アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

小金井市「陳情」・共産党は正面から議論を

2018年10月16日 | 日米安保・沖縄

     

 東京都小金井市議会に「辺野古新基地」についての「意見書」を衆参両院に提出することを求める陳情書が出され、いったんは賛成多数で採択されながら(9月25日)、日本共産党が「賛成」を撤回(10月5日)したことにより、本会議採決が見送られるという事態が起こりました。これには重要な問題が含まれています。

 第1に、共産党の態度変更は筋が通っていません。共産党はこの問題から逃げないで、正面から議論すべきです。

 「賛成撤回」に対する疑問・批判に、共産党の小池晃書記局長は、「日本共産党は普天間基地の無条件撤去を主張してきたこと、『閉鎖撤去』が『オール沖縄』の合意にもなっている経過を説明。意見書の『代替施設について、沖縄以外の全国全ての自治体を候補地とすること』という部分について『これに政党として賛成することはできません』と説明」(12日付「しんぶん赤旗」)しています。

 陳情した米須清真氏(宜野湾市出身)は、「本土での移設先を決めるというより、国民的議論をしてほしいという思いだった」(14日付東京新聞)と、共産党の翻意を遺憾としています。

 事実「陳情書」は、①辺野古新基地建設工事の中止、普天間基地運用停止②普天間の代替施設は沖縄以外の全国全ての自治体を等しく候補地とする③その際、米軍基地が必要か否か、代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行う―の3項目に続き第4項目でこう述べています。
 「国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、その結果責任を負い、民主主義及び憲法の精神に則り、一地域への一方的な押し付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定すること」(9月27日付琉球新報「陳情要旨」)

 これを「日本国内に米軍基地を移設することを容認する内容」(10月5日の共産党小金井市議団の「撤回」説明。6日付琉球新報)と断定するのは無理があります。共産党の賛成撤回は陳情書を曲解したものと言わざるをえません。

 問題は、それがたんなる「曲解」ではなく、この問題の議論を回避するための口実だと思われることです。というのは、この問題は今回の陳情で初めて浮上したわけではなく、「オール沖縄」が抱えている一貫した懸案だからです。

 小池氏が言う通り、「オール沖縄」の「合意」は「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」(2013年1月28日の「建白書」)です。普天間の代替施設を国内(「本土」)に建設すること、すなわち「県外移設」は「オール沖縄」の一致点ではありません。共産党が反対だからです

 ところが、「オール沖縄」で知事になった翁長雄志前知事は、就任直後から「県外移設」を公言し、日米両政府にもそれを要求してきました。これは明らかに「オール沖縄」の合意に反することです。しかし共産党はそれに対し、一言も抗議してきませんでした。それどころか、翁長氏を全面的に賛美してきました。

 そして「翁長氏の遺志を継ぐ」として知事になった玉城デニー氏も、就任早々、宮腰光寛沖縄担当相に「県外移設」を含む「要望書」を提出しました(10日付琉球新報)。これも「建白書」すなわち「オール沖縄」の合意を逸脱するものです。しかし、共産党はこれに対しても一言もクレームをつけませんでした。

 「オール沖縄」といいながら、「県外移設」という重要問題については大きな意見の相違があるのです。その違いを放置したまま、表面化するのを避け続けて、今日に至っています。議論すれば「オール沖縄」が瓦解するからです。今回の小金井市での共産党の「賛成撤回」もその延長線上にあります。

 しかし、それは果たして妥当なことでしょうか。「県外移設」は、普天間・辺野古に限らず沖縄の基地をめぐる核心的問題です。その議論を避けてなんの「オール沖縄」でしょうか。共産党は議論から逃げるのではなく、「県外移設」について正面から議論すべきです。

 第2に、小金井市議会に提出された今回の「陳情書」にも問題がないわけではありません。

 たしかに「陳情要旨」は前述のようになっています。ところが、それに続く「陳情理由」には、「普天間基地の代替地について、沖縄県外・国外移転を、当事者意識を持った国民的な議論によって決定するべきである」という一節があります。これでは「県外移設」へ向けて議論すべきだとの主張に取られかねません。

 琉球新報によれば、今回の陳情内容は、「昨年4月の沖縄国際大で開かれたシンポジウム『県外移設を再確認する―辺野古新基地建設を止めるもう一つの取り組み』で議論され提言された」(9月27日付社説)といいます。陳情が「県外移設」をめざすものであることを疑わせる一因です。

 私はこれまで繰り返し述べてきた通り、「県外移設」には賛成できません。しかし、その是非についての議論はおおいに行うべきだと考えています。議論の中で、日米安保条約の問題点をあぶり出し、その廃棄へ向けた世論を高めるべきです。
 軍事基地(米軍・自衛隊)をどうするのかは、まさに「全国民」の問題です。そして、沖縄に対する「構造的差別」をなくするのは「本土の日本人」の責任です。
 「県外移設」というバイアスのかからない「国民的議論」を全国で展開する必要があります。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする