朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とアメリカの初の首脳会談(シンガポール)から12日で1年が経過しました。その後、第2回会談(2月、ハノイ)が物別れに終わり、膠着状態ですが、私たち日本人は現状を傍観者的に眺めているわけにはいきません。なぜなら、朝米会談の合意内容は私たちときわめて密接に関係しているからです。
第1回朝米会談の合意(「シンガポール共同声明」)は4点ありました。その中で特に重要なのは、「2018年4月27日の『板門店宣言』を再確認」すると明記したことです。
「板門店宣言」は韓国と朝鮮が「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のため」の具体的な指針を示したきわめて重要な宣言ですが、なかでも私たちに直接かかわるのは次の項目でした。
「南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」(共同通信訳)
朝鮮戦争(1950年6月25日~53年7月27日休戦協定)の「終戦宣言」「平和協定締結」が明記されたのです。
朝米会談がこれを確認した意味はきわめて重大です。トランプ大統領は会談後の記者会見で、「朝鮮戦争は間もなく終結するとの期待を持っている」(共同電)とも明言しました。
朝米関係といえば「非核化」が焦点といわれますが、それと密接に関連している「朝鮮戦争の終戦・平和協定締結」の課題があることにもっと目を向ける必要があります。
とりわけ日本では、安倍政権が政治戦略上「拉致問題」を強調し、メディアがそれに迎合していますが、実は日本と朝鮮半島の関係では「朝鮮戦争の終結・平和協定締結」こそ最も重要な問題であると言っても過言ではありません。
なぜなら、朝鮮戦争は日本の朝鮮植民地支配の帰結であると同時に、日本が直接・間接に大きくかかわり、さらに今日の日米軍事同盟とも密接に関係しているからです。
「問題は…朝鮮戦争に日本人民はどのようにかかわっていたかということです。…アメリカは朝鮮戦線で莫大な物量の消耗戦を平気でやる、その武器の生産ないし修理はもっぱら日本が引受けている。日本の重工業資本は、戦後の復活のきっかけをここではじめてつかむ。特需が全体として日本の国際収支を支え、後の『高度成長』政策を可能にしていく。朝鮮戦争の犠牲の上に日本の資本主義体制、六〇年代以降につらなるその体制は築かれたのです」(梶村秀樹著『排外主義克服のための朝鮮史』平凡社ライブラリー)
「(朝鮮)戦争がはじまると、マッカーサーは警察予備隊(やがて自衛隊となる)をつくって日本の再武装を進め、企業から共産党員を追放するレッドパージがおこなわれました。一方、かつての日本の侵略戦争にかかわり、戦後、公職から追放されていた軍人や政治家などが追放を解除されました(安倍晋三の祖父・岸信介もその1人―引用者)。
朝鮮戦争がはじまると…アメリカは、日本をソ連、中国に対抗する前進基地として確保するため、1951年9月、日本との間に、ソ連、中国などを排除した講和条約を結び、同時に日米安保条約で日本をひきつづきアメリカの軍事基地として使用することにしたのです」(中塚明著『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』高文研)
「朝鮮戦争の終結・平和協定締結」を実現することは、日本の植民地支配責任を確認し、朝鮮との国交正常化、友好関係を樹立するとともに、非同盟・中立の日本を実現するための、日本人自身の歴史的課題であり、責任です。