あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

最期の陳述 ・ 林八郎 「 われわれを賊にすれば、その結果 軍は崩壊する 」

2020年09月03日 16時50分38秒 | 暗黒裁判・幕僚の謀略2 蹶起した人達


林八郎
昭和十一年六月四日
最終陳述


論告はその精神を蹂躙したるものであります。
黒眼鏡をかけて白いものを見ておられます。
國家革新は國體に合がっせぬと言われるのは認識不足であります。
檢察官は國家革新は必要なりとの認識がありませぬ。
軍が引込み思案で無気力でありますから、統帥權は正當の方向に進んでいない。
それを是正せんとしたので、われわれは皇軍を私兵化したものではありません。
皇軍を立直らせるため われわれは前駆になりました。
民主革命をわれわれが企圖するならば、重臣顯官を全部殺害したのでありましょう。
先輩將校は北の感化を受けたかも判りませんが、その指令を受けたことはないと信じます。
北一輝の思想は社會民主主義ならず國家主義であります。
文字の末を捉えて改造法案をわれわれと結びつけるのは心外に堪えませぬ。
結果影響について
われわれを賊にすれば、その結果 軍は崩壊すると思います。
殺された巡査に五万圓宛迄集ったのは、われわれを攻撃する理由にはなりません。
私は巡査等に気の毒と思っていましたから、五万圓集ったことを喜びます。
本事件の眞相が判明すれば、われわれは國民の支援を受けると信じます。
以上
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1、栗原、常盤等ノ陳述ト略同様ナルモ、特ニ國體認識ヲ鞏調ス
・・・憲兵報告


憲兵報告・公判狀況 15 『 常盤稔、清原康平 』

2020年09月03日 04時20分59秒 | 反駁 2 西田税と北一輝、蹶起した人達 (公判狀況憲兵報告)

 
常盤稔             清原康平
・・・憲兵報告・公判状況 14 『 安田優 』の続き

第十六回公判狀況
一、日時
 五月二十日 午前九時開廷。
午前十一時二十分---午後一時休憩
午後三時閉廷。
二、場所
 代々木練兵場仮兵舎内第一公判廷。
三、進捗狀況
警視廳組 常盤稔、清原康平ニ對スル事實竝證據調ヲ終了ス
四、陳述中重要ト認ムル點
1、常盤稔
二月二十六日歩兵第三聯隊ヨリ警視廳ニ電話アリ、
所属中隊長ヨリ御苦勞デアツタカラ今から兵員ヲ出シテ交代サセ様ト思フトノコトデアツタ。
自分ハ交代シナクテモヨロシイト返事シタガ、
暫クシテ機關銃隊ダケハ手違ヒデ交代者ヲ出シタト電話ガカカリ、
内堀大尉ト柳下中尉ガ約四十名ノ兵ヲトラツクニ乗セテ來タガ、
交代ハイラヌト斷ツタ処、其ノ儘歸ツタ云々
2、清原康平
 自分ハ十分ナル信念ハナカツタガ、安藤大尉ニ對スル信頼ト、
「 命令ニ依テ動カスカラ心配スルナ 」 トノ安藤大尉ノ言ニ依リ

參加ヲ決意スルニ至ツタガ、下士官兵ニ對シテハ具體的ノコトヲ示サズ
終始命令ヲ以テ動カシタリ。
聯隊出發ノ際、柳下中尉ガ兵ヲ見送ツテ泣イテイ居ルノヲ見タガ、
柳下中尉モ自分ト同様信念ナク、命令ニ依リ部下及機關銃ヲ出シタル苦シキ立場ニアルコトヲ思ヒ、
同情ニ堪ヘナカツタ。
然シ、ソコデ自分ノ方ガ部下ト共ニ行クノダカラ
部下ノ責任ヲ自分一身ニ引受ケルコトガ出來ル點デ仕合セダト自ラ慰メタ、云々
( 以上 )

憲兵報告・公判状況 16 『 清原康平、鈴木金次郎、田中勝 』に続く
二 ・二六事件秘録 ( 三 ) から