議で、日本の汚染水投棄がロンドン議定書違反であることを明らかにするとともに、国際海事機関(IMO)で紛争解決手続きを行うよう求めている。

 日本政府に対しては、汚染水の海洋投棄を中止するとともに、汚染水の海洋投棄が海洋生態系や人体に及ぼす影響を客観的に検証するよう求めている。国際原子力機関(IAEA)に対しては、国際的な海洋環境研究団体と協力して海洋調査を行うなど、責任ある姿勢を取るよう求めている。>

 韓国国会決議の特徴は、海洋水、水産物の放射能検査の拡充を要求するとともに、ロンドン議定書に照らして国際海事機関で公正な審議を求めていることです。

 そして、日本政府が汚染水放出の“錦の御旗”としているIAEAに対しても、他の国際的海洋環境研究団体と協力して責任ある調査を行うよう要求しています。

 IAEAの公正・中立性には当初から強い疑問が指摘されてきました。

「検証を独占するのはIAEAだ。客観的な検証能力に疑問を呈する声は絶えない。…(IAEAは)基本的に「原発拡大」を重視する。…原発大国である日本はIAEAへの影響力も強い。IAEAの正規予算の分担率(2021年)を見ると、日本は8.32%で米国、中国に次いで第3位。…グロッシ事務局長の前にIAEAを率いたのは、日本人の天野之弥だった。…汚染水の海洋放出はIAEAと協議して決定されたものだ」(23年6月1日付ハンギョレ新聞)

 韓国では汚染水放出Ⅰ年にあたり、市民・環境団体で構成された「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」や「民主社会のための弁護士の会」などが8月22日にソウルの国会議員会館で抗議集会を開きました(写真右、8月27日のブログ参照)

 圧倒的多数で可決された韓国の国会決議は、こうした市民・環境・法曹団体の反対・抗議に続くもので、東電福島原発の汚染水放出に国をあげて不安・反対が広がっていることを示しています。

 日本の政府・メディアが隣国のこうした事実を無視して汚染水を放出し続けることは絶対に許されるものではありません。

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