あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

憲兵報告・公判狀況 24 『 歩兵第三聯隊第一中隊 軍曹・窪川保雄 』

2020年09月18日 16時49分43秒 | 反駁 2 西田税と北一輝、蹶起した人達 (公判狀況憲兵報告)

元歩兵軍曹新正雄以下四十名
第三回公判狀況


元歩兵第三聯隊第一中隊 歩兵軍曹  窪川保雄
法務官  「 昭和維新斷行トカ、國家改造ト云フコトハ、
 前回各被告ト同様ニ、坂井中尉、高橋少尉、安田少尉、麦屋少尉等ニ聽カサレタルヤ 」
然リ。
法務官  「 其際、大眼目トカ相澤公判狀況ヲ記載セル新聞ヲ讀ミ聽カセ、
 陛下ノ大御心ヲ輝カス爲、黒雲ヲ取除ク爲ニハ、重臣、財閥、特權階級ヲ芟除スルニアリト言フガ如キコトヲ聽カサレタル當時ノ感想如何 」
國體ヲ擁護シ、皇威ヲ發揚スルハ、皇軍ノ使命ナルヲ以テ、
實際ニ於テ重臣、財閥ガ黒雲ナレバ、之ヲ芟除スルハ差支イナイト考ヘマシタ。
法務官  「 如何ナル事實ヲ知ルヤ 」
事實ヲ知ラナイカラ不安デシタガ、將校ノ方ガ謂フ位ダカラ間違ヒナイト思イマシタ。
國體顯現ノ爲ニ皇軍ガ蹶起スルハ當然ナリ
ト陳述シ、
坂井中尉等ヲ心服シ絶對ニ信頼シアリタル  旨ヲ答ヘ、
前回被告同様、
同志ニハアラザルモ 將校ト共ニ行動ヲ爲シ、
軍隊トシテノ行動ハ犯罪ニ該当スルモノニ非ザルノ  信念ヲ有シ、
裁判長  「 相澤中佐ガ永田中將を殺害シタルハ如何 」
個人トシテ、上官ヲ殺害シタルハ是認セザルモ、
事實上、永田中將モ暗雲ノ一名デアツタナラ、差支アリマセン。
ト、直接行動ヲ或ル程度是認シ、
暗雲芟除ニ際シテハ軍隊出動ハ當然ナリ  ト再三鞏調シ、次デ、
二十五日夜、明朝払暁ヲ期シテ決行スル旨ヲ坂井中尉ヨリ聞カサレタル際ハ、
大事件ヲ決行スル様デアルガ、
實際、重臣、財閥ハ芟除スル程惡イコトヲシテ居ルカドウカ不安ナリシモ、
事實ヲ知悉しりつくシタルヲ以テ決行スルナラント思考シテ之ニ參加シ、
輕機分隊長トナリテ、齋藤内府邸襲撃ニ際シテハ道路上ノ警戒ニ任ジ、
二十六日午前八時頃、坂井中尉等ニ引卒セラレ三宅坂附近ノ警戒ニ就キタル  旨を陳述し、
裁判長  「 被告は坂井中尉ノ命ニ依リ 三宅坂ノ附近ノ警戒中、
 陸軍省ヘ出勤ノ某大尉ニ向ケ二發々砲シタル事實アルヤ。又、如何ナル理由ナリヤ 」
坂井中尉ト押問答ヲシテ居ツタガ中々解決セズ、
坂井中尉ヨリ實包ヲ持ツテ居ルカラト言ヒナガラ 『 ウテ 』 ト言ツタノデ、
分隊射撃手ハ下方泥溝口ニ向ケ二發々射シタルモ、射撃スル意ニアラズ。
實包ヲ所持シ居ルヲ相手ニ知ラセル爲デアリマシタ。
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  平河町の坂井部隊
・・・リンク ↓
・ 私も連れて行って下さい

「 皆御苦労だつた、御機嫌よう 」 
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裁判長  「 被告ハ、若シ坂井中尉不在中ニ通過セントスル將校アリシ場合、如何 」
射撃シマス。
裁判長 
「 何故射撃スルカ。又、皇軍相撃ツ理由如何。三銭切手ヲ張ラナイモノハ射ツト言ヘバ、
 皇軍ハ二派ニ分レテ破壊スルニ至ルコトヲ考ヘザリシヤ 」

