アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「聖火リレー」に隠された3つの意図

2019年06月03日 | 五輪とメディア・政治...

     

 1日コースの概要が発表された東京オリンピック・パラリンピック(以後、東京五輪)の「聖火リレー」について、各都道府県からは「平和の火」(琉球新報)などと一斉に歓迎の声があがっています。しかし、はたしてそれは喜んで評価できるものでしょうか。

 今回の「聖火リレー」は、「原則100日以内」とするIOCの内規に反し、121日間という長期にわたり、費用は「100億円」(2日付朝日新聞)という異例・異常な計画です。そこには重大な政治的思惑が隠されています。

  第1に、東京五輪と自衛隊の結合です(4月16日のブログ参照)。

  組織委員会が発表した「聖火リレー」は3月26日の福島県・Jビレッジを出発点としていますが、事実上の出発点は、航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)です。
 なぜなら、ギリシャで採火された聖火が空路日本に到着するのが自衛隊松島基地だからです。民間の仙台空港ではなく自衛隊基地にしたのは、組織委員会の森喜朗会長(元首相、写真中)が「一番理想的」といって決めたものです。
 松島基地に到着した「聖火」は、宮城、岩手、福島の順で東北被災3県を回った後に、3月26日福島で改めて「出発式」が行われるのです。

 第2に、コースに伊勢神宮を組み入れ、東京五輪と天皇制が直接結合されることです。

 今回のリレーコースが異例・異常なのは、日数や費用だけではありません。「組織委関係者によると普段、火気厳禁な歴史的建造物の中に聖火ランナーが入ることも検討されている。…美しい日本の風景を聖火とマッチングさせ世界に配信する、前代未聞の試み」(2日付日刊スポーツ)だということです。その「歴史的建造物」とは「寺社仏閣など」(同)で、眼目は伊勢神宮(4月8日)です。

 ただしその狙いは「美しい日本の風景」の発信ではなく、国家神道の”聖地”であり、先の天皇の退位でもあらためてクルーズアップされた伊勢神宮を通して、皇室・天皇制を世界に発信することにあります。

 第3に、沖縄の首里城(5月2日)と北海道(白老町)のアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」(6月14日)がコースに含まれたことです。

 首里城は明治天皇制政府が武力で琉球を併合(1879年)したまさにその現場です。また、明治政府はそれより早く、維新の翌年(1869年)にアイヌ民族の土地を侵略し、「開拓使」を置いて「蝦夷地」を「北海道」と改称しました。
 今回の「聖火コース」には、南の琉球民族、北のアイヌ民族という日本が侵略・併合した2つの民族の象徴的な場所を通るのです。

 かつて明治政府は小学唱歌・「蛍の光」の4番の歌詞で、「千島のおくも、おきなわも、やしまのうちの、まもりなり…」と歌わせ、アイヌ、琉球の侵略を既成事実化しようとしましたが、今回の「聖火リレー」はそれを想起させます。

 結局、東京五輪の「聖火リレー」は、「復興五輪」の名で福島・東電原発事故の被害・影響の隠ぺいを図るだけでなく、「日本の領土」=国家を強く意識させ、その「統合」の「象徴」としての天皇(制)を世界にアピールするものである、と言えるのではないでしょうか。

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 全くつたない内容ですが、何かの参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。

 


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