アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

東京五輪・「聖火リレー」と自衛隊・軍隊

2020年03月21日 | 五輪とメディア・政治...

    
 20日、東京五輪の「聖火」がギリシャから日本へ運ばれました。到着したのは自衛隊基地、宮城県の松島基地(東松島市、写真左)です。

 民間の仙台空港ではなく、あえて自衛隊基地に「聖火」を降ろしたのは、森喜朗五輪組織委会長(元首相)の意向です。森氏は自衛隊基地が、「不屈の精神を示す象徴的な場所…一番理想的」(2018年7月31日付産経新聞)と言って松島基地に決めました。

 「聖火到着式」では森氏のあいさつ(写真中)などに続き、上空で自衛隊のブルーインパルスが「五輪」を描きました(写真右)。1964年の東京オリンピック開会式の再現です。

 安倍政権は「復興五輪」を演出するため、「聖火リレー」のスタートは福島のJビレッジ(3月26日)だとしていますが、実質的には20日の松島基地がスタートです。「聖火」はこの日から宮城、岩手、福島の東北3県を回ります。
 「聖火リレー」の起点を自衛隊基地にしたことは、東京五輪を利用して自衛隊(日本軍)の存在をアピールし社会に浸透させようとする安倍首相、森会長の思惑を象徴するものです。

 安倍政権は「2020年東京五輪」の開催が決まった直後に「防衛省・自衛隊2020年東京オリンピック・パラリンピック特別行動員会」を組織し、2013年9月に第1回会合を開きました。冒頭、小野寺五典防衛相(当時)はこうあいさつしました。

 「1964年の東京オリンピックでは開会式でブルーインパルスが五輪マークを東京の空に大きく描き、音楽隊がオリンピック・マーチやファンファーレを演奏し、防大生が選手団入場に各国のプラカードを掲げ、三宅選手や円谷選手のような自衛官の選手が活躍した。2020年のオリンピックでも、防衛省・自衛隊がオリンピックで果たす役割は大きい。…これからも日本の安全保障のために全力で働き、しっかりと、われわれも大会の成功に向けて努力していきたい」(渡邉陽子著『オリンピックと自衛隊』並木書房2016年より)

 防衛省・自衛隊が東京五輪を「日本の安全保障」すなわち「国防」の延長線上に位置づけ、自身の存在をアピールする場にしようとしていることは明らかです。

 松島基地を事実上の起点として始まった「聖火リレー」。その起源はナチス政権下のベルリン大会(1936年)です。ヒトラーは、「聖火」でギリシャとベルリンを結ぶことにより、「ギリシャ文明の正当な継承者はドイツだと世界にアピールする国威発揚の意図があった」(15日付琉球新報=共同)といわれています。

 ベルリン大会で「聖火リレー」のコースを決め、準備を整えたのはドイツ軍でした。そして、「大会後の第2次世界大戦でドイツ軍は聖火(リレー)のルートを逆にたどり、各国に侵攻。リレーが軍事利用されたとの指摘も出(た)」(同)のです。

 「ヒトラー政権下でオリンピックを政治・軍事に利用したという批判も大きかったが、軍隊の協力による大会運営の成果があったことも事実である。ベルリン大会以降、オリンピックにおける軍隊の果たす役割が大幅に増えたことがその証明ともいえるだろう」(前掲『オリンピックと自衛隊』)

 ベルリン大会と今回の東京大会では「聖火リレー」の方式は異なります。もちろん露骨な軍事利用は見られません。しかし、今回の「聖火リレー」にも決して見過ごすことができない政治利用が隠されています。それについては後日書きます。


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