上官ノ命令ナルヲ以テ射撃ス。其他ハ判リマセン。
裁判長  「 軍人個人同志ニテ撃ツナラバ、皇軍内ニ於イテ分裂ヲ生ズルガ如キナキモ、
 同ジ陛下ノ御親任得アル皇軍将校ヲ軍隊行動ニ依リ撃ツト言フ理由如何。
某トモ、三銭切手ヲ張ラナイ將校ハ全部暗雲ナリト思考シタルヤ 」
判リマセン。
ト、曖昧ナル答弁ヲ爲シタル後、
二十九日午前十時頃、坂井中尉等ト陸軍省前ニ於テ別レ、
所属大隊長ノ引卒ニ歸隊セリト陳述シ、
現在ノ心境トシテ、
上陛下ノ宸襟ヲ悩シ奉リ、御詔勅迄渙發ニナリタルハ 何トモ申譯ハアリマセン。
ト述ベテ、
午後五時七分審理を終了シ、次回五月十日午前九時開廷スル旨ヲ宣シ、閉廷セリ
( 了 )

二 ・二六事件秘録 ( 三 ) から


最期の陳述 ・ 村中孝次 『 今回ノ行動ハ大權簒奮者ヲ斬ル爲ノ獨斷専行ナリ 』

2020年09月18日 10時23分56秒 | 暗黑裁判・幕僚の謀略2 蹶起した人達


村中孝次

昭和十一年六月四日
最終陳述

1、檢察官ノ論告ハ全面的ニ認ムル能ハズ。
2、日本改造法案ノ説明ヲナシ、改造法案ノ内容ハ決シテ社會民主主義ヲ基礎トシアルモノニアラズ、
 天皇ヲ根柱トシアルモノナリ。
然レドモ、今回ノ行動ハ此ノ改造法案ノ實現ニハアラズ。
此ノ法案ハ理想トスルモノニシテ、改造ノ一指針ナリ。
3、今回ノ行ハ民主革命ニアラズ。
 陛下ノ御爲ニ重臣、財閥等ノ袞竜こんりゅうノ袖ニ隠レテ大權簒奮ヲナセルモノヲ斬ツタノニ過ギザルモノナリ。
4、我々ノ行動ハ已ムニ止マレズ起チタルモノナリ。
 國家危急存亡ノ秋、時弊ヲ今ニシテ改メズンバ國體ノ危機ヨリ、超法的ニ行動ヲナシタルモノナリ。
故ニ、國憲國法ヲ無視シタルモノニアラズ。
即チ、大權簒奮者ニ對スル現行刑法ノ制裁ナシ。
因テ、其ノ犯行者ヲ其儘ニスル能ハザルヲ以テ、之ヲ討ツニハ斬ルヨリ他ニ途ナシ。
5、謀議者トハ 私、磯部、栗原、野中ノ四名ナリ。
 強イテ謀議ノ中ニ入ルノナレバ、安藤、香田 位ナルベシ。
ソノ他ノ者ハ自分ガ部署ヲ決定シ下達シタルモノニシテ、
檢察官ノ曰ハルル謀議ハ行動者タル軍隊ノ部隊トノ聯絡迄モ謀議ノ中にイレアルハ遺憾ナリ。
6、法律論
 今回ノ行動ハ大權簒奮者ヲ斬ル爲ノ獨斷専行ナリ。
党ヲ結ビテ徒ニ暴力ヲ用ヒタルモノニアラズ。
我々軍隊的行動ニヨリ終始一貫シタルモノナルヲ以テ、
此獨斷専行ヲ認メラルゝカ否カハ一ニ大御心ニアルモノナリ。
若シ 大御心ニ副ヒ奉ル能ハザリシ時ト雖モ反亂者ニアラズ。
陸軍刑法上ヨリスレバ壇健ノ罪ニヨリ処斷セラルルモノタルヲ信ズ。
・・・憲兵報告


反駁 1 西田税と北一輝、蹶起した人達

2020年09月18日 05時01分51秒 | 反駁 1 西田税と北一輝、蹶起した人達 (公判狀況)

