あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

國體明徴と天皇機關説問題

2021年10月30日 19時25分17秒 | 國體明徴と天皇機關説

菊池男爵は昨年 六十五議會に於きましても、私の著書の事を擧げられまして、
斯の如き思想を懐いて居る者は文官高等試験委員から追払ふが宜い
と云ふ様な激しい言葉を以て非難せられたのであります。
今議會に於きまして再び私の著書を擧げられまして、
明白な反逆思想であると云はれ、謀反人であると云はれました。
又 學匪賊であるとまで斷言されたのであります。
日本臣民に取りまして
反逆者であり謀反人であると
言はれますのは
侮辱此上もない事と存ずるのであります。
又 學問を専攻して居ります者に取つて、
學匪と云はれます事は等しく堪へ難い侮辱であると存ずるのであります。
私は斯の如き言論が貴族院に於て公の議場に於て公言せられまして、
それが議長から取消の御命令もなく看過せられますことが
果して貴族院の品位の爲め許される事であるかどうかを疑ふ者でありまするが、
それは兎も角と致しまして 貴族院に於て貴族院の此公の議場に於きまして
斯の如き侮辱を加へられました事に付ては
私と致しまして如何に致しても其ままには黙過し難いことと存ずるのであります。
本議場に於きまして斯の如き問題を論議する事は、所柄甚だ不適當であると存じまするし
又 貴重な時間を斯う云ふ事に費しまするのは、甚だ恐縮に存ずるのでありますし、
私と致しましては不愉快至極の事に存ずるのでありますするが
萬已むを得ざる事と御諒承を願ひたいのであります。
・・・ 美濃部博士  「 一身上の弁明 」 



國體明徴と天皇機關説問題

目次
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國體明徴・天皇機關説問題 1 「 そもそも 」 
國體明徴・天皇機關説問題 2 「 一身上の弁明 」 
・ 國體明徴・天皇機關説問題 3 「 機關説排撃 」 
・ 國體明徴・天皇機關説問題 4 「 排撃運動 一 」 
・ 國體明徴・天皇機關説問題 5 「 排撃運動 ニ 」 
・ 
國體明徴・天皇機關説問題 6 「 岡田内閣の態度と軍部 」 

今泉定助曰く
「 美濃部氏の根本思想は
第一が
獨立なる個人が単位であつて、
その個人が相互に精神的 又は物質的の交渉を有する生活を社会生活なりと爲す個人主義思想、
第二は
人間の意志は本來無制限に自由なもので 法に依つて規律せらるると爲す自由主義思想である。
此の個人主義と自由主義とが一切の誤謬錯覚ごびょうさっかくの根源であり、根本的の誤謬である。
その根本思想が誤つているから、美濃部氏の思想は即ち西洋個人法學の根本思想であるが、
それに従へば人類の團體生活は、獨立自由なる個人の利害の集合分散の態様であり、
國家は株式會社を擴大した様な法人となり 主權者はその機關とならざるを得ない。
これは個人主義法學を以て國家を律し、主權者を律する當然の結果である。」
「 日本思想の基調を爲すものは自我の確立にあらずして
彼我一體、我境不二である。
之れを皇道の絶對観、全體主義と云ふ。
凡てがこの全體主義から出發するのである。
故に人性生活に於ても全體的國家生活が本質的なもので個人生活はその分派たるに過ぎない。
人間は絶對無限の團體生活を營むものであつて、
この團體は中心分派歸一 一體の原理によつて統制せられ、
個人がこの全體に帰入し、同化することが人生生活の真眞の意義であると見る。
これは日本思想である。
この思想を表現したものが大和民族の霊魂観であつて、
萬有同根、彼我一體、我境不二、中心分派歸一 等の大原理がこれより流出するのである。
これは宇宙の最高絶對の眞理であつて、世界無比、万國に卓絶せる大思想である。
而してこの絶對性と普遍妥当性とは自然科學、精神科學上の無數の例示を以て證
「 分裂對立の個人主義、即ち美濃部氏の思想に於ては、
人生は個人生活が本質的なもので、國家國體生活は例外的なる束縛である。
正に日本思想の反對である。
故に法律の解釋に於ても國體的なる制度規定を例外的なものと見る。
これは個人の利害自由を基調とする西洋思想の當然の結果である。
美濃部氏が
『 議会は原則として 天皇の命令に服すものではない 』
と云ふが如き非常識な議論をされたのは、これに依るものである。
然るに日本思想に於ては國體的の制限規定は例示的なものである。
これは人間が國體に歸入し同化することがその本性であると見る日本思想の當然の結果である。
天皇は國家の中心であると共に、全體であらせられる。
『 原則として 天皇の命令に服するものでない 』
といふが如きものは我が日本には一つもあり得ない。
美濃部氏の根本思想そのものが、日本國家と相容れないものである。
全體静養の個人主義的法學を以て日本の國體を論じ、
日本の社會を律するものは、全體主義法學でなければならぬ。」
・・・國體明徴・天皇機關説問題 4 「 排撃運動 一 」 

