日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

白薔薇の記憶 串田孫一

2009-05-31 | Flower

私は紙にくるんでもらった白いバラをもって家に帰った。
みちみちバラの匂いを嗅いでみたが
あの広い庭のバラの中で一番いい匂いのものとはどうも違ったし
その芳香はどんどん衰えてゆくようだった。

  

そのバラの種類は何であったか。
ただ、白い花であったことしかわからない。
しかし花のかおりはどうであったと説明できないけれど、再びそれに出合えば
必ずこれだとわかるような気がしている。
それで白いバラの花があると、つい匂いをかぐ癖が出てしまう。

                                               串田孫一 「草原に落ちた星」 薔薇 より