根本の問題は國民の魂を更えることである。
魂を改革した人は維新的國民。

この維新的國民が九千万に及ぶ時、魂の革命は成就されると説く。
良くしたいという 一念 三千の折から
超法規的な信念に基ける所謂非合法行動によって維新を進めてゆく。
現行法規が天意神心に副はぬものである時には、
高い道念の世界に生きている人々にとっては、何らの意味もない。
非が理に勝ち、非が法に勝ち、非が権に勝ち、一切の正義が埋れて非が横行している現在、
非を天劍によって切り除いたのである。
・・・磯部淺一
今回の行動は大権簒奪者を斬る爲の獨斷専行なり。
党を結びて徒らに暴力を用ひたるものにあらず。
我々軍隊的行動により終始一貫したるものなるを以て、
此獨斷専行を認めらるるか否かは位置に大御心にあるものなり。
若し大御心に副ひ奉る能はざりし時と雖も反亂者にあらず。
陸軍刑法上よりすれば檀權の罪により處斷せらるるものたるを信ず。
・・・村中孝次

反駁 1
西田税と北一輝、
蹶起した人達

目次
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反駁 
此処では、特別軍法会議での訊問に対する答弁を謂う 
・ 
反駁 ・ 北一輝、西田税、龜川哲也 第一回公判狀況 『 公訴事實 』 
・ 反駁 ・ 西田税  第二回公判狀況  『 事實審理 』 
・ 
反駁 ・ 西田税  第三回公判狀況  『 事実審理 』 
・ 反駁 ・ 北一輝  第四回公判狀況  『 事實審理 』 
・ 
反駁 ・ 北一輝  第五回公判狀況  『 事實審理 』

・ 反駁 ・ 北一輝、西田税、龜川哲也 第九回公判狀況  『 事實審理 』 
・ 
反駁 ・ 北一輝、西田税 十回公判狀況 『 事實審理 』
・ 反駁 ・ 北一輝、西田税、龜川哲也 第十一回公判狀況  『 事實審理 』 

・ 西田税、北一輝 ・ 捜査經過 ( 昭和11年2月28日~昭和12年8月19日 )

・ 反駁 ・ 村中孝次 
裁判官は檢察官の陳述せる公訴事實
竝に豫審に於ける取調を基礎として訊問せらるゝ様なるも、

檢察官の陳述せる公訴事實には
前回迄に申述べたる如く蹶起の目的其の他に相違の點あり。

又、豫審に於ける取調は急がれたる關係上
我々の氣持を十分述ぶる餘裕を与へられざりしを以て

我々は公判廷に於て十分なる陳述を爲し度き考なれば、
白紙となりて十分陳述の餘裕を与へられ度、

殊に當軍法會議に於ては辯護人を許されざるを以て
我々は自分で辯護人の役目も果たさねばならず、

而も辯護人と異なり身體の自由を有せざるを以て
辯護の資料を得ること能はざる不利なる立場に在り。

此等の點を御諒察の上、
陳述の機會及餘裕を十分に与へられ度し。

・ 
磯部淺一、訊問調書 ・ 眞崎大將の事   『  實ハ 南ト永田ノ策謀デネ  』 
・ 磯部淺一、憲兵聴取書 1 ・ 眞崎大將の事  『 乃公ハ最後迄頑張ツタンダ、林ハ違勅デアル  』
・ 
磯部淺一、憲兵聴取書 2 ・ 事前工作と西園寺襲撃中止 

・ 
反駁 ・ 磯部淺一 村中孝次 香田清貞 丹生誠忠 
・ 
反駁 ・  蹶起將校 全員  『 最後の陳述 』

・ 反駁 ・ 丹生誠忠 以下 村中孝次 迄

・ 池田俊彦、反駁 『 池田君 有難う。よく言ってくれた 』 

・ 
反駁 ・ 牧野伸顕襲撃隊 1 水上源一 宮田晃 仲島清治 「 我々のやった事が惡いとは思って居りません 」 
・ 
反駁 ・ 牧野伸顕襲撃隊 2 宇治野時参 黒沢鶴一 黒田昶 綿引正三 「 國家を毒する者は一掃せずんばならぬ 」 

・ 
反駁 ・ 長瀬一伍長 「 百年の計を得んが爲には、今は惡い事をしても良いと思ひました 」 
・ 反駁 ・ 福本理本伍長 「 相澤中佐はさすがだと思いました 」 
・ 
「 豫審では そう言ったではないか 」 