眞崎教育總監
四月四日
眞崎敎育總監は大義名分を正し、
機關説が國體に反する旨を明にした左の如き訓示を部内に發した。

訓示
うやうやしく惟おもんみるに
神聖極を建て 銃を垂れ 列聖相承け 神國に君臨し給ふ 天祖の神勅炳あきらかとして
日月の如く 萬世一系の天皇 かしこくも現人神として國家統治の主體に存すこと 疑を容れず
是 實に建國の大義にして 我が國體の崇高無比嶄然萬邦に冠絶する所以のもの此に存す。
斯の建國の大義に發して我が軍隊は天皇親ら之を統率し給ふ
是を以て皇軍は大御心を心とし 上下一體脈絡一貫行蔵邁進止一に大命に出づ
是り即ち建軍の本義にして 又 皇軍威武の源泉たり。
さきに  明治天皇聖論を下して軍人の率由すべき大道を示し給ひ
爾來幾度か優渥なる聖勅を奉じて 國體、統帥の本義と共に洵に明徴なり
聖慮宏遠誰か無限の感激なからん。
夫れ聖論を奉體し寤寐の間尚孜ししとして軍人精神を砥礪しれいして已まざるは我が軍隊教育の眞髄なり。
皇軍 外に出でて數々征戰の事に従ひ 内にありて常に平和確保の柱石となり
皇猷こうゆう扶翼の大義に殉じたるもの 正に軍人精神の發露にして
國體の尊嚴建國の本義 眞に不動の信念として
皇國軍人の骨髄に徹したるに由らずんばあらず。
然るに 世上民心の変遷に従ひ 時に國體に關する思念を謬あやまりしものなきにあらず。
会々最近時局の刺戟と皇軍威武の發揚とに依り 國體の精華弥々顯現し來れる時
國家は以て統治の主體となし  天皇を以て國家の機關となすの説 世上論議の的となる
而して此種所説の我が國體の大本に關して吾人の信念と根源において相容れざるものあるは寔に遺憾に堪へざるところなり。
惟ふに皇軍將兵の牢乎たる信念は固より 右の如き異説に累せられて微動だもするものにあらず
然れども囂々ごうごうたる世論 或は我が軍隊教育に萬一の影響を及すなきやを憂ひ
之を黙過するに忍びざるものあり。
世上會々此論議あるの日、事軍隊教育に從ふ者須らく躬ら研鑽修養の功を積み
その信念を弥々堅確ならしむると共に 教育に方りては啓發訓導機宜きぎに敵ひ
國體の本義に關し釐毫りごうの疑念なからしめ
更に進んで此の信念を郷閭民心の同化に及し
依つて以て軍民一體萬世に伝ふべき國體の精華を顕揚するの責に任ぜんことを玆に改めて要望す。
邦家曠古の難局に方り 皇軍の精強を要することいよいよ切實なる秋
本職國軍教育の責に膺あたり 日夜専心 その精到を祈念して已まず
此際敢て所信を明示し 以て相俱に匪躬の節を効さんことを期す。
眞崎甚三郎
・・・ 『 国体明徴 』 天皇機関説に関する眞崎教育総監の訓示
・・・ 国体明徴・天皇機関説問題 6 「 岡田内閣の態度と軍部 」 
・・・ 本庄日記・昭和十年四月九日 「 真崎教育総監の機関説訓示は朕の同意を得たとの意味なりや 」 

・ 
國體明徴と天皇機關説 
・ 
國體明徴と相澤中佐事件 
・ 國體明徴とニ ・ニ六事件 

元老重臣等中心思想。
議會中心主義的政黨政治思想。
資本主義、共産主義。
並に亜流として其の中に介在する所謂金融フアツシヨ、國家社會主義、一國社會主義。
官僚 ( 幕僚 ) 中心思想。
等々。
凡そ是等は悉く所謂天皇機關説又はそれ以上の邪道を實践しつつある所のものである。
一般に口を開けば重臣、政黨、財閥、官僚、軍閥と云ひ、その駆逐打倒が維新の主働であると云ふ。
然らば、
「 國體を明徴にする 」 ための
此の國體叛逆勢力を打倒することは同時に維新であらねばならぬ。
「 機關説 」 排撃は、
美濃部博士に次いで一木樞府議長へ、金森法制局長官へ、
其他 同學系の諸氏へ、躍進轉戰すると共に、一切の非國體思想に進撃せねばならぬ。
これが戰ひ一たん収まる時、昭和維新の旭日は東天を染めて居るであらう。
再言する 今日の國體明徴は、維新と同義語である。

・・・核心 ・ 竜落子 『 時局寸観』 


陛下は更に、
理論を究むれば結局、
天皇主權説も天皇機關説も帰する所 同一なるが如きも、

労働条約其他債權問題の如き國際關係の事柄は、
機關説を以て説くを便利とするが如し云々

と仰せらる。
之に對し 軍に於ては
天皇は、現人神と信仰しあり、
之を機關説により 人間並に扱ふが如きは、軍隊教育及統帥上至難なりと奉答す。

亦二十九日午後二時御召あり、
天皇機關説に付陸軍は首相に迫り、其解決を督促するにあらずや
との御下問あり。
陛下は、
憲法第四條 天皇は 「 國家の元首 」 云々は即ち機關説なり、
之が改正をも要求するとせば憲法を改正せざるべからざることとなるべし、
又 伊藤の憲法義解には
「 天皇は 國家に臨御し 」 云々の説明あり
と仰せらる。

・・・本庄日記・昭和十年三月二十九日 「 自分の如きも北朝の血を引けるもの 」