あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

娘身賣り 1 『 賣られる最上娘 』

2017年11月10日 08時26分24秒 | 後顧の憂い


東北の凶作地を見る

賣られる最上娘
哀切 ・ 新庄節        山形縣新庄にて  飯島特派員
「 年明けても歸つてくれるな 」
親達の悲痛な言葉
他郷の人の手に賣られて哀切な 「 新庄節 」 に故郷の山河をしのぶ女の數は決して少くない、
山形縣最上郡はその娘地獄の本塲だがここは縣下でも一の凶作地、
ならして七割の減収、一かたまりになつてゐる三十五町歩の田が稻熱病いねちびょうで全滅してしまつたところもある、
飯米は至るところで不足で、西小國村の野頭部落では
  一人でも口を減らさうと思つてゐるのに
 賣つた娘の年が明けて歸つて來られてはそれこそえらいことだ、
 何とかして娘の年期を延ばすことなしよう
といふ申合せさへやつたといふ、
縣ではこの凶作で一層娘の 身賣 りが增えるだらうといふので、
身賣防止の方策を樹て新庄警察署が主になつて、先頃村々で 「 娘を賣るな 」 と座談會をやつて歩いた
娘一人の身代金は年期四年で五百圓、
然し周旋屋の手数料や着物代や何かを差引かれて實際親の手に渡るのは、せいぜい百五十圓位だ、
可愛い娘を手離しても、百五十圓の金を握りたい、
一つの惡風習でもあらうが、やはりそれも詮じつめると食へない苦しさからに違ひないだらう

かうして床のない家、床があつても疊たたみのない家々から、
娘がポツリポツリ 藝者に、娼妓しょうぎに、あねひは酌婦に賣られて姿を消してゆく、
倫落の巷を流浪する最上娘もがみむすめの 「 新 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

( 昭和九年十月二十二日 )


下士官兵

2017年11月10日 05時37分21秒 | 下士官兵

宇治野時参
私は在郷中、建国会員深沢四郎の書生として雇はれ、
本人より常に社会情勢並に重臣、財閥、特権階級 等の腐敗堕落の実情を聴取し居たる関係上、
国家革新の必然を痛感するに至り、
更に入営後は、徹底的に精神修養に志し入営したるに、
全く自己の予想と相反し、将校並に下士官等は単に恩給並物質等のみに汲々し、
軍人の本分を顧るもの少なき折柄、栗原中尉を知り国家革新運動を学び、遂に事件に参加したるものなり。
現在に於ても、国家を毒するものは一掃しなくてはならぬと思って居り、
吾々の蹶起により、譬え一部たりとも社会の改革が出来得たなれば、本望と存じて居ります。


下士官兵
目次
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・ 中村軍曹 「 昭和維新建設成功の日 近きを喜びつゝあり 」 
堂込曹長 「 奸賊 覚悟しろ!」 
奥山軍曹 「 まだ温かい、近くにひそんでいるに違いない 」 
・ 下士官の演説 ・ 群集の声 「 諸君の今回の働きは国民は感謝しているよ 」 
・ 
前島清上等兵 「 農村もとうとう救えなかった 」 

安藤は、在室の将校を指して、
「 こちらは、所沢飛行学校の河野寿航空兵大尉だ・・・・」 と 紹介したあと、
「 我々は明朝蹶起するが、貴公は残って勉強せよ 」 と 言った。
長瀬は弾かれたように、「 私も出ます・・・・」 と 答えた。

長瀬一伍長 「 身を殺し以て仁を為す 」

反駁 ・ 長瀬一伍長 「 百年の計を得んが為には、今は悪い事をしても良いと思ひました 」 

・ 篠田喬栄上等兵 ・ 相澤中佐事件前夜 「 明日は早いよ、大きな事件が起こるぞ 」 

福本理本伍長
下士官の微衷 歩兵第三聯隊第十中隊伍長 ・ 四日間の行動記録 
一下士官の昭和維新 1 「 参加いたします 」 
・ 一下士官の昭和維新 2 「 おい、福島班長、これからが大変だぜ、しっかりやろうな 」 
・ 一下士官の昭和維新 3 「 尊皇義軍からは射たないが 貴様らの方から射てば応戦するぞ 」 
・ 
一下士官の昭和維新 4 「 今から第十中隊は各分隊ごとに議事堂に集結する。いいか。着け剣 」 
・ 下士官の赤誠 1 「私は賛成します 」 
・ 下士官の赤誠 2 「 これ程言っても命令に服従したと云えんのか 」 
・ 反駁 ・ 福本理本伍長 「 相澤中佐はさすがだと思いました 」 

・ 
宇治野時参軍曹「 河野さん、私の懺悔話を聞いて下さい 」 

堂込喜市曹長
堂込小隊の旗を背負はしめ 日本刀を持ち半紙二枚の声明書を群集に向て朗読す。
尊皇愛国の精神を説き
軍人にして財閥と通じ皇軍をして私兵化せしむる如き国賊は
之を排除し其他国家の賊物を悉く打ち斃し、
次いで国家の安泰を計るが目的である云々
諸君
吾々は 歩兵第三聯隊安藤大尉の部下である、
吾々は 之より死を覚悟して居るものである、
而して 私の希望は何物もない。
吾々には国家の為に死ぬものである、
遺族の事は何分頼む
群衆
是れから尚国賊をやつて仕舞へ。
愛宕山の放送局を占領して今の声明書を全国に知らして下さい。
買収されるなよ。
腰を折るな確かりやれやれ。
妥協するな。
大勢御苦労であった。
なぜ牧野、一木をやらなんだのです。

山田伍長
牧野は焼き殺されて居るのだ。
諸君 吾々に共鳴するなら
一木でも牧野でも打殺して来て呉れ
群衆
諸君の今回の働きは国民は感謝して居るよ
・・・下士官の演説 ・ 群集の声