安田優   
國軍の將來に對するお願
私は斯く申せばとて我々の今回の擧を以て罪なしとなすものにあらず。
又、國法無私するものにもあらず。
唯現在の國法は鞏者の前には其の威力を發揮せずして
弱者の前には必要以上の威力を發揮す。
我々今回の擧は此の國法をして絶對的の威力を保たしめんとしたるものなり。
私は今回の事件を起こすに方り既に死を決して着手したり。
即ち、決死にあらずして必死を期したり。
今更罪になるとかならぬとかを云爲するものにあらず。
静かに處刑の日を待つものなり。

栗原安秀
檢察官は蹶起の趣意を歪曲し、故意に叛徒の賊名を以て葬り、
全く精神をも葬れば、斷じて承服する能はず。
社會民主革命を實行云々は香田淸貞の陳述に略同じなるも、
日本改造法案大綱に附、北、西田等の思想は
決して社會民主主義の思想にあらず と反駁す。
檢察官は現状維持者の代弁者として本事犯を斷罪しあり、
栗原は即ち本件は日本の生成發展の大飛躍の爲の已むに止まれぬ所より
統帥権權干犯者を斬ったのみにて、超法的の行爲なり と鞏調す。
大臣告示、戒嚴部隊編入の件は安藤の陳述と大同小異なり。
奉勅命令は絶對下達されず。
小藤大佐の麹町警備隊長の解任も下達されず。
大臣告示は説得案なりしと云ふも、第一師團には立派に下達され、
刑務所に來る迄説得案なりしと云ふことは明示されたる事實なし。
要するに、陸軍の首脳部が責任を負ひ切れざる様になつた爲
奉勅命令を以て叛徒の汚名を着せ居るものなるを以て、
陸軍が負ひ切れないと云ふなれば、喜んで其處刑を受くるものなり。
( 約二時間に亘り陳述す )

「 いよいよ法廷に立ったときは、
すっかり達観して死を待って居るかの如く至極簡單に淡々と陳述する者もありますし、
せめて裁判官にでも昭和維新の理念をたたきこんでやろうとするかの如く熱烈に陳述する者もあり、
神がかり的にその信念を縷々と述べる者もありました。
又 多少行き過ぎを自認した發言をする者も二、三ありました。
非公開なのは彼等の心残りであったのでしょう。
・・中略・・
彼等は政財界、重臣の腐敗、幕僚ファッショを衝きます。
それを調べずして裁判は出來ないと主張します。
・・中略・・
私達も暗黙の裡に、彼等の指摘する情勢については憂を同じくするところもありましたが 」
・・当時、特設軍法会議の半士・間野俊夫 ( 陸士33期、当時陸軍歩兵大尉 )

磯部の遺書の中に 「 特に航空兵大尉の態度最も悪し 」
と 攻撃されている河辺忠三郎は、言う
「 當時私は間野さんと同じく大尉であったが、下志津の陸軍航空學校の敎官をしていた。
元來私は軍人は政治にかかわるべきでないと信じていたから、 決起將校には同情的ではなかった。
軍の統帥をふみにじった怪しからん奴だと憤慨していた。
ところが 軍法法廷で、彼等の陳述を聽いているうちに しだいに彼等に同情するようになった。
國家の腐敗、混亂を見るに忍びず、自らの家庭や生命を犠牲にして國家を建て直そうという 純粋な精神に感動したのだ。
まあ 生命を捨ててかかっている聯中は強いのだ。
氣魄が違う。
中央の幕僚たちがなんとか責任を免れよう、 履歴に傷がついて出世の妨げにならんように
と保身に汲々たる聯中とは、天地の開きがある。
やった行爲は誰がみても許せない事だが、蹶起する動機の純粋さに判士たちはみな感激した。
彼等は他日 ( 何十年か後には ) みな 神に祭られる人々だ
銃殺でなく、昔の武士の切腹のように名譽ある死を賜るようにすべきではないかと説く人もいた。
賛成する人も多かったが、陸軍刑法の定めは動かすことはできん。
ついに銃殺に決まった 」
「 間野さんは 彼等の目は輝いて 『 後を頼む 』 と 言っているように、私は思えました、
と書いているが、 實際に死刑の判決をうけた被告が、無期の判決をうけた者の傍にかけよって
『 おめでとう 、おめでとう 』 と言って慰めていた。
無期の聯中は しょんぼり うなだれていた事は はっきり覺えている。
死に遅れて すまない という氣持があったのではあるまいか 」
・・・須山幸雄著 二・二六事件 青春群像から

・・・次頁 東京陸軍軍法會議公判状況 『 憲兵報告 』 に 続く