最近出版されたエッセイを2冊読みました。
『マンボウ最後の家族旅行』
北杜夫:著
実業之日本社
北杜夫氏は、今の若い人たちにはあまり馴染みがない作家だと思いますが、わたしが若かった頃は、人気作家でした。
大学時代の夏休みに、氏の『楡家の人々』を夢中で読んだことを思いだしました。
本書は、昨年10月に亡くなられた氏の、〈絶筆〉を含む最後のエッセイ集。
「月刊ジェイ・ノベル」に連載されたものを纏めたものです。
一読して感じたのは、最晩年を穏やかにご家族と過ごせてよかったな、ということ。
娘さんにリハビリを強要されると嘆き、娘さんに連れ出された旅先では「疲れた」を連発して、「マッサージだけが楽しみ」と宣う。
でもどこか嬉しそうで…本当にいやならば、エッセイにして発表したりしませんよね
そして、東日本大震災に心を痛め(ご親戚の若い方が亡くなられたそうです。)、旧制高校時代の思い出を語り、作家としての気構えなども書いています。
平易な文章なのですが、品性の高さがあり、すべてまるく温かいのです。
手元に置いて読み返したいな、と思う一冊です。
ただ、お嬢さんの斎藤由香さんの後書きを読むと、ご家族には、北杜夫氏の死に関して、納得しかねる大きな心残りがあるようで…私も無念に思いました。
ご冥福をお祈りいたします。
『“あの日のそのあと”風雲録 ~夜ふけのなわとび2011~ 』
林真理子:著
文藝春秋
「週刊文春」に連載中のエッセイの2011年分をまとめたものです。
林真理子さんのこのシリーズのエッセイは、かつては頻繁に購入して読んでいたのですが、いつの頃からか氏の文章が、上から目線化し、相容れないものを感じるようになって、離れてしまいました。
今回購入したきっかけは、タイトルです。
異業種の文化人や経済人たちと華やかな交流のある氏が、3月11日以降をどうとらえ、どう過ごしていたのかに興味がありました。
結果、氏は被災地に何度も足を運び、東京でイベントの企画に加わり、瞠目する過ごし方をしていたのでした。
また同時に、文化人と呼ばれる人たちの被災地支援のやり方が(ほんの一部でしょうが)垣間見れて、興味深かったです。