アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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自衛隊と「旭日旗」<下>「天皇の臣下」としての”誇り“

2018年10月27日 | 自衛隊・軍隊

     

 岩屋毅防衛相は20日の韓国・鄭景斗国防相との会談で、韓国で行われた国際観艦式(済州島、10日~14日)で「旭日旗」の掲揚自粛を要求されたことについて、「きわめて残念だ」とあらためて抗議しました。「旭日旗」に対する執着心は相当なものです。

 防衛省・自衛隊が「旭日旗」(「日の丸」)に固執するのは、侵略戦争・植民地支配への無反省・開き直りですが(9日のブログ=<上>参照)、それだけではありません。

  韓国の「旭日旗」自粛要求に対し、自衛隊の河野克俊統合幕僚長は会見でこう断言しました。「海上自衛官にとって自衛艦旗(「旭日旗」)は誇りだ。降ろしていくことは絶対にない」(6日付朝日新聞)。

  河野氏が言う「自衛官の誇り」には特別の意味が込められていると思われます。それは「旭日旗」(「日の丸」)と天皇(制)の関係です。

  「明治維新」を決定づけた戊辰戦争(1868年)。敗れた幕府軍の旗が「日の丸」だったのに対し、勝った薩長連合軍が掲げたのは「錦の御旗」で、そこに描かれていたのは「菊花紋」でした。「天皇の旗印」は「日の丸」ではなく「菊花紋」だったのです。それは現在も変わっていません。皇室の紋章は「日の丸」ではなく「菊花紋」です。

 では天皇(制)と「日の丸」の関係は何でしょうか。

  「『日の丸』は天皇の旗ではなく、天皇の臣下の旗として使われてきました。臣下が天皇に対して打ち振ることはあっても、天皇がこれを振ったためしはありません。(中略)
 (日清戦争以来―引用者)出征は『日の丸』で送られ…占領地には『日の丸』を掲げ、凱旋パレードでも『日の丸』が振られました。…台湾・朝鮮では、日本への『統合』(皇民化)を進めるため、『日の丸』は内地にも増して利用されました」(佐藤文明氏『「日の丸」「君が代」「元号」考』緑風出版)

 「日の丸」は「天皇の臣下の旗」なのです。「臣下」が天皇を称え、天皇に従うことを誓う「旗」です。その「日の丸」を「国旗」と称しているのは、日本は「天皇の国」であり、「日本国民」は「天皇の臣下」だといっているに等しいのです。

 河野統幕議長が言う「自衛官の誇り」とは、この「天皇の臣下」としての「誇り」ではないでしょうか。

 自衛隊(幹部)の天皇に対する思慕は並々ならないものがあります。「3・11」以降、「災害出動」を巡って自衛隊と天皇は急接近していますが(9月13日のブログなど参照)、それだけではありません。

 安倍政権は今年3月、「日本の海兵隊」といわれる「水陸起動団」(写真中)を編成し佐世保に配備しましたが、その「旗印」はなんと「三種の神器」の1つ「草薙の剣」(熱田神宮に安置)なのです(写真右。小西誠氏『自衛隊の南西シフト』社会批評社より)。

 「三種の神器」は言うまでもなく天皇(制)の象徴です。裕仁天皇は『昭和天皇独白録』(1946年)で、「敵が伊勢湾附近に上陸すれば、伊勢熱田両神宮は直ちに敵の制圧下に入り、神器の移動の余裕はなくなる」として、「降伏決断の理由に『伊勢熱田両神宮』に安置された神器の確保をあげている」(『天皇・皇室辞典』岩波書店)ほどです。

  小西氏は前掲書の中で、「水陸起動団」創設と同時に「陸上総隊」が新設され、さらに今後「南西統合司令部」が創設されようとしていると指摘し、「軍令独立化による制服組の台頭」に警鐘を鳴らしています。

 「軍令独立化」とは政府(シビリアン)のコントロールを外れた制服組(軍隊)の「独立化」です。それは戦時中、政府から独立して天皇(大元帥)直轄となった「大本営」の復活に他ならないでしょう。
 自衛隊の「軍令独立化」の動きと天皇(制)への思慕・接近が無関係だと言えるでしょうか。

 軍事費の膨張、沖縄・先島諸島へ配備増強(小西氏が指摘する「南西シフト」)、「軍令独立化」、米軍との共同行動・一体化、そして天皇(制)への思慕・接近…防衛省・自衛隊が「旭日旗」に固執する背景には、こうした自衛隊の危険な動きの同時進行があると言えるでしょう。


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